みんなで遊べるパーティーゲームの皮をかぶった友情破壊ゲーム『桃太郎電鉄』。本日2019年12月9日は、『スーパー桃太郎電鉄3』が発売して25年目だ。
本作は対キングボンビー兵器メカボンビーが初めて登場した作品。そんなメカボンビーは、子供だった私に実に色々なことを教えてくれた。
・友情破壊と呼ばれる所以
基本的にはゴールを目指し総資産で順位を決めるボードゲームである桃鉄。プレイしたことがある人ならば、キングボンビーのエゲつなさは知っていることだろう。コツコツ蓄えたカードや資産を根こそぎぶっ飛ばされ、1位からぶっちぎりの最下位になることなど日常茶飯事だ。
ちなみに、このキングボンビーは他のプレイヤーと同じマスに止まるか、追い越すことによってなすりつけることが可能。そのため、キングボンビーが爆誕するとゲームの雰囲気は一変する。仁義なきキングボンビーのなすりつけ合いが始まるのだ。鬼は死を意味する地獄の鬼ごっこである。
もちろん、そこに普段の友情など介在する余地はない。誰もが死と隣り合わせの戦場だ。騙したり騙されたりは当たり前、時にはゲーム外のことやヒエラルキーも含めて交渉が行われたりも。桃鉄が「友情破壊のゲーム」と呼ばれる所以である。
・待ち望んでいた存在
『スーパー桃太郎電鉄2』まで、私たちは擦り付け合うことしかできなかった。そこに『3』から颯爽と現れたのがメカボンビーである。
初めてメカボンビーがキングボンビーを撃破した時の感動は今でも覚えている。あのどうしようもなかったキングボンビーに勝った……。もう擦り付け合わなくていい! 友達を破滅させることもないんだ!! メカボンビー万歳! 戦争は終わったー!!!!
・メカボンビーの光と影
そして、誰もがメカボンビーを利用するようになった。多少のお金でリスクが軽減できるなら払わない意味など見当たらない。
だが、メカボンビーも必ず勝てるわけではない。というか、結構な確率で負ける。いつしか私たちは、メカボンビーの負けに怯えるようになった。勝てることを知ってしまったら負けられない。希望がある分、絶望がより深くなるから。
そんな怯えがヘイトに変わるのに時間はかからなかった。いつしか誰もがメカボンビーにフラストレーションを抱いていた。メカボンビーが負けると「使えねえなクズ鉄が」とののしる声まで聞こえるほどに。
だからと言って、今さらメカボンビーを買うのをやめることはできない。1人だけ不利になってしまうからである。
・メカボンビーが教えてくれたこと
初めて見た時は輝かしい光でも、いずれ目は慣れていくものだ。そして、慣れた頃には、そこから離れられなくなっている。メカボンビーの栄光と没落は、私が1番最初に出会った「依存」だったのかもしれない。
それも含めて、『桃太郎電鉄』には人の色々な側面を教わった気がする。63作もリリースされているのもそんな深みがあってこそだろう。ちなみに、2020年には新作がリリースされる模様。ヒューマンドラマ以上に人というものを教えてくれる。ゲーム界が残したヒューマンゲームに乾杯。