私(佐藤)がポールダンスを習い始めてから4年の月日が流れた。2016年12月13日に初めてのレッスンを受けて以来、毎年この日、12月13日を振り返るようにしている。

1年目、2年目、3年目と自分なりに成長している感触をつかめていたけど、今年はその感触をつかみ切れなかった。コロナ禍で練習を休まざるを得なかったこともあるけど、それとは別の理由で成長の感触を得られなかった。それどころか、今さら大事なことに気がついた……。

・練習できなかった

東京都に緊急事態宣言が出されたのは2020年4月7日だった。5月25日に解除されるまでの間、練習をしにスタジオに行くことができなかった。3月末にスタジオに忘れた手袋を、約2カ月後の6月4日に取りに行くことになるとは、当初予想もしていなかったのだ。

その間、自宅でできる範囲でストレッチや筋トレを続けていたけど、日が経つにつれて上腕筋が細くなっていくのが不安で仕方がなかった。週3回練習の習慣が途絶えて、身体から力は抜けていくのがわかった。

私のような素人のオッサンが練習できないことに不安を覚えるくらいだから、プロのスポーツ選手が練習を離れる不安は、並大抵のものではないと理解できた。とにかく何もできないまま2カ月が経過した。もともと運動嫌いだったはずなのに、この時ほど身体を動かしたいと思ったことはない。


・加齢が要因の1つ

宣言が解けた後に、少しずつ練習を再開した。筋力は間違いなく衰えていたけど、幸い、身体が感覚的にいろいろなことを覚えていた。そのおかげで1カ月もしたら、勘を取り戻すことができた。これでまたやって行ける! 順調に練習を続けていたはずだったが、新しい問題に直面してしまった。


「右肩関節周囲炎」


肩関節が炎症を起こし、水がたまっていることがMRI検査でわかった。手術で水を抜くほどではなかったけど、右腕を上げると痛みが走った。厄介なことに就寝時痛(安静時痛)を伴っていたので、寝る時になると疼いて仕方がない。原因はいろいろ考えられるようだが、「加齢」もその要因の1つに挙げられるそうだ。


今までガムシャラに練習してきた。できないことは練習していればいずれできる。ここまでの3年半はその考えが正しかったし、自分でそれを実感し証明してきた。「やればできる、やり続けていればどんな技も習得できる」、その考えが通用する年齢ではなくなった。


あと10年、いや5年でもいい。もっと早くポールダンスと出会いたかった


肩を痛めて私は悟った。もう今以上、新しい技を習得するのは難しい。難易度の高い技に挑むことは、多分できないだろうと。せめて、今できることを少しでも長く続けられることが、自分にとって幸せなことなんじゃないか? そんな風に考えた。ポールダンスをやめようとは思わないけど、「これ以上、自分の成長に期待できないのなら、何のためにやっていくのか?」、それが一瞬わからなくなった

その反面、「ただの趣味だ。何をそんなに深刻になる必要があるんだ。楽しくやってられたらいいだろ?」、そう思う自分もいる。でも、大した成果はなくても一生懸命やって来たはず。ささやかな努力を積み重ねていくことが楽しかったんだ。やったりやめたりするんじゃなくて、少しずつ前に進んでいるのが楽しかったのに……。その小さな道が突然行き止まりになってしまったみたいだ。

日没までに帰ると約束したのに、出かけるのが遅すぎて日が暮れてしまった。夜道は真っ暗で何も見えない。どこに向かって行ったらいいんだろう。そんな夏休みの子どものように、誰かに迎えに来て欲しい心持ちだ。もっと早く始めていれば……。


・灯り

待っていても誰も迎えに来てはくれない。でも、暗闇を照らす灯りのように励ましをくれる人たちがいる。新しくポールダンスに挑戦する人たちだ。彼らの中には、有難いことに私のSNSやYouTubeの動画を見て始める人たちもいた。たまに「いつも見てます」とか「私も始めました」と言われると、とてもうれしい。


「43歳から始めて、そんなにできるようになるものなんですね」


そんな声を聞く度に私は思う。「俺よりきっと上手くなるよ、なんせ運動嫌いの運動オンチが上達したんだから、俺より若くて運動好きならきっと上手くなる。運動嫌いなら運動を好きになるはずだよ。身体を動かす意味さえわからず、スポーツとは無縁の人生を送ってきたこの俺が、今では時間を巻き戻してでも練習したいと思っているくらいだからね。きっと好きになるよ」」と。


・まだできることはある

まだある、できることはある。たくさんある。まずはリハビリからだ。整形外科に通院して理学療法士さんに地味な筋トレを教えて頂いている。たとえば、ストレッチポールの上に寝っ転がって、肩甲骨まわりの筋肉を鍛える “腕を上げたり下げたりするだけの運動” や……。


輪ゴムを2個つないで、両手の小指にかけて、肩の筋肉を鍛える “左右に腕を広げるだけの運動” など……。


うんざりするほど地味な筋トレを教えてもらっている。これが肩の複雑な筋肉を鍛えるのに有効なのだとか。成果が見えるのに2~3カ月はかかるそうだ。先は長い……。


そのほか、今まであまり真剣にやって来なかったストレッチもしっかりやることにした。柔軟性に関しては、まだまだ成長の余地が残されている。しかも柔らかくなれば、故障しづらくなるので本来はもっと真面目にやるべきだったんだ。ちゃんとやろう。


・すぐに始めよう

これから先、極端に上達することはないだろう。すごく見映えのするカッコイイ技を習得することもないかもしれない。それでも、私は続けていく。オッサンの奮闘が誰かの励みになるのなら。そしてその励まされた誰かが、また私の励みにもなる。そうして、お互いの「元気」が通い合っていくといい。


「あと10年早ければ」、そう思わない日はない。だからもし、何かを始めたいと考えている人は、すぐに始めた方がいい。それが自分に合わないと思ったらやめたらいいんだ。楽しければ続ければいい。早く始めれば、その分、楽しい時間が長くなる。私が思ったように「あと10年早ければ」と考えずに済むよう、すぐに始めよう。今より過去に戻れないのなら、今から未来を作っていくしかないんだ。

執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

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