牛丼、かつ丼、親子丼……。最近ではローストビーフ丼なんてのもすっかり定着しつつあるが、私、P.K.サンジュンは特に「天丼」に目がない。甘辛い天ダレと天ぷら、ご飯のハーモニーは抜群! カロリーを気にしなくていいならば、2日に1回は食べたいほどの大好物である。

ある日のこと──。当編集部の “パイセン” こと佐藤が声をかけてきた。佐藤いわく「てんやで野菜天丼を210円で食べる裏ワザがある」とのことだから、これは聞き捨てならない。だがウキウキしながら佐藤に同行したところ、思いもよらぬ展開になってしまったのでご報告しよう。

・てんやに行こうとしたら……

ここ数年、私は天丼を食べるなら「てんや」一択だ。ウマくて安くてどこにでもある「てんや」は単なる最高の店で、都内であればどの駅にてんやがあるかは大体インプットされている。

この日も近所のてんやでランチをしようと思っていた時だった。


「てんや行ってきます~」

「サンジュン、てんやか。いいな。俺も行こうかな。ちなみに何食べるんだ?」

「いや、特に決めてないですけど……」

「これだから素人は……! 秋は野菜天丼一択に決まってるだろ!! 実りの秋に感謝しつつ野菜1つ1つを味わうのが粋でいなせな男だろうが!」

「はぁ。でも野菜天丼もいいですね。今日は野菜天丼にしようかな」

「俺みたいな超1流ライターになりたければそうすべきだ。よし、俺も一緒に行こうじゃないか。なんなら今日はおごってやる! なにせ俺は “てんやの野菜天丼を210円で食べる裏ワザ” を知っているからな」

「……! 210円ですか!? たしか野菜天丼って並でも550円しますよ? え、その裏ワザ知りたいです!」

「よかろう、てんやを愛してんやに愛された男、佐藤英典の後に続くがいい。Googleより物知りな男と一緒に働けてお前は本当にしあわせ者だな」


・裏ワザとは……?

そんなこんなで到着したてんや。移動中、てんやの公式サイトなどもチェックしてみたが、どこにも「野菜天丼が210円」だなんて書いていない。佐藤は特別なクーポンでも持っているのだろうか? それとも単なるハッタリなのか? まあ、私としては野菜天丼が食べられれば文句はない。


「パイセン、すみません。ちょっとトイレ行ってきますね。野菜天丼注文しておいてもらっていいですか?

「ああ、よかろう。例の裏ワザも後で教えてやるよ」


──(サンジュン、トイレタイム)


「あー、すっきりした。ところでパイセン。メニューを見てもやっぱり野菜天丼は550円ですよ? 210円って半額以下じゃないですか。何か特別なクーポンでも持ってるんですか?」

「焦るな焦るな。まあ、料理が来ればわかるってことよ。……お、来たな」


「お、ウマそう。マジで普通の野菜天丼だ。じゃあお先にいただき……」

「待てバカ者! お前の野菜天丼はこっちだ


そう言いつつ佐藤が差し出してきた丼には……。


丼には……!


オクラ天しかのっていなかった


「え? パイセン? 野菜天丼注文してくれたんですよね?」

「ああ、野菜天丼だ。お前はオクラが肉か魚だと思うか? オクラはなんだ?」

「や、野菜ですけど……」

「Yes、オフコース! そう、つまりお前の目の間にあるのは大きな意味で何丼だ? 何天丼なんだ? Say!」

「くっ……! 野菜……天丼です

「ザッツライ! てんやでは150円の白米にお好みで天ぷらをトッピングできるんだ。オクラ天は60円だから合計210円!! どうだ、俺はウソをついているか? てんやの野菜天丼は210円で食べられるんだ!」

「でも普通のがいいです! オクラだけじゃ物足りないですよ!!」

「黙れ、このド3流ライターが! お前が普通の野菜天丼を食べるなんて10年早い!! そもそもお前はそのオクラと会話ができるのか? オクラと通じ合ったのか? そのオクラはどこで育ってどんな道を経てオクラ天になったのか想像してみろ!」

「ちょっと意味わからないです。というか僕も野菜天丼……」

まだ言うか、このドケチ野郎! 俺のように天ぷら1つ1つとしっかり会話できるようになったら野菜天丼を食べていい。だがオクラ1つとも会話ができないお前に野菜天丼を食べる資格はない!! だからお前はいつまで経ってもチンケな4流ライターなんだよ! 俺の背中から何を学んできたんだ!!」

──「学ぶことなんて1つもないじゃないですか」とは流石に言えなかったが、仕方がないので今回は佐藤式の野菜天丼をいただくことにした。ボリュームは無いものの、悔しいことにオクラ天だけでもウマい……。ただこれは佐藤とは一切関係がなく、ただ「てんやがスゴイ」というだけである。

帰り際、佐藤が「よかったらコレ使えよ。いいんだいいんだ、俺みたいなビッグな男には必要ないから。やめろよ? SNSにアップして俺の評判上げるのは」とクーポン券をくれたことはさておき、果たして今回ご紹介した “佐藤式野菜天丼” を裏ワザが言ってしまっていいのだろうか?

ただ1つだけ言えることは、決して “表のワザ” ではないということ。反則ギリギリではあるものの、表のワザではないということは裏ワザ……なのかもしれない。

参考リンク:天丼てんや
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼たしかに210円だ。

▼食後、余韻を楽しむパイセン。「レンコンとお別れしてきた」そうだ。

▼悔しいからもう1度。確かに野菜天丼だけども……!

▼今回はしてやられた……無念。