「何事も始めるのに遅すぎることはない!」なんていうけれど、実際に始めようと思ったら年齢や環境を理由に躊躇してしまう人も多いのではないだろうか。特にスポーツ系。
なのだが! 世の中には「60才から始めても成長が見られる」という格闘技があるという。それはある新作映画にも登場し、素人が習得した結果、殺人マシン級の強さを獲得するのだとか。マジかよ……気になったのでその格闘術「クラヴマガ」の門を叩いてみた。
・普通のママが復讐の鬼に! 映画『ライリー・ノース 復讐の女神』に登場の格闘術
ご存知の方もいると思うが、まずはクラヴマガについてサラっと確認しておこう。これは第2次世界大戦前夜、イスラエル軍のために考案された格闘術だ。
短期間でも習得しやすく、かつ実戦向きというのが特徴。実際にその即効性と実用性は確かなもので、現在ではイスラエルのみならず米国やスウェーデンなど各国の軍や特殊部隊で採用されているのだとか。
そして、主演のジェニファー・ガーナーも撮影時の訓練に取り入れ、クラヴマガを始め様々なスキルを一般人が習得した結果……というのが映画『ライリー・ノース 復讐の女神』である。『96時間』のピエール・モレル監督の最新作で、『96時間』が最強パパなら、今作は最強ママ・ライリーが主人公だ。
ただ『96時間』と異なるのはライリーは元々どこにでもいる普通のママということ。麻薬密売組織に夫と娘を殺され、その復讐を遂げるためにクラヴマガを習得。事件から5年後、ありとあらゆる関係者を襲っていくのである。
いや、言うてもフィクションだし……と思いながらも、本作の場合、非現実すぎる設定では映画としての味わいも半減してしまう。もしかしたら可能なのかもしれない……ということでライリーと同じく母親で格闘技経験ナシの私・沢井メグが挑戦、クラヴマガを5年間続ければ殺人マシン級の強さになれるのか確かめてみることにした。
・本当に素人でもライリーみたいになれるのか
今回、教えてくれるのはクラヴマガ・ジャパンのインストラクター川畑勇人先生だ。
この日の体験プログラムは約15分のウォーミングアップの後、約30分の基本トレーニング体験、そして最後に映画の戦闘シーンにチャレンジするというものである。
川畑先生によると、クラヴマガはスポーツではなくあくまで近接格闘術。ルールなしのストリートファイトのようなものだ。目的は真っ白になるまで戦い抜くことではなく、「相手を制圧する」もしくは「逃げおおせる」ことであり、つまるところ「生き残る」ことなのだ。
そのためウォーミングアップからの動きが独特。腕立てしながらパンチを繰り出したりと、本番が恐ろしくなるほどハードだ。ヤバイ、すでに心臓がバクバクいってる!
さてトレーニングでは基本のパンチ、キックの動きから、凶器を持った敵への対処法を教わった。
具体的には敵が至近距離でナイフを向けてきた場合、そしてナイフを持って突進してきた場合の2パターンだ。
実際にやってみて感じたのは、クラヴマガはとても「合理的」であるということ。たとえば「この関節をこの方向に押せば、小さな力で相手を投げることができる」「ナイフを握った手のこの方向に押したら、どんなに強く握っていても相手はナイフを落としてしまう」など、ひとつひとつに理屈があるのだ。
わかる! 説明はどれも「なるほど!」と思うものばかりで、一度聞いたら忘れないほどシンプル。ここがクラヴマガが格闘経験がなくても習得しやすいポイントなのだろう。
しかーし! その理屈を、瞬時に行動に移せるかは訓練が必要。実践となると、体がなかなかついていかないのだ。だが、何度も同じ動きをしているうちに、体が覚えていくのがわかる。最後、ラッシュミット打ちをしながら、ランダムにナイフで襲われるというトレーニングでは完璧な動きではないものの、敵から身を守りつつ武器を奪うことができた!
・結局のところ5年の修行で殺人マシン級は現実的? プロに聞いてみた!
体験はほんの1時間ほどだったが、素人でも理解しやすくトレーニングをつめばいいところまでいけそうな感触! だが実際プロの目から映画の設定を見たらどうなのだろう?
──実際に素人がクラヴマガを始めて5年でライリー・ノースのような殺人マシン級になることは可能でしょうか?
川畑先生「その方のセンスもあるので難しいんですけど……でも5年、本当に死ぬ気でやれば、死ぬ気で5年間毎日やればあれぐらいになる可能性は十分にあるかなとは思います!」
可能性はある! それも十分に!!!! 誰もが最強になれる可能性キタァァァーッ!
さてクラヴマガ・ジャパンでは、1~5までのレベルごとにプログラムが組まれており、柔道の帯のようにベルトで色分けされているが、ライリーのレベルはどれほどのものなのだろうか。
川畑先生「完全にブラックはいっているんじゃないでしょうか?」
レベル5がブルーベルト、その上がブラウンで、さらに上のレベルがブラック。2段階以上のスキルは間違いなくあるという。それが殺人マシン級ということか! 誰にでも可能性はあるとはいえ、道のりは遠そうだ……。
では逆に、私たちが日常生活のなかで「起こり得るリスクに対処するために」必要なレベル、実際に護身術としてひと通り対処できるレベルになるには、どこを目指せば良いのだろう?
川畑先生「できればレベル4くらいですね!」
その理由は、レベル1~2では敵が素手で襲ってきた場合の対処法が主になるから、とのこと。凶器への対処は基本的にレベル4からになるのだそうだ。
川畑先生「それこそたとえばナイフで刺されたりとか、ナイフを首につきつけられて脅迫されている状態ですと、1~2くらいの内容では対処がしきれない部分があるので、レベル4くらいを身につけたら間違いありません」
とのことだった。レベル4は早い人で3年くらいで習得可能らしい! つまりまとめると……
結論1:素人が5年でライリー・ノース級になることは可能(5年間死ぬ気で毎日訓練)
結論2:護身術としてはレベル4が目安(クラス参加120回以上、早い人で3年)
・生き残るための護身術
クラヴマガが格闘技未経験者でも習得しやすく、さらに修行をつめばライリー・ノースのようになれるほど即効性と実践性があるということがよくわかった。最後に、護身術のポイントも聞いてきたのでお伝えしたい。
【相手にコチラの動きを悟らせない】
コチラが構えると、向こうも構えてしまうもの。ファイティングポーズなどもってのほかだ。相手の一瞬のスキをつくために何なら無抵抗に見せかけて、素早く行動に移すのが重要だという。
たしかに映画でもライリーがボロボロのホームレスに見せかけて相手を油断させたところで、急に襲うというシーンがあったなぁ。理にかなった行動だったのか!
【効果的に弱点を狙う】
やみくもに叩いたり蹴ったりしてもダメ。敵が男性なら股間、また顏を殴るのであれば目から下のダメージを受けやすい部分を狙うこと。
そして、相手の顏をかきむしるのも有効だそう。ひっかき続ければいずれ目にヒットし、敵をひるませ逃げるチャンスを作ることができる、ということだ。
このような生き残るための護身術的ポイントは実際のトレーニングでも伝授されているそう。またクラヴマガ・ジャパンではライリー・ノースを目指せる最強プログラムもあるというので気になる人はチェックしてみよう。
取材協力:クラヴマガ・ジャパン
参考リンク:『ライリー・ノース 復讐の女神』
Report:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.
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▼トレーニンぐの締めでは映画『ライリー・ノース 復讐の女神』の戦闘シーンを再現! まずは本編の映像をどうぞ!
▼再現バージョン、どうでしょうか……?
▼『ライリー・ノース 復讐の女神』予告編、どこにでもいる優しいママが復讐神になるという衝撃の展開だ
▼緊迫感たっぷりのトレーニングでした! キツかったけど楽しかった!!
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