今では信じられないだろうが、ほんのひと昔前まで写真というのは写真屋で現像・プリントし、アルバムに貼って保管するものだった。現像するまで出来上がりがわからず、簡単に撮り直しできないので、笑ってしまうような失敗写真がたくさん生まれる。そんな中、ごくまれに一瞬の輝きを切り取った傑作が撮れたりして、写真1枚1枚の価値がずっと高かったような気がする。

暮れの大掃除のさなか、実家から40年ほど前の古〜いアルバムが出てきた。開いてみると、カビの匂いとともに、茶色く変色した台紙……。なんか臭いし汚いしカバーのビニールも柔軟性を失ってパサパサちぎれてくる。これは写真にまで被害が及ぶ日は近い!

なんとか救済できないものかと焦っていたら、写真プリントをデジタル化してくれるサービスを見つけた。それも1934年の創業以来、80年以上に渡って写真業界を牽引してきたFUJIFILM! 無料キャンペーンをやっていたので申し込んでみたのだが……


スマホの画面から昭和後期の空気がよみがえり、思わず涙した。


・デジタル化の流れ

サービスを利用するために、まずは古いアルバムから写真をはぎ取る。……が、この作業、かなり危険! アルバム自体が劣化し、糊と一体化して写真が破れてしまう恐れあり。慎重に、慎重に作業する。

なお、このサービスでは、スキャンする順番は指定できないとのこと。順不同ということになるので、アルバムからはぐ前に、念のため全体像を記録しておいた方がいいと思う。

サイト上で申し込むと、一週間ほどで「サービスパック」が到着。写真を送るためのキットだ。丁寧な手順書が同封されているのでそれに従えば何ら難しいことはない。あらかじめ宛先が印刷された送り状が入っているし、作業依頼書に枚数を記入して同封するだけ。超簡単。


・待つこと1カ月

写真とアクセスキーが返送されてきた! 通常はDVD + アクセスキーが納品されるようだが、キャンペーンではアクセスキーのみ。自分でデータを取り込むことになる。

写真の取り込みにはFUJIFILMの提供する「PhotoBank」という写真整理プラットフォーム(ストレージサービス)に登録する必要がある。さくっとアプリをインストールしてログインしよう。

この際、メールアドレスをIDにするのだが、サービスパックを申し込むときに使った最初のアドレスと同じものを登録しないと画像を取り込みできないので要注意! 複数のメールアドレスを使い分けている人は気をつけて欲しい。筆者はここで少々つまずいた。

登録すると無料で5GBまでのストレージが付与される。それとは別に、スキャンサービスで取り込んだ分は何GBでも1年間無料で保存してもらえる(1年経過後は、5GBまでが無料)。退会してしまうと写真の取り込みもできなくなるが、後述するように一度取り込んだ写真は自分の端末にダウンロードできるので問題ないだろう。

手順書の通りにアプリを起動し、アクセスキーを入力すると、あっという間に写真が取り込まれた!


・色補正がすごい

驚いたのはその画質! 「当社の画像処理技術にて自動色補正を行いスキャンします」とのことで、個別の色指定などはできないのだが、これをご覧いただきたい。

元の写真はおそらく昭和40年代のもの。全体が黄色っぽくくすんで、いかにも古い写真という印象だ。これはこれで味があるのだが、アプリに取り込まれたものは空も自然な水色に近くなり、全体がクリア。被写体が生き生きとよみがえってくるよう!

「人が見たまま、感じたままの世界を、画像として適正に再現する」ことを目指して開発された、 “Image Intelligence”という技術だそうだ。紙と違って自由に拡大縮小もできるから、すごい見やすい!


・自動タグ付け機能

写真は自動で簡単なタグ(「ビーチ」「猫」など)がついて、さらに日付ごとに分けられていた。どのような機能かというと……

この日付プリントを読み取っているらしい! 昔の写真によくついているこれ、カメラ本体で設定して焼き付けるのだが、デジカメのようにExifデータなんてないから撮影日を記録する貴重な方法だった。手動設定のため時差や電池切れでデタラメな日付になっている、なんてのもフィルムカメラあるあるだ。

ただし、筆者が送ったほとんどの写真は古すぎて日付プリントはなく、どこから判断したのか不明な日付タグが付与されていた。日付タグは複数の写真をまとめて変更可能なので、自分で撮影日がわかっている場合は修正しよう。

もちろん自作のタグをつけて整理したり、グループ化してアルバムにまとめることもできる。「PhotoBank」ユーザー同士であれば、写真の共有もできるようだ。


・ダウンロードできる?

一度ストレージに取り込んだ画像は、自分のスマホやパソコンにダウンロードしたり、メールに添付したり、Apple製品同士ならAirDropしたりと、通常の画像データとして自由に使える。決して「自社アプリでないと見れません」というような不便な仕様ではない。太っ腹!

ということは、画像編集ソフトでの加工も自由自在だ。繰り返すが、これカビが生えかけていた40年近く前の写真。


・失って後悔する前に

紙の写真は簡単に複製したり共有することができない。時間の経過による劣化は避けられないし、火災や水害などで永久に失ってしまう可能性も常にある。東日本大震災では、津波で流出した写真の持ち主を見つけて返すという涙が出るような活動が報道されていた。

形あるもの、いつかはなくなる。なくなるゆえの良さもあるけれど、やはり大事な写真は手の届くところに残しておきたい。今は亡き人の思い出だったりするとなおさらだ。

現在、FUJIFILMでは先着2万名限定でネガフィルム2本分、または写真プリント50枚分を無料でスキャンしてくれるキャンペーンを実施中だ。キャンペーンゆえに通常サービスと少し違う部分もあるが、筆者としてはまったく不満はなかった。期間は3月31日までで、定員に達した場合は期間内でも締め切るそうなので、興味のある方は急いで申し込みを!


参考リンク:FUJIFILM
Report :冨樫さや
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:PhotoBank(iOS)