世の中には「ブラックサンダー」というチョコレートがあるが、同商品が言わばB級駄菓子であることに異論を唱える人はいないだろう。むろん良い意味でである。もし「ブラックサンダー」が高級スイーツ店に並んでいたら、「おいおいコイツはクレイジーだな」と肩をすくめずにはいられまい。何故ならB級だからだ。むろん良い意味でである。

が、そんな恒久不変の「ブラックサンダー観」に販売元の有楽製菓自身が波風を立てようとしている。というのも、先日2021年1月9日に「史上最も高級なブラックサンダー」なる謎の商品が新発売されたのである。B級なのか高級なのかわけがわからないので、実際に検証してみることにした。

改めて説明すると、今回発売されたのは「ブラックサンダー史上最も高級なビターチョコ」と「ミルクチョコ」の2種類。全国のセブンイレブン限定かつ期間限定で入手することができ、価格はどちらも税抜158円となっている。

なんでも前者はエクアドル産カカオを、後者はフランス産ミルクを使用したチョコでコーティングされているらしい。こう聞くと確かに高級感が伝わってくる。

とはいえ、前述した通りそもそも「ブラックサンダー」はB級駄菓子である。高級版を実食する前に改めて通常版を食べてみたが、荒々しくザクザクとした食感がもたらす味わいは、美味しさと同時に筆者の辞書から「B」以外の文字を消し飛ばすジャンクぶりを感じさせた。

なにせ有楽製菓自らがバレンタインデーに際して「一目で義理とわかるチョコ」と喧伝し、己の立ち位置を強調した経歴を持つくらいだ。自他ともに認めるというより、「自が認めすぎていて他が何を言おうと霞む」ほどである。

では、このたびの高級路線は一体どういうつもりなのか。実のところ、こういったケースは今回が初めてではない

昨年2020年1月末にも、有楽製菓は「至高の生ブラックサンダー」と称した高級商品を発売している。つまりB級路線を基本としながらも、そればかりでは飽きるのか、時折思い出したように高級方面へ走り出す傾向が認められるということだ。要するに発作である。発作となれば、真摯に向き合うのが人情だろう。

前置きが長くなったが、ここからはレビューに移りたい。通常版のパッケージでは商品名の脇に「黒い雷神」の文字が躍っているのに対し、高級版では「高級な雷神」と書かれている。こんな大胆なやり口で「そうなんだ」と納得するほどこちらも甘くはない。まずは「ビターチョコ」の方から味を確かめてみる。

疑い混じりに一口サイズのチョコにかじりつく。その瞬間、筆者の脳内を一気に驚きが占めた。そして口内には、いつもとは全く異なる美味しさがあった。

風味豊かなかぐわしいカカオの香りと、ほどよく慎み深く爽やかな苦味。度肝を抜く芳醇具合である。それでいてクッキーとビスケットの織りなす「ブラックサンダー」らしい食感もきちんと残されている。

これは高級だ。いや、「高級なブラックサンダー」だ。食べる前は「謎の商品が出たものだ」と思っていたが、こうもB級と高級を両立させた明確な解答をぴしゃりと打ち出されると、非を認めるのがすがすがしくすらある。お見それしたと言うほかない。

「ミルクチョコ」の方においても同様に、べたつかない上品な甘さとジャンクな歯ごたえが奇妙にも美しく調和している。偶然などではない、計算された味わいだというのをひしひしと感じる。

なんというか、「折り目正しいブラックサンダー」というのがここまで破壊力抜群だとは思いもしなかった。こんな感覚は初めてだ。実に貴重な体験をさせてもらった。

もし読者の方々も興味が湧いたなら、できるだけ早めに入手して、しっかりと味わってみてほしい。史上最も高級な雷神は、間違いなくあなたにも新鮮な感動を与えてくれるはずだ。

さて、この次に現れるのは一体どんな雷神なのだろう。再びこちらをあっと驚かせてくれるような、喜ばしい晴天の霹靂(へきれき)を待つばかりだ。

参照元:有楽製菓 公式HP
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.