世界で唯一のとんかつ屋が浅草にある。創業48年の老舗「カツ吉」だ。いったい何が「世界でここだけ」なのか、店前に置かれた看板に目を向けると分かる。

とんかつメニューだけでなんと50種類もあるそうなのだ! いや多すぎィ! さらにこのお店のポイントはもう1つある。

「まいう~」でお馴染みのグルメタレント石塚英彦さん。

TBS人気番組『ぴったんこカンカン』の収録の写真。

超有名中華料理人など、カツ吉を訪れる有名人の写真があちこちに飾られている。

こりゃ入るしかない。とんかつを食うしかないでしょ!

・餃子ととんかつの見事な融合「餃子とんかつ定食」

というわけでカツ吉に入店。めちゃ愛想が良くてサービス精神旺盛な店員さんに通され、さっそく注文した。「餃子とんかつ定食」だ。もちろん注文には理由がある。

親切なことに店の外壁には、カツ吉人気ベスト5の張り紙がある。たしかに50種類もあると簡単に選べんもんなぁ。それによると「餃子とんかつ定食」が第2位にランクインだそうだ(ちなみに1位は「元祖 味噌とんかつ」)。

さらにメニューの詳細を説明する張り紙も読んだところ、どうやらこの定食は「とんかつと餃子のセット」ではなく「とんかつと餃子の融合」らしい。んなアホな。遊戯王カードでもそんな奇妙な融合はせんぞ……。これは気になる!

ということで先に出された「香の物」をパクつきながら「餃子とんかつ定食」を待つ。ワクワクが止まらない。

止まらなすぎて「香の物」をほぼ完食した頃、ついに「餃子とんかつ定食」が目の前に運ばれてきた!

箸をもって食べようとした瞬間、店員さんが奇妙なことを筆者に言う。「ソースは野菜のみで、とんかつはそのままお召し上がりください」。

……うん? とんかつなのにソースはなし? どういうことだ? 見た目は普通のとんかつなのになぁ。まあ食べてみれば分かるか。いざ実食!

・口当たりはとんかつ、飲み込むときには餃子

食べてみるとすぐに店員さんの意図が分かった。……ほう。……ほほう! めちゃ旨い! たしかにこれはソースなんていらんぞ! だって「餃子とんかつ」なんだから!

かつを口に運ぶと薄い豚肉を感じる。とても柔らかい。驚くべきは、それと同時に餃子の「あん」が挨拶してくることだ。あんの食感はグラタンに似ていると感じた。良い具合に豚肉とからまっている。なによりニンニクとニラの風味が効いていて、口の中で絶妙なマッチを生む。

そうか、これはとんかつであり、とんかつじゃないんだ。とんかつの衣は餃子の皮でもあり、豚肉は餃子のあんでもある。なるほど、これはソースをかけちゃいけない。

うーん……何口食べても驚きが続く。口当たりはとんかつだ。豚肉の甘みと油の風味が口に広がる。ところが噛めば噛むほど、野菜の甘みを感じて、ニラの風味がして、餃子の味わいへと変化していく。素晴らしい融合だ。「世界でここだけ」という看板を掲げるだけある。口に運ぶ箸の動作が遅く感じるくらい、摩訶不思議なとんかつの旨さを感じた筆者だった。

ちなみに、キャベツにソースをかけて食べてみたところ、普通のとんかつ屋のキャベツだった。美味しかった。

・浅草は良い街だなぁ

筆者がとんかつに満足してみそ汁をすすっていたとき、ちょうど午後8時を迎えた。とんかつを食べる間にも、店員さんが「毎度!」と常連さんらしきお客さんを出迎える。月曜日なのに店内はいっぱいだった。まあ常連になる理由は分かる。旨いもん。

ここでメニューの値段についてご説明したい。「餃子とんかつ定食」の値段は税抜2100円。ところがお会計は消費税を足して「2160円」となる。どういう計算なのかというと、本来消費税は8%なのだが、カツ吉ではお客の負担分を「現在も3%」にしており、1円単位を切り捨てているとのこと。

今秋にも消費税が10%になる予定なので、今後どのような計算になるか分からないが、金銭面で漢気を見せていることをぜひご理解いただきたい。いやカツ吉マジですげえわ。

とにかく満足である。とんかつと餃子の素晴らしい融合を感じた。浅草は美味しい料理屋がたくさんある良い街だなぁ。膨れたお腹をさすって、雨雲に隠れたスカイツリーを横目に、足取り軽く家路につきました。おしまい。

・今回ご紹介した飲食店の詳細データ

店名 元祖味噌とんかつ カツ吉
住所 東京都台東区浅草1-21-12
時間 11時~14時、17時~21時
休日 木曜日

Report:いのうえゆきひろ
Photo:RocketNews24.