油断と過信。世の中で、これほど怖いものはない。事故が起こるのは、その2つに心が取り憑かれたとき……言い換えれば、「安全だ」と無条件で信じているときと言ってもいいのではないか。
そういう意味で、いま日本でもっとも怖い場所の1つはJR中央・総武線の飯田橋駅(以下、飯田橋駅)かもしれない。なぜなら、複数のメディアが「危険が解消された」的な感じで報道しているからだ。
それを見たり読んだりした人は、「もう安全なんだな」と思うだろう。しかし……! 私が現地で確認した限り、安全だと思いこむことこそ危険かと思う。
・飯田橋駅は都内で1番危険だった?
そもそも「飯田橋駅」を利用したことがない人にとってはよく分からないだろうから、以下で簡単に事情を説明したい。
もともと飯田橋駅は、電車から降りるときに “ちょっとした勇気” を必要とする駅だった。というのも、電車とホームの隙間がかなり開いていたから。その隙間たるやハンパではなく、私が初めて同駅を利用したときは “降りる” というより “ジャンプする” 感覚だった。「東京のど真ん中にこんな駅あるのか」と思いながら飛び降りたものだ。
なお、毎日新聞によれば、そのとき電車とホームの隙間は最大33センチで、高低差は最大20センチもあったらしい。また、日本盲人会連合(現日本視覚障害者団体連合)が会員に実施したアンケートでも「危険と思われる都内の駅」のトップに上がっていたそうだ。
・飯田橋駅が安全になった?
そんな飯田橋駅が、生まれ変わった。2020年7月12日から、ホームを200メートルほど新宿方向へ移動させることで、隙間が狭くなったのだ。時事通信によれば、最大33センチあった隙間が15センチになったという。実際に、私が7月13日に飯田橋駅に行ってみたところ、以前とは比べ物にならないくらい乗り降りしやすくなっていた。
これは快適。多くのメディアが「安全になったぞ〜!」という感じで報じているのも納得……なのだが! もともと駅とは危険の多い場所である。たとえば、飯田駅の新しいホームを移動していると、幅の狭い場所がある。
ここで人とすれ違うのは、結構怖い。私が極度にビビリだからというのもあるが、「もしも体がぶつかったら、自分がホームに落ちるか相手を落としちゃうのでは?」とビクビクしながら歩いていた。しかも、そんなときに限って向こうから男性がスマホをいじりながら歩いてきた。最悪である。
もちろん、「すれ違うのが怖いほど狭い場所」は他の駅にもあることで、飯田橋駅だけが特に危険なわけではない。ただ、あなたは今「飯田橋駅は安全になった」と信じていないだろうか? 先に述べた通り「安全だ」と思い込んでいるときこそ、事故が起こりがちなもの。
なので、上のようなことをあえて記した次第である。意地悪な見方かもしれないが、「危険なときもある」くらいに思っている方が、事故を防げるだろうから。それからもう1つ……。これはちょっと汚い話になってしまうが、実際には大きなリスクになるから書いておきたい。トイレについてだ。
・西口駅舎のトイレは最高
飯田橋駅の新しいホームが利用開始になったのと同じタイミングで、西口駅舎も利用開始となった。西口駅舎は出来たてホヤホヤだから、何もかもが新しい。特にトイレは最高だ。個室の中も広いから、もしも飯田橋駅で “もよおした” ときには西口駅舎のトイレをオススメしたい。
さて、ここで難しいのは普段「東口」から電車に乗る人である。というのも、「東口」を出たところにもトイレはあるものの、「西口」のように新しくはない。
すぐトイレを利用したいなら近い「東口」の方を選べばいいだけなのだが、誰だって清潔なトイレを使いたいだろう。つまり、気持ち良く用を足すことを優先するなら、東口から西口まで行く必要がある。そして、ホーム自体が伸びた関係でこの距離が結構長いのだ。
試しに、私が西口に向かうホームの階段前から東口に降りるホームの階段前まで歩いたら、約1分49秒かかった。
ホーム上での移動距離でそれだから、トイレまでだったら4分……いや、個室が埋まっている可能性も考えておいた方がいい。尿意もしくは便意がその時間に耐えられるか、冷静に判断する必要がある。もしも、ここで判断をミスったら……。最悪の事故を起こさないため、冒頭の言葉を最後にもう一度繰り返しておきたい。
世の中で、油断と過信ほど怖いものはない。──現場からは以上だ。
参照元:毎日新聞、時事通信、Google ニュース検索 「飯田橋」
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.