曲がりなりにもライターという仕事をしていると、珍しい飲食店の情報を見つけた時に「記事のネタになりそうだ」なんてことを考えがちである。職業病とまでは言わないが、身についたクセのようなものなのだと思う。
そういう事情もあって、先日Uber Eatsで「究極のブロッコリーと鶏胸肉」という名前の店を目にした時は、喜色満面になりながら万歳三唱しつつ小躍りしてしまった。店名の時点で訴求力が尋常ではない。まんまと釣られる形で、気付けば筆者は同店のことを調べていた。
公式サイトによると、「究極のブロッコリーと鶏胸肉」は全国30店舗を拠点に、Uber Eatsなどのデリバリーサービスやテイクアウトを通じて、究極の低糖質食を提供することを目標としている店らしい。ちなみに略称は「QBT」だそうだ。
注文メニューは店名の通り極めてシンプルで、ブロッコリーと鶏胸肉がボックスに入ったセットが、グラムごとにずらりと並んでいる。本当に、一面がそのセットで埋め尽くされている。あとはオプションのドレッシングがあるくらいだ。ブロッコリーと鶏胸肉への類を見ない傾倒ぶりが心に迫る。
「まるでボディビルダーの食事のようだ」と思っていたら、公式サイトに「ボディビルダーが大会前に食べるようなストイックな食事を誰もが継続して食べられるように美味しく仕上げました」と書かれていた。本人にそう言われては敵わないという気持ちにさせられる。
と同時に、これほどシンプルな食事がどんな美味しさを見せてくれるのかと猛烈に気になってきた。注文するしかない。150グラムから1500グラムまで用意されているセットのうち、メニューに「1人分」と書かれている300グラム(1200円)のものを選ぶ。
加えてドレッシングは塩コショウ(50円)・カロリーハーフマヨネーズ(50円)・ポン酢(50円)・和風(60円)・ごま(60円)・七味マヨ(80円)・旨しお(80円)・チリ(80円)の8種類があったが、今回は和風と旨しおを選択。
注文からまもなくして、我が家にブロッコリーと鶏胸肉がやってきた。さんざんメニュー写真で見ていたにもかかわらず、「何だこのシンプルな食事は」と驚かされる。何度言っても言い過ぎることはない。
この300グラム分の食事に含まれる栄養素は、たんぱく質が49グラム、脂質が3.5グラム、そして糖質が4.2グラムとのことだ。かりそめのボディビルダー気分が芽生える一方、簡素なだけに1200円という価格が少し引っかかってもいた。
が、実食した途端に引っかかりは吹き飛んだ。正直に言えば、ドレッシングに関しては特筆すべきところはなかった。多くの人が思い浮かべる和風味と塩味そのままという感じだ。筆者を驚嘆させたのは、ブロッコリーと鶏胸肉自体の純粋なクオリティの高さである。
まず鶏胸肉の方だが、これがまあすごい。パサパサ感が全くなく、しっとりと柔らかで、歯に力を入れずともホロホロと崩れていく。さらりとした味わいなのに、そこはかとなくジューシーだ。ひとたび口にすると舌がこの鶏胸肉を求めてやまなくなる。
コンビニやスーパーでもサラダチキンなどの上質な鶏胸肉の商品が購入できるが、それらよりさらに一段上のレベルにさえ感じられた。「もう少しこうであれば」とか、そんな文句を差し挟む余地のない圧倒的な美味しさなのである。
そして、その鶏胸肉を上回る衝撃をもたらしたのがブロッコリーだ。苦手な人が多いであろうブロッコリー特有の匂いは限りなく抑えられてあり、固いはずの芯が信じられないくらい歯切れ良く柔らかい。一瞬、良い意味で何を食べたのかわからなかった。
ブロッコリーとして没個性になってしまっているわけでも決してなく、噛むほどに野菜の旨味や甘味がちゃんと沁み出てくる。つまりは美味しい。完璧なのである。
ブロッコリーも鶏胸肉も、とにかく食べやすく、とてつもなく完成された仕上がりになっている。デリバリーでここまでのクオリティを叩き出してくることに、ただただ驚かされる。相当な努力がなされていることが想像できるし、価格にも納得してしまう。
「究極のブロッコリーと鶏胸肉」……その看板に偽りはなかった。とても価値ある出会いだった。食べ続けることで健康を維持できるなら、存分に利用したい。いつかまた貴重で珍しい店と出会った時、健やかな身体で小躍りさせてもらおう。
参照元:「究極のブロッコリーと鶏胸肉」公式サイト
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.