寒い! 春の陽気からの温度差で余計に寒い!! 散る桜の花びらが風に舞うように、気ままに冷え込みが顔を出す今日この頃。こんな日はラーメンでもすすって体を温めたいものだ。
だがしかし、日本語学校『ホツマインターナショナルスクール』のパキスタン人留学生たちはラーメンを食べたことがないらしい。そこで、「100%とんこつ不使用」の一蘭をおごってみた!
・連れラーメンは友達の証
外国人留学生の部屋を訪問した以前の記事で知り合ったパキスタン人留学生たち。全員が車のエンジニア志望であり、日本にやって来て1年くらいだ。
必然、日本語もつたなく、私(中澤)と彼らの間には言葉の壁がある。だが、下宿先でチャパティを一緒に食べ、海に行ったことで、言葉は通じずとも気持ちは分かるようになった。
そんな彼らとラーメンを食べたい。ラーメンを一緒に食べるというのは友達の登竜門みたいなところがあるからだ。
いや、ひょっとしたら私の勘違いかもしれないが、そういう気持ちさえ伝わればいいのである。そこで一蘭に誘ってみた。待ち合わせした西武新宿駅の改札で待っていると……
キターーーーーーー!
久しぶり!!
正月や春休みなどを利用してパキスタンに帰っている彼ら。近頃はバイトや勉強がさらに忙しく、集まれたのは、タルハ、ウサマ、ザビの3人だけだった。
・パキスタン人留学生の変化
驚いたのは、日本語がかなり通じるようになっていること。以前はほとんど英語でないと伝わらなかったのに、「元気ですか?」から普通に日本語で近況報告をしてきた。
特に、日本語がほぼ聞き取れなかったウサマとザビが、こちらの質問を普通に聞き取り答えたことには成長を感じる。どうやら、帰国は部屋ごとにしているもよう。現在は、アハマドとヤストゥールの部屋の順番なのだとか。もう一般会話できているのでは? それはさて置き……
ラーメン食うぞ\(^O^)/
・100%とんこつ不使用の一蘭
というわけで、さっそく、新宿に新しくオープンした一蘭にやって来た我々。そう、以前の記事でもご紹介した「100%とんこつ不使用」の一蘭である。
宗教の関係で豚が食べられないパキスタン人たちでも、ここならラーメンを食べることができるだろう。初めて食べるラーメンの味はいかに? パキスタン人とラーメンの遭遇は次ページで!
取材協力:ホツマインターナショナルスクール
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
ラーメンを食べたことがないパキスタン人に「100%とんこつ不使用」の一蘭をおごってみた(その2)
──と、ラーメン屋突撃をお伝えする前に。パキスタン人はラーメンの存在をどれくらい知っているのだろうか? 基本的にハラール料理しか食べないため全く知らない可能性だってある。そこで聞いてみた結果……
ザビ「本とかで読んだことはある。日本と言えばラーメン!」
──とのこと。なるほど。イスラム圏でもそこまで有名なら、NO豚骨ラーメンが開発されるわけである。しかし、意外だったのは残り2人の回答。
タルハ&ウサマ「実はラーメン屋でバイトしてる……」
──申し訳なさそうに打ち明けられた。初めて見るんじゃなくてごめん的な。
とは言え、やはりバイト先のラーメンは宗教上の理由で食べられないようだ。よし、じゃあ今日は存分に食べようじゃないか! ようこそ日本へ!!
・パキスタン人留学生とラーメン
「100%とんこつ不使用」とは言え、ハラール料理ではない一蘭。チャーシューの代わりに「牛弥郎(ぎゅうやろ)」という牛バラ肉を煮込んだものがトッピングされているがこれもムスリム的にはNGらしい。しかし、オーダー用紙で具を抜くことで食べられるようにカスタマイズすることができる。
それぞれのオーダーを見てみると、みんな「牛弥郎」を抜いているが、それ以外の辛さなどの項目は好みという感じだ。ザビはどうやら辛いのが好きな様子。
・初めてのラーメン
運ばれて来たラーメンは白濁したスープが豚骨にしか見えない。これは鶏で代用しているとのことだが……細けえことはいいんだよ。ラーメンを前にしたらやることは1つ。そうだろ兄弟? 食うべし食うべし!
ところが!!
ツルーン。Oh……
ツルツルリーン。Oh……
箸を初めて使うパキスタン人たちは麺をウマく挟むことができない! そう言えば普段は手やスプーンで食べてるんだった。これは盲点である。気が回らなかった私の落ち度だ。そこで、一応の箸の握り方などを教えたがやはり難しい様子。
それにしても……
楽しそうに食べるなあ。
こっちまで楽しくなってしまう。ラーメンがいつもよりも美味しく感じるのは、どこかあっさりした後味のせいだけではあるまい。友ラーメンの真髄を教えられた気分だ。
そんなこんなで食べ終わったが、彼ら的にはラーメンの味はどうだったのだろうか? みんなに感想を聞いてみたところ……
タルハ「初めて食べたけど美味しかった! もう1回食べたい」
ウサマ「とても楽しかった。日本の料理は初めて食べた。いつもとても楽しい」
ザビ「とても美味しいです! でも、箸が難しかった。次までに練習してくる」
──美味しいは国も宗教も言葉の壁も越える。箸という思わぬ難敵がいたものの、今回も言葉以上にその表情が物語っていた。
来年の今頃には日本語学校を卒業となる彼ら。車の専門学校に入るための日本語レベル「N3(日常会話レベル)」のテストにはまだ合格できていないという。毎回受けているというが、運の良い人しか合格できないような難易度なのだとか。
立ち並ぶビル群、今日も人ゴミの新宿
遠ざかる背中が人の波間に消える
勉強にバイトに忙しい毎日
近頃は全員集合することも少なくなったという
逃げ出したいと思ったことはないのか?
パキスタン人留学生の答えはシンプルだった
──ない。夢があるから
取材協力:ホツマインターナショナルスクール
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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