
私(佐藤)は常日頃から「お笑い芸人はどうやってネタを考えているのか」というのが気になっている。とくに漫才師の場合は劇場公演やテレビ出演で忙しく、限られた練習時間のなかで新しいネタを作り続けなければならない。ネタの発想や表現方法は、どうやって培っているのか?
今夏、そのナゾを知る手がかりになりそうな書籍が発売された。ナイツ塙さんの『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(集英社)である。これを読んだ結果、どうしてもストリップ劇場に行ってみたくなり、人生で初めて劇場を訪ねることになった。
・グルグル回ってる
書籍とストリップ劇場は直接関係ない。だが、間接的には大いにある。私が劇場を訪ねる気持ちになった理由を、順を追ってお伝えしたい。そもそもなぜ漫才のネタ作りや表現に興味を持ったか。正直に明かそう、私は今の仕事を続けて10年になる。時々自分が同じところをグルグル回っているような気がしてしまう。
新しいことはできているだろうか? 今までにない表現に努めているだろうか? 答えらしい答えが見つからないこともある。そんな時にテレビで漫才を見ると、「どうやってそんな面白いことを思いつくんだろう?」と疑問に思うことがある。
そんなある日、編集長のGO羽鳥が塙さんの本を勧めてきたのだ。書籍を購入して読みはじめると止まらなくなり、ほぼ1日で読み終えてしまった。塙さんの漫才に対する考え方や、漫才頂上決戦「M-1グランプリ」に関する考察は非常に興味深い。当然ながら、漫才師とライターはカンタンに比較できるものではないのだが、記事を執筆するうえで、その考え方が役立つと感じた。
・「漫才師のバイブル」と呼ばれるDVD
2度3度と繰り返し読んでいるうちに、内容のなかに登場するDVDが気になりだした。そのDVDは “漫才師のバイブル” と言われており、これを見ればM-1の準決勝まで行けるかもしれないと、サンドウィッチマンの伊達さんが言ってたという代物だ。そのDVDにナニが収められているのか? 気になって気になって仕方がなくなった。
そのDVDとは、『紳竜の研究』だ
これは見るしかない。そう思い、ネット検索したところ、アマゾンで取り扱いがあることを発見し、速攻で購入。到着後にすぐに見た次第である。
・島田紳助、1度きりの講義
紳竜とは、2011年に芸能界を引退した島田紳助さんと2006年に他界した松本竜介さんのコンビ「紳助・竜介」のことだ。コンビとしての活動期間はわずか8年(1977~85年)。その間に、漫才界のトップに上り詰め、当時押しも押されもせぬ人気を博した伝説的なコンビ漫才師である。
2枚組のDVD『紳竜の研究』の第2章には、その漫才に関するノウハウが詰め込まれていた。2007年の紳助さんが1度だけNSC(吉本総合芸能学院)で1度だけ講義した特別授業の内容が、90分間収録されている。
その内容はとても興味深く刺激的なものだった。デビュー前、20歳そこそこだった紳助さんは、独自の哲学のもと漫才の研究を重ねに重ね、竜介さんとコンビを組むや否や大ブレイク。活動期間数年で、名だたる演芸番組に出演するに至る。
漫才に関する講義内容ではあるが、さまざまな分野に通ずる考え方が集約されている。そう言っていい。もちろん、私の仕事にも通じるものがある。講義の内容を観終わって、近頃の心のモヤモヤが晴れるような気がした。
・初めてのストリップ劇場
ここからようやく本題だ。なぜ、ストリップ劇場に行こうと思ったのか? それは講義のなかで紳助さんが当時の芸人の卵たちに向かって、ストリップ劇場に行くことを勧めていたからだ。全部さらけ出して、人が人の心を揺さぶる。「舞台に立つ人の原点があると思う」と話していたのだ。
私は舞台に立つ人間ではない(ポールダンスの発表会で年に2回は立つけど……)。しかし、何かの参考になるかも。ヒントを得られるかも。そんな気持ちで、人生で初めて劇場に足を運んだ。
・劇場のシステム
何分勝手がよくわからず、入るまではかなり緊張していた。入り口で入場料(5000円)を払い、チケットをもぎってもらったら中へ。小さなホールの前には灰皿があり、喫煙はここで行う。ホール内はスマホを取り出すことも禁じている。無断で撮影されることを防ぐためだ。チケットの半券があれば、再入場可能。ただし半券を紛失したら、いかなる理由でも再度チケットを購入しなけてばいけない。
この劇場は日に4公演行っていた。1回のステージが約2時間。ダンサー6名(日によって異なる)が交代で出演し、合い間の写真撮影(チェキ撮影のようなもの)で小休止をとる形だ。ちなみにこの日は平日昼間にも関わらず、場内はほぼ満員。多少の人の出入りはあったが、どのステージも人がいっぱいいる状態だった。
・言葉なき対話
何人かのダンサーのステージを見ていると、客の間には暗黙のルールがあることに気がついた。たとえば、ダンサーが派手な動きでポーズを決めると、一斉に拍手が起こったり、照明が暗転すると誰もが私語を慎み、ホール内が暗闇と静寂に包まれたり。ダンサーと目が合えば微笑んだり、会釈する人もいた。
ステージの最中、交わされる言葉はひとつもない。しかしダンサーと客の間で、確実に言葉なき対話が行われているように感じられた。舞台を通して、無言のコミュニケーションが成立している。舞台ですべてをさらけ出すダンサーに対して、客は拍手で応える。その拍手にはどこか「敬意」にも似た響きがこもっているようだった。
・すべてをさらけ出して
そしてもうひとつ、表現とは本来自由であることも気づかされた。ダンサーによってステージの構成は異なり、それぞれの個性が見える。一挙手一投足にその人そのものが表れて、そのどれもが美しかった。隠すことなくすべてをさらけ出す様が、こんなにも美しいとは。ステージの張り出しで天を仰ぎ、手を真上に突き出している。それだけで、古代の彫刻像のように見えた。
自分に今、足りていないものは何なのか。その輪郭らしきものが見えた気がする。隠すようなものなんか何もない。
Report:佐藤英典
イラスト・Photo:Rocketnews24
佐藤英典





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