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【幻の冷やし中華】日本一ウマイ “伝説の暗黒麺” を使った「冷やし中華風そば」がひっそりと提供される四谷三丁目のそば屋 / 立ち食いそば放浪記:第242回

2020年8月19日

夏と言えば冷やし中華である。トマトとお酢の爽やかな酸味がきいた味はまさに夏の風物詩。「冷やし中華始めました」という貼り紙を見るだけで涼しい気分になるのは私(中澤)だけではあるまい。

ほぼ日本発祥の庶民グルメのため、どこで食べてもそんなに変わらない冷やし中華。しかしこの度、圧倒的にオリジナリティーのあるものを発見した。その冷やし中華に使用されていた麺は「日本一ウマイ」と呼び声が高い伝説の暗黒そば。北海道の秘境で受け継がれる幻の音威子府そばだったのである。

・そばの秘境「音威子府」

かつて、北海道まで音威子府そばを食べに行ったことのある私。旭川からJR宗谷本線で雄大な自然の中を2時間北上すると、北海道一小さな村・音威子府がある。日に数本しか電車の止まらない音威子府駅は、旭川からでも行って帰ってくるのに1日仕事となった。

音威子府そばは、この音威子府で作られているそばで、今では通販もあるため、そば自体を手に入れることはそんなに難しくはない。ただ、音威子府そばを食べられる店となるとグッと難易度が上がるのが実情だ。音威子府村にも2軒ほどしかない。

そのうちの1軒が音威子府駅にある『常盤軒』で、蒸気機関車の走る時代から旅行者の間で「日本一ウマイ」と話題だった伝説の駅そばである。どうしても店の味を知りたかった私は、当時、音威子府駅まで食べに行ったわけだ。

あれも夏のことだったが、その太陽の光すら吸い込むような黒い麺は衝撃的な味であった。荒々しく野性的なそばの味、口の中に広がる猛烈な香ばしさ。雄大な自然の味である

・幻の味が四谷で

そんな音威子府そばを冷やし中華に使用しているのは、東京の四谷三丁目にあるそば屋『音威子府TOKYO』だ。2019年10月1日にオープンしたこの店。知らないと通り過ぎてしまうようなひっそりとした外観ではあるが、その味が本物であることは取材した以前の記事でお伝えした通りである。

メニューはそれぞれ1000円前後と少し高めの価格設定ではあるが現地に行くことを考えると断然安い。取材以来、私の中ではスペシャルな日に行く店となっていたが、先日、行ってみたところ、夏メニューとして「冷やし中華風、音威子府そば(税抜1200円)」が登場していたのである

・どこまでが冷やし中華なのか

しかし、冷やし中華風ってどこまで冷やし中華なのだろうか? 具だけじゃなくつゆまで冷やし中華だとしたら、そばとは全然違う味になりそうだ。気になったため注文してみたところ……

見た目はほぼ冷やし中華だった。キュウリ、ワカメ、プチトマト、ハム、錦糸卵、ササミ、紅しょうがが鮮やかに器を彩っている。とは言え、底の麺は真っ黒。そのため、色のコントラストは冷やし中華以上に鮮烈である。

まず、気になっていたつゆを飲んでみると、完全に冷やし中華のもののようだ。酸味がきいており少し甘い。つまり麺以外は、冷やし中華ということになる。音威子府そばは中華麺よりもクセのある味で舌触りも少しザラッとしているが、冷やし中華に合うのだろうか

食べてみると、お酢の爽やかさがザラッとした食感で強調されているように感じる。そのスッキリした味で口の中が涼しい。この涼しさは冷やしそば以上である。そばのクセも違和感はなく食べやすい。

だが、冷やし中華と言うには、麺が濃厚すぎる気もする。どちらかと言うと、新たなそば料理と言われた方がしっくりくる味だった。さすが音威子府そば。冷やし中華になってもその存在感は半端じゃない

「日本一ウマイ」との呼び声も高い幻のそばが使用されたこの冷やし中華。言わば日本一ウマイ冷やし中華風そばと言っても過言ではないかもしれない

とは言え、以前の記事でも申し上げた通り、『音威子府TOKYO』はそばつゆの味も素晴らしい。音威子府そばの味を目当てに行くのであれば、まずはたぬきそばかざるそばがオススメだが、少し目先を変える意味での冷やし中華風そばは多いにありだ。今年は暑い日も続いているので日本一ウマイ冷やし中華風そばで涼を取るのはいかがでしょう?

・今回紹介した店舗の情報

店名 音威子府TOKYO
住所 東京都新宿区舟町3-6
営業時間 月~金11:30~14:00,17:00~23:00、土11:30~14:30,17:00〜23:00
定休日 日・祝

Report:立ち食いそば評論家・中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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