JASRACのせいで街から音楽が消えた! JASRACが音楽をつぶす!!
2019年7月には、音楽教室へ潜入調査を行って大炎上したことも記憶に新しいJASRAC。その所業はまるで悪の秘密結社のごとし! 許せねェェェエエエ!! というわけで、逆にJASRACに潜入してみた。
・ガチ潜入
東京都渋谷区上原3丁目6−12。これがJASRAC本社ビルの住所だ。場所は分かっている。とは言え、難しいのが何も考えずビルに入ったところで、受付で止められて終了ということ。それでは潜入とは言えまい。そこで、JASRACの会員になることにした。
そもそも、私(中澤)は売れていないとは言えミュージシャン。これまで何枚も全国リリースをしているので、会員登録もできるはずだ。と、ここで以下のような疑問を持った人がいるかもしれない。
「CDリリースしてるのにJASRACの会員じゃないの?」と。多分、リリースしたことがない人には分からない世界かと思われるため、先にこの疑問にざっくりお答えしよう。知っている人は飛ばしてくれ。
・なぜリリースしてるのにJASRAC会員じゃないのか
まず、CDをレコード会社からリリースする場合、著作権については、通常、音楽出版社(事務所など)とミュージシャンが契約を交わす。その音楽出版社が著作権管理団体(JASRACとか)と契約しているため、印税を受け取ることができるわけだ。
ただし、これはあくまで音楽出版社が間に入る契約であり、平たく言うと作品単体の契約。ミュージシャンが著作権管理団体の会員になっているわけではない。
この音楽出版社をすっ飛ばしてミュージシャンが著作権の印税を受け取れるのが、JASRACとミュージシャンの契約。したがって、著作者が自発的にJASRACと契約を結ばない限り、JASRACの会員になるということはありえない。CDをリリースしていてもJASRACの会員ではないミュージシャンはいっぱいいるのだ。
・入会の条件
さて、話を戻し、入会するにあたり、念のためJASRACの会員になるための条件を調べてみた。公式サイトの「著作権信託契約を結ぶための要件」によると、以下の条件のうち過去1年以内でいずれかを満たしていれば契約できるもよう。
1. 演奏等……入場料がある催物で、作品が利用されていること。定員が500名以下の会場の場合は、1年以内に3回以上演奏されていることが必要。※自身が主催する催物は除く。
2. 放送等……NHKや民間放送(BS・CS放送を含む)のテレビ・ラジオにおいて、作品が利用されていること
3. 映画……映画館又は入場料のある上映会等において利用されていること。定員が500名以下の会場の場合は、1年以内に3回以上上映されていることが必要
4. 出版……全国に流通する楽譜・雑誌等の出版物で、作品が利用されていること。ただし、出版社などが、市販を目的として企画・製作した出版物に限られる
5. オーディオ録音及びビデオグラム録音……全国に流通するCD、DVD等の録音・録画物に、作品が利用されていること。ただし、レコードメーカーなどの録音・録画物製作者が、市販を目的として企画・製作し、累積1,000枚以上製造された録音・録画物に限られる
6. 有線放送等……有線ラジオ放送又は有線テレビジョン放送において利用されていること
7. 業務用通信カラオケ……業務用通信カラオケにおいて、作品が利用されていること
8. インタラクティブ配信……商用配信サイトにおいて、作品が利用されていること。※投稿型サービスは除く
──放送、映画、有線、カラオケはある程度売れていないと厳しいだろう。だが、演奏、出版、録音、インタラクティブ配信は売れていない私でも経験がある。過去1年以内で言うと、演奏、インタラクティブ配信の項目は規定を満たしているんじゃないだろうか。
・インタラクティブ配信とは
インタラクティブ配信って要はi-Tunesとか、Spotifyへの配信でしょ? 今の時代、こういった配信はまともな自主音源さえあれば自分ですぐにできる。
また、演奏の項目はハッキリ言ってゆるい条件だ。普通に活動しているバンドマンであれば、ライブハウスで年3回くらいはライブをしているはず。「※自身が主催する催物は除く」と記載されているが、それはつまり、ライブハウスのブッキングイベントはOKということではないだろうか。主催がライブハウスだから。
・ファーストコンタクト
というわけで、名前や連絡先、住所などの個人情報や作品情報などを入力し資料請求したところ、後日JASRACから電話がかかってきた。何の用だコラ! タココラ!!
JASRAC「私、JASRAC会務部の山本と申します。信託契約の資料請求ありがとうございます! 入力いただいた内容を確認させていただきたくお電話差し上げたんですが、今お時間大丈夫でしょうか?」
──あまりに突然のコンタクトだったため、思わずブチキレてしまったが、内容は改めて入会要項を満たしているかの確認とのこと。あ、どうもご丁寧にすみません。
そこで、演奏とインタラクティブ配信の項目について質問したところ、私の認識に問題はないようである。だが、どうやら契約するには入会費がかかるようだ。まあ、さすがに無料ではないか。こうしてファーストコンタクトは普通に終わった。
・山本という男
なんだか肩透かし……いやいや、騙されてはいけない。あの泣く子も黙るJASRACである。電話越しでは丁寧に感じた山本という男は、実はインテリヤクザみたいなキャラに違いない。丁寧に笑顔で人を追い込んでいく姿に「スマイリー山本」と呼ばれているはずだ。山本こわッ!
できることならスマイリー山本とはかかわりたくないが、JASRACに潜入する以上いつか決着をつけねばならない相手の1人である気がした。
早くもJASRACの恐ろしさを垣間見た私。会員登録が進むにつれ、スマイリー山本は次々とその本性をあらわにしていく! 実に2カ月にも及んだ会員登録は2ページ目で!! 一刻も早くJASRAC本社ビルの内部を見たい方は3ページ目にGO!
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
【実録】JASRAC(ジャスラック)に潜入してみた! 本社ビルの中で見た社員の「本当の姿」がコレだ!!(その2)
スマイリー山本の恐怖の電話から約1週間、資料が送られてきた。封筒の中には著作権信託契約の契約書と入会申込書や履歴書も同封されている。どうやら、JASRACとの著作権契約には2つのパターンがあるようだ。
・JASRACの会員になる意味
それは「著作権信託契約」と「会員契約」。著作権の管理を任せるだけなのが前者で、受け取れる著作物使用料に会員との違いなどはないという。では、入会する意味はと言うと……
正会員になると、JASRACの運営に参画することができ、理事に立候補することもできるのだ。ちなみに、正会員になるためには入会した後、規定の条件をクリアする必要がある。そのため、最初は準会員からスタートとなるのだ。
というわけで、ただ収入を得たいだけなら、著作権を預ける信託契約だけでも十分なことが分かったが、より自由に潜入するため私は入会する。
また、契約には、戸籍謄本と印鑑証明書が必要なようだ。まあ、契約である以上当然かもしれない。書類全てを揃え、JASRACに送り返した。すると数日後にまたスマイリー山本から電話が。
スマイリー山本「書類が届いたので、審査に入らせていただきます! 疑問などはございませんか?」
──ありません。よろしくお願いします。
スマイリー山本「気になったことがあったらいつでも聞いてくださいね。それでは、よろしくお願いします」
──それだけか山本コラ! お前から電話きたら不備があったのかとドキドキするんだよコラ!! いつも丁寧にありがとうございますコラ! そして、約1カ月後、私の元にまたJASRACから封筒が届いた。
・入会費
次は入会承認書。要は「審査通りましたので、入会費を振り込んでください」という通知である。会員になる場合、信託契約申込金が2万7500円、入会金が2万5000円、初年度会費が2000円(年会費は4000円だが10月から入会のため)で5万4500円だ。高えよ山本!
・会員証をゲット
とは言え、当然振り込む。その入会承認書の裏側には入会金納入後のスケジュールが書かれていた。予定では、著作権信託契約は11月1日に開始し、11月上旬に著作権信託証書が届くようだ。
入会金を納入し、改めて住所確認の電話などがかかってきた末……
ついにJASRACの入会通知が来た!
さらに……
会員証もゲット!
長かった……。それもそのはず、ここまで実に2カ月以上の道のりだ。前述した通り、今回認められたのは準会員で、正会員になるためにはここからさらに実績を積む必要がある。
・山本に電話
しかし、ビルの中に入るだけなら準会員で問題ない。すなわち、レディ・パーフェクトリー。準備は完全に整った。そこで、今度はこちらから山本に電話をかける。
──ちょっとJASRACについてモヤモヤしてることがあるんですけど、電話だと分かりづらいので、本社で説明を受けてもいいですか?
スマイリー山本「もちろん! 一緒にモヤモヤを解決できればと思います!!」
ククク、馬鹿め。相変わらずスマイリーっぷりを発揮しておるわ。その丁寧さが命取りになるとも知らず……そして、後日──。
時はお昼前、場所は小田急線代々木上原駅のすぐ近く。天を射抜かんばかりの巨大なビルの前に私は立っていた。そう、JASRAC本社ビルである。
見上げるような摩天楼。ラスボスのいそうなオーラがむんむんだ。首を洗って待ってろ山本ォォォオオオ! ついにJASRAC本社ビルの中へ踏み込む! そこで私が見たものは!? 内部のもようと山本の本当の姿は3ページ目で!!
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
【実録】JASRAC(ジャスラック)に潜入してみた! 本社ビルの中で見た社員の「本当の姿」がコレだ!!(その3)
ビルに入ると、すぐ受付があった。予想通りの構造である。受付の横には、取次を待つ間に座るためか椅子が設置されており、受付の向かいの壁には各階のインフォメーションパネルが!
これは攻略に役立ちそうだ。ふむふむ。6階に図書室もあるのか。2階の「調査部」や5階の「分配部」などはJASRACをビンビン感じる部と言える。最上階である9階は理事会室のみなところもお決まりのパターンだ。
とは言え、アポなしで理事会室に入ることはできない。そして、そのアポは準会員の段階では取れないだろう。ダンジョン攻略にレベル上げは必要不可欠なのだ。
・受付をクリア
というわけで、今回の的はスマイリー山本と会務部である。受付でゲストパスをもらい、エレベーターで会務部のある3階へ向かった。
エレベーターを降りると、そこは会務部の事務スペース。奥まで碁盤の目のように並んでいるデスクが、エレベーターの前で長机に区切られている。その長机の席に30代前半くらいの短髪の男性が座っていた。
・スマイリー山本登場
「中澤さんですか?」と、にこやかに声をかけてくる男性。会務部の受付だろうか? そこで「会務部の山本さんいらっしゃいますか?」と聞くと、その男は爽やかな笑顔でこう答えた。
──「私が山本です」と。
スマイリー山本キタァァァアアア!! その瞬間、私はある種の感動を覚えた。この2カ月追い求めた敵が今目の前に。いや、2カ月じゃないな。オリジナル曲を作り始めた時から山本は私の敵になる運命だったと言っても過言ではない。ということは、ここで会ったが15年目。やっと会えたね。
・スマイリー山本の本当の姿
いかんいかん。山本にたどり着けた嬉しさだけで目的を達成した気になったが、むしろ闘いはここからだ。そして、まず、私がやらなければならないことは……
──JASRACって凄いモヤモヤしてるんですよね。もう現在進行形で不透明って言うか、フォトショップでぼかしのフィルターがかかってますよぶっちゃけ。
山本「確かに、システム的に複雑な部分もありますからね……。今回は、一緒にそのモヤモヤを晴らしていきましょう!」
──マジッすか!? モヤモヤ晴らしちゃってもいいですか?
山本「もちろんです!」
──分かりました! じゃあモヤモヤなくしちゃいますねー!!
山本「ハイ! よろしくお願いいたします!!」
──ついにあらわになった山本の本当の姿! モヤモヤがスッキリなくなったことで新たな闘いの火ぶたが落とされた。JASRACのやり口やシステムについて問い詰める最後のバトルのゴングは4ページ目で鳴り響く!!
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
【実録】JASRAC(ジャスラック)に潜入してみた! 本社ビルの中で見た社員の「本当の姿」がコレだ!!(その4)
著作権について聞くという名目の今回のアポ。そこで聞くのは、私が登録する上で現役ミュージシャンとして引っかかっていることだ。まずは……
問1:著作権を信託した曲って、YouTubeに自由に投稿できるんですか?」
──これである。現在、YouTubeは音楽を発表する上で欠かせないツールの1つ。これに投稿できなくなるとか、投稿する上で申請が必要とかなるとめんどくさいことこの上ない。
山本「もちろんできます」
──他人が作った曲を使って投稿する場合はどうですか? 例えば、“弾いてみた” とか
山本「問題ありません。JASRACが管理する楽曲を使って投稿する分には、YouTubeが包括契約で使用料を支払っているので、投稿者に負担は生じません」
──なるほど。“弾いてみた” や “歌ってみた” 系は、JASRAC的にはクリアだということですね。では、CD音源をそのままBGMとして使用する場合はどうですか?
山本「著作権については、さきほどの包括契約でYouTube側が許諾を得ていますが、音源を使用する場合は、著作権とは別に、アーティストやレコード制作者の権利である原盤権をクリアする必要があります。
したがって、原盤権を有するレーベル等の許諾が必要です。誤解を受けることがあるのですが、JASRACは作詞家・作曲家の権利である著作権を管理している組織で、原盤権は管理していません」
──つまり、全部自分で作ってる私の曲の場合は、私の許可があればオールクリアと。まあ、私の音源を使う人はいないだろうけど、これを読んでる人の中で何かに使いたい人がいればご自由にどうぞ。ちなみに、今回登録した音源は『ロケットマン』という曲だ。
さて、宣伝も華麗にねじ込んだところで、BGM使用についても、著作権上は問題がないことが分かった。他に何か注意すべきポイントはありますか?
山本「あくまで、問題ないのはYouTubeなどのJASRACと包括契約を結んでいるサイトだという点です。包括契約を結んでいないサイトへの投稿は、原則お控えいただいています」
──契約をしているサイトはどこかに書いてたりするんでしょうか?
山本「全てではありませんが、JASRACと契約している動画投稿サイトやブログサービスについては、JASRACのウェブサイトで公開しています!」
──とのこと。少なくとも、一般的な動画サイトでの利用に関して、投稿者とJASRACの間には問題が起こらなさそうだ。
・問2:自分の曲でも複製すると利用料を払わないといけない?
でもでも! ミュージシャンがしたいことってもっと一杯あるはずだ。例えばそう……自主制作CDをリリースするとか。CDを複製する権利である複製権はJASRACの管理のはず。自分でCD複製して金取られたらインディーズとしてはたまらんでしかし。
山本「こちらは対価を得ない場合は使用料をお支払いいただく必要はございません。なお、スタジオやプレスの費用などの実費相当の対価を得る場合も、対価を得ないのと扱いは同じで使用料は不要となります」
──スタジオやプレスの費用まではOKなんですね。ただ、どうせ作るなら黒字出したいと思って作るもんじゃないですか? 自主制作なんて黒字が出るだけで凄いレベルなのに、さらに持っていかれたらインディーズ活動はキツイですよ。
山本「おっしゃる通りです。そこで、2017年から、製作実費を超える対価を得る場合であっても、複製枚数1000枚までであれば使用料が不要となりました」
──売る場合でも、1000枚以内なら自由に複製できるということですか?
山本「その通りです」
──むう……。確かに、事務所がついてないガチインディーズの自主制作でCD1000枚なんて普通売れる数ではない。今なら500枚でも凄い部類なんじゃないだろうか。
ロットで500枚より1000枚の方が単価安いから1000枚作ったものの、家にCDが山のように積まれているインディーズミュージシャンって一杯いると思うし。
・問3:ライブで自分の曲を演奏したら利用料を払わないといけない?
でも、著作権の自己使用ってなにもCDだけじゃないよな? むしろ、普通はライブの方が多いのではないだろうか。そして、ライブって大体入場料とかで対価を得るもんだ。ライブで自分の曲を演奏する場合も金取られたらインディーズバンド活動できないんですけど。
山本「おっしゃる通りだと思います。ただし、ライブ利用に関してもミュージシャンが著作物使用料を支払うというパターンは稀だと思います」
──なぜですか?
山本「ライブの場合も、CD同様、一定の条件のもと自己利用に使用料はかかりません。ライブでの自己利用で利用料が発生するのは、入場料と会員定員数との積が400万円を超える場合です」
──400万円ということは、入場料が3000円だとして……1333人! 渋谷クラブクアトロは収容人数750人だからまだOKか。クアトロ以上となると、もう次はZEPPとかSTUDIO COASTになりそうだ。BLITZもライブハウス営業停止したし。
山本「ちなみに、ホットスタッフなどのコンサートプロモーターが入った場合、主催者はそのプロモーターになるため、著作物使用料はプロモーターからJASRACへ支払われます」
──確かに、それだとミュージシャンが払うことはあまりないかもしれない。1300人規模のホールにイベンターなしの自主企画って、そもそもこれまで開催されたことがあるのかどうかもちょっとよく分からないくらい凄いことである。
では、カバー曲を演奏する場合はどうなるんですか? これだと、小さいライブハウスでも著作物使用料の対象になりますよね?
山本「毎日ブッキングライブを行っているような店舗ですと、多くの場合、主催者は店舗になると思われます。そのため、ライブハウスとの契約で利用に関する著作物使用料は支払われているため、出演者の中澤さんが別個に支払う必要はございません」
──契約をしていない店舗で演奏した場合は?
山本「その場合も、通常はライブハウスとJASRACが契約をすることになるので、ただちに問題になるということはありません」
──むむむ……インディーズミュージシャンの目線で言うと、ネットもCD発売もライブも活動する上での問題は特になさそうだ。
・問4:JASRACの会員になることでミュージシャンがもらえる著作権印税について
でも、信託契約申込金が2万7500円、入会金が2万5000円って高くね? キレそうなんだけど。
山本「確かにそれはおっしゃる通りかもしれません……。契約を検討されている方の中には、申込金等の初期費用がネックとなって申し込みをためらう方もいらっしゃいます。JASRACとしても著作者の目線になって、見直しを検討しなければならないと思います」
──元を取りたいんですけど、作詞・作曲の印税って曲が売れる以外で何でもらえるんですか?
山本「テレビやラジオなどの放送や、カラオケ、映画などでの使用とか……」
──そんなに売れてません(半ギレ)
山本「あとは、インタラクティブ配信での再生数、YouTube・ニコニコ動画などのネット配信での再生数……」
──え? それも著作物使用料もらえんの? 広告料とか以外で? でもそれって自分で投稿したものも大丈夫なんですか?
山本「YouTubeなどプラットホームが契約している場合、自分で投稿した動画でも著作物使用料が支払われます。
もちろん、他の人の動画にBGMなどで使用された場合でも同様です。こういった利用料をアーティストに還元するための包括契約ですので。あと、ライブ演奏も同様ですね」
──ライブハウスで自分の曲を自分で演奏したとしても、著作物使用料をもらえるということですか?
山本「そうですね。料金や会場のキャパに応じて定められた著作物使用料が著作者に支払われます。こちらは、先ほども申し上げた通り、多くの場合、プロモーターかライブハウスが利用者になります」
──実際の集客は関係なし?
山本「利用分野によって実際の集客(収入)に応じた使用料としているものもありますが、ライブやコンサートについては基本的に関係ありません。
事前に使用料を算定できる利便性を確保するため、使用料はあらかじめ定められた料金やキャパに応じて決められます。もちろん、各利用分野の団体の皆さまと十分協議を行ったうえで」
・問5:どうやって曲が利用されているかを調べているのか?
──そこは、どうやって判断しているんですか? 莫大なデータ量ですよね?
山本「YouTubeなどのネット利用者やプロモーターが主催するコンサートについては、それぞれ全ての曲目の報告を受けています。ライブハウスの利用に関しては、これまでサンプリング調査で分配楽曲を特定していましたが、2020年3月からは全曲分配方式へ変更します」
──でも、日本全国+ネットですよね? 特にネットなんて、YouTubeも正確に把握できているのか微妙な気がするんですが……
山本「利用楽曲の把握の正確性と効率性の確保は、永遠の課題でもありますね。会員様からのお声も多く、日々、試行錯誤を重ねています。
YouTubeやライブハウスでの利用について会員の皆さまが把握した情報をそれぞれご報告いただいていますが、ライブハウスなどの演奏による利用については、本人がオンラインで届け出ができるシステムを2019年7月に開始しました」
──ライブして、自分で曲目を届けたらお金がもらえるということですか?
山本「その通りです」
──少なくとも、自分の活動に関してはちゃんと著作物使用料をもらうことができそうだ。私自身、今でもバンドをしているため、活動していく上で気になる部分を聞く形となったことはご容赦いただければと思う。
・潜入した思ったこと
JASRAC本社の中に潜入することが1番の目的だった今回の突撃。ロケットニュース24の記事の中では、異例とも言える長さのレポートとなったが、正直、著作権についてや、JASRACの問題を語りきるには全然足りないと思っている。それほどに複雑なのだ。
例えば、記事中に何度も登場した「包括契約」という言葉。JASRACの言い分は、効率的にミュージシャンに著作物使用料を還元するためのものとのことだが、これについても見る人の立場によって否定的な意見もある。
じゃあ、ミュージシャンがJASRACに入る意味って? 入らなきゃいいのかというと、そういう問題でもない。例えば、ライブハウスに出演して「著作物使用料を払ってください」と自分で交渉したとすると、ライブハウスはお金を払ってくれるだろうか?
私は払ってくれるとは思えない。おそらく、契約の話にもならず門前払いされるだろう。出演依頼なんて来なくなりそうだ。ここら辺はJASRACがミュージシャンを守っている部分だと個人的には思う。
そのため、1番良いのはJASRACが潰れることではなく、そのシステムがミュージシャンの需要と合致することではないだろうか。それに近づけるため、会員の意見を聞いてJASRACもやり方を試行錯誤しているのでは。
その証拠が、著作権の自己利用についてのオンライン届け出開始や全曲分配方式へ変更されたこと。繰り返すが、正会員はこういった経営面での方針を決める権利を持っている。
というわけで、私が潜入して見たJASRACの本当の姿は全然秘密結社ではなかった。気になることがあるミュージシャンは普通にJASRACに問い合わせてみたら良いと思う。契約の意思があれば、本社ビルに話を聞きに来るだけでもウェルカムらしい。
・最後に
最後に、今回の記事を潜入だけではなく、システムを説明するレポートにしたことには理由がある。それは私自身もそうだったように、私の周りのミュージシャンの中にも、JASRACをよく知らずに悪感情を抱いている人がいるということ。
ただでさえ複雑な上、世間一般のイメージは悪の秘密結社なため、そうなってしまうのは非常によく分かる。
だが、音楽で食べていきたいと願うなら、「JASRAC潰れろ!」とよく知らずに叫ぶより、もう一歩先に進んでみるのも良いのではないだろうか。
もちろん、この記事は、冒頭で触れたヤマハ音楽教室への包括契約問題についてJASRACを擁護するものではない。私はその是非は、人が判断するものではなく裁判所が決めるものだと思うからだ。また、JASRACへの入会をオススメするものではない。やっぱり入会金は高いし。
ただ、音楽でお金を稼ぐというのはとてつもなく難しいことも事実。お金が稼げないことが音楽活動をやめる原因になることが多いのも事実。
そのため、ミュージシャンは自分の活動の内容を鑑みて、JASRACはじめ著作権管理団体の意義をちゃんと知った上で、それぞれで選択する必要があるのではないか。そう思いこの記事を書いた。音楽を愛する売れないミュージシャンの参考になれば幸いである。
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.