誤解がないよう、最初にはっきりさせておきたい。これから紹介するのは、「風俗の話」ではない。ネット掲示板の書き込みが勝手に書き換えられたという由々しき事態の一部始終であり、当事者による怒りの告発である。つまるところ、むっさ真面目な話ということだ。
語ってくれたのは、「今から4〜5年前にハプニングバーに行った」と言う仮名・先端 常濡(さきばし じょうろう)氏。彼の身に、何が起きたのかというと……
結論から言ってしまいたい。めちゃめちゃ楽しんでいる風に、書き込みが改ざんされたそうだ。元々は、「ありがとうございました」的なビジネスライクな内容だったにもかかわらず、「超楽しかった〜みんなありがとう\(^o^)/ 女の子もすごい可愛かった(*´ω`*)」という感じに、書き換えられたのだとか。
じゃあ、一体どういう経緯でそうなったのか? それは……ちょい長くなる。ハプニングバーの店に入るまでとか、そのときの状況について説明しておかないと、イマイチ意味が分からないからだ。
となると、「時間ないよ!」という人、当然いることだろう。そんな人のために、先端氏が一番伝えたいというメッセージを手っ取り早く公開してしまおう。
先端氏:「店にもよりますが、ハプニングバーのホームページの書き込みは、店のスタッフによってモリモリに書き換えられることもありまっせ。だから、何でもかんでも鵜呑みにしてると、思わぬ損をするかもしれませんで! 気をつけて!!」
とのことである。先端氏によれば「一番大事」とのことなので、ハプニングバーに行こうと思っている人は、頭の隅に置いておいた方がいいかもしれない。
また、事件の流れを以下に矢印で書き出している。時間がない人は、それをパパっと目で追ってもらえれば十分だ。
・ハプニングバー体験の流れ
ネットで最強のハプニングが起きそうな店をチョイスする
↓
決めた店の掲示板に「初めて行きますので、よろしくお願いします」と書き込む
↓
指定の時間に待ち合わせの場所へ行く
↓
そこからお店へ電話。スタッフの案内でお店の中へ
↓
しばらくすると女性が来る
↓
想定していなかったハプニングに引いてしまう
↓
店を出る
↓
店を出た後、スタッフのお願いに応えるべく「みなさん今日はありがとうございました」と掲示板に投稿
↓
それが改ざんされる
——簡単に言うと、こんな感じだ。
・好奇心あふれるヤツはこっちだ
お待たせした。時間が有り余っている人よ! 言い方を変えれば、「自分が同じ被害に遭いたくないから詳しく聞かせてくれ」という人よ! さらに言い方を変えれば、「そういうお店に関する情報を教養として身につけておきたい」という紳士よ!
好奇心あふれる そんなあなたのために、事件の一部始終をインタビュー形式で掲載している。なお、このページを含めて全部で3ページあるから覚悟してくれ。それでは、さっそく教えてもらおう。先端さ〜ん!
・そもそもハプニングバーとは?
私:「そもそもなんですが、ハプニングバーって何なのですか?」
先端氏:「ひと言でいうと、人生が凝縮された空間です」
私:「抽象的すぎて、さっぱり意味がわかりません」
先端氏:「じゃあ具体的に言いましょう。その名の通り、ハプニングが起きるバーです。基本的には、見ず知らずのお客さん同士がワイワイガヤガヤやるところです。社交性と、ハプニングに対応できる適応力が試される場所と言えるでしょう」
私:「では、ハプニングって、実際は何が起きるんですか?」
先端氏:「いい質問ですね。実は、4年くらい前の僕も、それが気になって夜も眠れなかったんですよ。ハ・プ・ニ・ン・グって! 漠然としすぎやろ! と」
私:「ですよね」
先端:「だからね、同じように気になっている友達と2人で、その実態を確かめるために店へ行ってみたんですよ。具体的なエリアを言うとバレるからやめておきますが、東京とだけ言っておきましょう」
私:「それで?」
先端:「まず、どうやって店を選ぶのかっていったら、今のご時世、やっぱりネットになりますよね」
私:「まあ、そうなりますよね」
先端:「でもハプニングバーって、ネットで得られる情報が限られてるんですよ。誰が来るかわからんから、人の写真とかも載せようがないですからね」
私:「確かに」
先端:「だから、お客さんの口コミとか、店の掲示板の書き込みとかを見まくって、いくつか候補をピックアップしたんですよ。そして、そこからさらに! いいなと思った店をいくつも切り捨て、尋常ではない超ビッグハプニングが起こりそうな店を1つだけ選んだんです」
私:「厳選に厳選を重ねたわけですね」
先端:「はい。そして選んだその店では、注意事項として “お店に来る人は事前に掲示板で連絡を” みたいなことが書かれていたんです。なので、『◯日の◯時ごろにお店に行きます。当方、男性で初めての利用になります。よろしくお願いします』って、書き込んだんですよ」
私:「いきなり店の掲示板に書き込んで連絡するのは、ちょっとハードル高いかもですね」
先端:「それだけで緊張しましたよ。汗でベタベタになった指で、キーボードを叩いたのを覚えています。しかも、掲示板に “当方男性2人” って書き込んだら、店とか他のお客さんから嫌がられるかも? と余計なことを考えて、友達とは別々に連絡するというね」
私:「いいですね〜初めて感がにじみ出ています」
先端:「そしたら速っっ攻で、店から『お待ちしておりますので、指定の場所まで来たらお電話ください』って連絡が来ましてね。すぐにシャワーを浴びました」
私:「(笑)」
先端:「ビーチフラッグの選手並のスピートでシャワーヘッドを掴んで、普段はあまりしないマウスウォッシュとかもして、穴が開いてない靴下に履き替えて、めちゃめちゃ時間に余裕をもって家を出たんですよ」
私:「心の高揚が伝わってくるようです」
先端:「ほんで、指定された場所に着いたのが、確か約束時間の40分くらい前だったかな」
私:「相手が迷惑するくらいに早いですね(笑)。ちなみに、指定の場所はどんな感じだったんですか?」
先端:「何と言ったらいいんでしょう……普通なんです。人がめちゃくちゃ多い、普通の通りなんですよ。だから、そのあたりをウロウロしてても、しばらく佇んでても、全然目立たないんですよね」
私:「店側もよく考えてますね〜」
先端:「ほんで、そのあたりで時間を潰し、約束のちょうど10分前に店が指定した番号に電話したんですよ」
私:「そのときはもう、手がベッッタベッッタでしょう?」
先端:「カエルの皮膚みたいになってましたね(笑)」
──その後、先端さんは指定の電話番号に連絡して、お店に突撃する。そして……続きは次のページへ!
Report:和才雄一郎
イラスト:RocketNews24.
ハプニングバーで味わった「想定外の連続ハプニング」を体験者が告発 / 掲示板の書き込みを “改ざん” されるハプニングまで(その2)
・お店の中へ
先端:「電話に出たのは、すごく落ち着いた口調の男性でした。声から推測するに、年齢は30代くらいかな? その人に、『あの角を曲がって〜◯◯の看板が出てる■■のビルに入って〜』って感じで店の場所を教えてもらったんですよ」
私:「その案内方法だけで “秘密の社交界感” ありますわ」
先端:「そうやって何とか店の前までたどり着いたんですけど、指定されたビルのフロアにある店はどこも閉まってる上に、看板も何も無いんですよ。だから、ここで合ってるのかな? と思いながら、1つの店のチャイムを恐る恐る押したら……」
私:「押したら……?」
先端:「さっきまで僕と電話してた声の持ち主が、『お待ちしておりました』と」
私:「おめでとうございます!」
先端:「ありがとうございます。まあ、そうやって何とか店の中に入ったんですけど、期待よりも “誰とも話が出来ずに浮きまくったらどうしよう?” っていう不安の方が圧倒的に大きかったですね。
先に話した友達が30分後に来ることになってたので、心の中で “早く来い!” って思いつつ、店の人からシステムの説明を聞くという」
私:「ちなみに、どういうシステムなんですか?」
先端:「店によって違うようなので一概には言えないですけど、基本的に男は高く、女性は安いです。そしてカップルで行っても安くなります。料金は2種類あって、初めての人だけが払う入会金と、誰でも払う入場料がありまして、とにかくどっちも女性は安いです」
私:「そういう金額設定にしないと、お店が成り立たない事情があるんでしょうね」
先端:「男性が1人で行くなら、全部合わせて1万以上は覚悟しておいた方がいいですかねぇ。常連さんの場合は別でしょうけど。ちなみに、僕は入会金と入場料で2万弱くらい払いました」
私:「その2万弱は、ある意味で自分の未来への投資ですね」
先端:「そう言えるでしょうね。あ、あと重要なのは、身分証明書のコピーをとられるので、偽名等で店に潜り込むのが難しいシステムになっていること。それから “女性をしつこく口説かない” とか “相手が嫌がる行為をしない” といったことを、何度も念押しされたことくらいですね。このあたりは店によって違うと思いますが」
私:「割と基本的なことを念押ししてくるんですね」
先端:「それだけ、基本的なことを守れない暴走野郎がちょいちょい店に来るってことじゃないですか? とにかく、説明が終わりまして、いよいよお客さんが集まっている部屋へ案内しましょうという段取りになりまして……」
私:「来ましたね」
先端:「ようやくですわ。この瞬間だけは、不安よりも期待の方が圧倒的に大きくなってました。お店のスタッフに案内されながら、修学旅行に向かうバスの中の気分を思い出してましたもん」
私:「そこまでワクワクすること、日常生活でなかなか無いでしょ(笑)」
先端:「まあ、そんな状態で、お客さんの集う部屋の前に着きまして、スタッフがカーテンをパッと開けたんですよ。そしたら……! いきなりハプニングですわ」
私:「え? まさか?」
先端:「オッサンしかおらんやないかーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
私:「一番、最悪なハプニングや(笑)」
先端:「あれ、野球部の部室? みたいな。いや、年齢層の高さを考えたら、野球部の部室よりヤバイですね。発酵系の男臭に加齢臭がブレンドされた感じで」
私:「うわ……」
先端:「でも、そこにいたオッサンの方々は、みなさんフレンドリーに接してくれましたよ。そういう暗黙のルールがあるからでしょうけど」
私:「もしくは、嫌な言い方ですけど、フレンドリーに接しておけば、後々 自分にメリットがあるからっていう理由もあるんでしょうけどね。ちなみに、室内ってどんな感じなんですか?」
先端:「あまり詳しく言うとバレちゃうので、すごくざっくり言いますよ。バーカウンターがあって、テーブルがあって、ソファーがあって……」
私:「いたって普通のバーじゃないですか」
先端:「ただ、奥の方に各種コスプレ衣装が幅広いサイズ展開で用意されているほか、大掛かりな拘束器具の設置されている小部屋、あとムチ的な小道具も置いてありました」
私:「そんな部屋にオッサンだけでいるという(笑)」
先端:「何の罰ゲームやねん! って思いましたよ。しかも、僕の友達が律儀に30分後にやって来て、また1人オッサンが増えまして」
私:「オッサン臭の激化が進んだんですね」
先端:「その空間にですよ! なんと……!! しばらくしたら1人の女性がやって来たんですよ」
私:「来たーーーーーーーーーー!」
──どんな女性なのか? 続きは最後のページ(3ページ目)へどうぞ! もう少しで終わりだから頑張って!
Report:和才雄一郎
イラスト:RocketNews24.
ハプニングバーで味わった「想定外の連続ハプニング」を体験者が告発 / 掲示板の書き込みを “改ざん” されるハプニングまで(その3)
先端:「その女性が、どんな人だったのかというと……。一言でいえば、存在そのものがハプニングな女性だったんです」
私:「どういうことですか?」
先端:「あくまでも私の主観なのですが、好みのタイプではなかったということです。ストライクゾーンに例えるならば、高めにすっぽ抜けたボールどころか、背中を通る軌道でボールが飛んで来たわけです」
私:「メジャーだったら一発で乱闘ものですね」
先端:「なお、見た目から推測するに、女性の体重は0.1トン近くあったかと思います」
私:「なるほど……」
先端:「ただ、店にいたオッサン連中は、その女性に群がりまくっているわけですよ。エサを奪い合う池の鯉かっていうくらい。女性を仮にAさんとするならば、『Aさん、このドリンク飲む?』『Aさん、今日の服かわいい〜』って感じで」
私:「いわゆる、工業高校の姫状態ってやつですか」
先端:「それ以上ですね。しかもですよ! Aさんはコスプレが好きらしく、店に用意されている衣装を色々と着たがるんですわ」
私:「体重が0.1トン近くあるのに、衣装のサイズ的には大丈夫だったんですか?」
先端:「一番デカいサイズの服でギリというか。お菓子詰め放題で、限界まで詰めた袋みたいになってましたね」
私:「ハプニングですね(笑)」
先端:「まあでも、それはいいんですよ。周囲のオッサンの反応の方が、僕にとっては想定外のハプニングでしたね」
私:「どんな感じだったんですか?」
先端:「それはもう、大絶賛ですよ。Aさんがコスプレ衣装に着替えて、みんなの前に姿を現した瞬間! “お〜” っていう意味不明などよめきが……。
例えば、ナースの格好をしたら、オッサンどもが『Aちゃんかわいい〜』って誉めまくり、セーラー服を着たら『Aちゃん似合ってる〜』って声が飛び交いまくっているんです」
私:「想像すると、ちょっと怖いかも」
先端:「その雰囲気に、初心者の私は完全に引いてしまったんです。だから、もう帰ろうと思って」
私:「引いてしまったら、楽しむのは難しいですもんね」
先端:「頃合いを見計らって、『終電があるので失礼します〜』と告げたら、店のスタッフからこう言われたんです。『一緒にいたお客さんのために “今日はありがとうございました” とお店の掲示板に書き込んでくれたらありがたいです。ひと言でもいいので』」
私:「店を出た後も面倒くさいですね(笑)」
先端:「僕も正直 “面倒くさっ” と思ったんですけど、未知の世界を教えてくれたのは事実ですし、後で何か言われるのもイヤだったから、ひと言だけ掲示板に投稿したんですよ」
私:「何て投稿したんですか?」
先端:「そのまま『今日はありがとうございました』って。柔道の試合の後に、対戦者に礼をする感覚とでも言うんですかね」
私:「完全に腰を引いたまま組み合ってたのに(笑)」
先端:「その後、しばらくしたら友人も店を抜け出して来たので、合流してから一緒に飲みに行きまして。その飲み屋で、ふと “僕の投稿は反映されてるかな?” と気になったんですよ。それで、店の掲示板を見たら……!」
私:「見たら?」
先端:「こんな感じになってました。
公開された投稿 → 『今日は楽しい時間をありがとうございました! みなさん、話やすくて本当に楽しかったです。そしてAさん、すごくかわいい♪ 何を着ても似合ってましたよ。また、お店に行ったときは、そのキュートな姿を見せてくださいね。ではまた〜!』」
私:「……盛りまくるにも程がありますね」
先端:「一瞬、他人の投稿かな? と思いました。でも、そこに表示されている投稿者ID的なものは、何度見ても間違いなく僕のものだったんです」
私:「つまり、そのようにして、書き込みが『改ざん』されたと」
先端:「はい。確かに、あの場にいた人は、改ざんされた僕の投稿を見ても全く悪い気はしないでしょう。でもですよ! 初めてハプニングバーに行く人は、お店の掲示板をめっちゃ参考にするんです。
そういうビギナーにとっては、大迷惑以外の何物でもないじゃないですか! 店のスタッフ、何してくれとんねん! って感じですよ」
私:「なるほど。でも、それもハプニングの1つなんじゃないですか?」
先端:「え?」
私:「もしかしたら、ハプニングバーのハプニングは、お店の掲示板を見たときから始まるっていうシステムだったとか?」
先端:「そっか。そう考えれば、粋なシステムですね……って思うわけないやろが! こっちはその掲示板見て店選んだんや! 2万返せや! 2万!!」
<完>
Report:和才雄一郎
イラスト:RocketNews24.
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