新しい年を迎え、冷たい風が鼻をかすめると思い出す。母校で実施されていた、あの謎のイベントを──。

強いられるは身体づくり。行きつく先は、山越えだ。何が悲しくて寒い中、いくつもの山を登らされなければならないのか。今になってもわからない。ただ、豚汁が美味しかったことだけは覚えている。

・母校の耐寒登山を振り返る

記者が通っていた福岡の某高校では、この時期になると強制的に『耐寒登山』という行事に参加しなければならなかった。字面通り、寒さを耐えて山を登るものだ。

ほかの学校でも行われているのだろうか。関西では実施しているところも多いと聞く。しかし少なくとも記者の通っていた高校周辺の、他校では実施されていなかった。以下、記者の母校における耐寒登山について振り返っていきたい。


・謎1 時期

そもそも謎であるのが、時期だ。この行事は1年生が主。仮に学校に入学して、上半期あたりまでに行われるのであれば、まだ理解できる。クラスの絆を深め合おう的な、意味もあるのだろうと。

しかし『耐寒登山』の決行日は年明け、1月末から2月頭にかけてのどこかだ。クラス内で仲良しグループがすでに完成している時期である。故に、なんならボッチで山を登らなければならない可能性も出て来るのだ。


・謎2 朝課外の時間に走る

こうなってくると単純に、これは寒いなか体を鍛えるためだけのイベントであると考えられる。改めてなんなんだ、その過酷なイベント……。

まず、準備からして気合いが入っている。母校では福岡の高校らしく朝課外の時間が設けられていたが、耐寒登山前はその時間がマラソンにあてられたのだ。

つまりは朝の7時半くらいから、校庭をグルグル走るのだが、コレが結構しんどい。確か5日間ほど、毎日グルグルしたと記憶している。

校訓は「質実剛健 自彊不息」とか、なんとかかんとか。なんでも頑張れという意味だ。つまり耐寒登山には勉強だけでなく、体力作りも怠るなとの意味が込められていたのだろうか。


・謎3 道なき道を行く

まあ、なんやかんやで準備を整えいざ当日。ちなみに登る山はひとつではない。母校の校歌に四塚という4つの山を総称するワードが含まれているのだが、その山のうちいくつかを越えるのが習わしだ。

記者の世代は、2つか3つかの山を横断したように思う。整備されているところもあれば、道なき道を行く場合もあり、危ないところはないかなど事前に先生方がチェック。

目印を立てたりロープを張ったりしてくれていたようで、例年ちょうど雪が降る時期なため補助自体はありがたい。しかし、なぜそこまでしてという疑問を抱かずにはおれない。

その上、ロープがあってもツルツル滑り落ちることは落ちる。前を歩く同級生たちがスッテンコロリン、そしてその後に続く自分もスッテンコロリン。

非日常的な目の前の光景に次第と笑いがこみ上げ、自ずとテンションが上がっていったことを覚えている。下山時には全身泥だらけだ。


・謎4 特別クラスメイトと仲良くなることもない

しかし、大変だっただけにクラスメイトと前より仲良くなれた……ということは特になく「こんな泥だらけのまま(学校まで)歩いて戻るの嫌だな」などと考えながら、黙々と学校までの帰路についた。学校に戻ると、豚汁が用意されており、それはやけに美味しかった。


改めて振り返ってみたが、私たちはなんのためにいくつかの山を横断し、下りてきたのだろう。山中でみんなでやったことと言えば、頂上で校歌を合唱したことくらいか。あとはただ、ひたすら歩いただけである。

遠足のような朗らかさもなく、かと言ってガッチガチの運動という訳でもなく。楽しい瞬間もあったような気もするが、さして覚えていない。

『耐寒登山』とは一体。大人になった今でも思い出しこそすれ、その意義についてはイマイチつかめないまま。やっぱり謎だ。

Report:K.Masami
Photo:Rocketnews24.