出社したくねェェェエエエ! 家のドアが重い月曜日の朝。今すぐお布団の中にダイブしたい。そんな気持ちで、朝ごはんを食べに富士そばに寄ったところ、「2日酔いが吹っ飛ぶ!?」という文字が目に飛び込んで来た。
どうやら『バクテーそば』というものが販売されているらしい。東南アジアのスープ料理である肉骨茶(バクテー)はスタミナ料理としても知られている。
ぜひとも活力は欲しい。だがしかし、メニュー写真のバクテー量では今の私(中澤)を出社させるには少し足りない気がした。そこでバクテーそばを肉10倍増しにしてみたぞ!
・富士そば上野広小路店
私が立ち寄ったのは富士そば上野広小路店だ。店頭に貼られたバクテーそばのポスターには、肉増しができることが記載されているが5倍増し以降は略されており上限が書かれていない。ちなみに、5倍増しでプラス640円のようだ。
入店して券売機を見ると、バクテーそばは税込み590円。肉増しのボタンはないため、直接店員さんに言う形式のようだ。食券を購入し、試しに店員さんにどれくらい肉増しが可能か聞いてみたところ……
「いくらでもいけますよ!」
──と力強い返事。じゃあ、10倍でお願いします。
店員さん「え!? じゅ、10倍ですか? 店長呼んできます」
──どうやら、今まで10倍を頼んだ客はいないようだ。なんか手間を取らせてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだが、私も出社できるかどうかの瀬戸際である。引くわけにはいかない。
店長さん「10倍大丈夫ですよ! プラス1460円になりますが……」
──大丈夫です。
店長さん「ではしばらくお待ちください!」
──にわかに動き出す厨房。客は私と外人さん2人組の3人だけ。ちょうど暇な時間なようで良かった。そんなことを考えていると、そばができ上がった様子。「バクテーそばのお客様!」と呼ばれたので取りに行ったところ……
ドォォォォオオオオンッ!
──と、大盛用の器に目いっぱい盛られた肉・肉・肉!! その姿はもはやただの豚肉マウンテンだ。そばが影も形も見えねェェェエエエ!
・そばが遭難
そこでまずは行方不明のそばを探してみることにした。掘っても掘っても姿を現すのは豚肉ばかり。そば隊員、いるなら返事をしろ! そば隊員ーーーーー!! ま、まさか……ゴクリ。捜索する手に緊張が走る……と、その時!
そば「やあ♪」
そば隊員発見しましたァァァアアア!! つゆにキラめく姿はほっそりとしている。まるで遭難した同志を発見した時のような喜びを覚えた。
・登山開始
さて、役者がそろったところで始めるか。山登りを! バクテーに貪りつく私。ニンニクとコショウのきいた豚肉の強烈なパンチに目が覚めるようだ。ヒーハー! レッツパーリータイム!!
さらに、豚の脂がキラキラ光る豚骨スープ風のつゆで体がガンガン温まっていく。額からは汗が吹き出すが、そんなことは気にしてられない! この山を征服するまでは!!
バクテー、バクテー、そば、バクテー!
バクテー、バクテー、バクバクテー!
豚肉の山が少しずつ標高を下げていく……
やがて……
登・頂・完・了!!
気づけば、暗雲立ち込めるようだった気持ちも晴れ渡った空のようにスキッとしている。家を出た時はあれだけ重かった体もほかほかだ。これが『バクテー10倍そば』の山頂の景色……!
人類初のエベレスト登頂を成し遂げた登山家エドモンド・ヒラリーは言った。「征服すべきは山の頂上ではなく、自分自身だ」と。思えば『バクテー10倍そば』とは自分との闘いだったのかもしれない。月曜日から目を背けようとする自分との。
いつだって月曜日は我々の前に立ちはだかる。時には、圧倒的な現実に押しつぶされそうになることもあるだろう。そんな時は、富士そば上野広小路店の『バクテーそば』が背中を押してくれるはずだ。幾千の月曜日を越えて私は今日も出社する。
・今回紹介した店舗の情報
店名 富士そば上野広小路店
住所 東京都台東区上野2-1-10
営業時間 24時間営業
定休日 無休
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼これが山頂の景色……!