以前の記事で、日本で間違った発音で呼ばれてしまっている有名メタルバンドを紹介した。例えば「Napalm Death」は英語での発音は「ネイパーム・デス」だが、日本では「ナパーム・デス」と呼ばれてしまっている。
実はこのNapalm Death、一部からはさらに「ナパデ」と略して呼ばれることも多い。こうなるとバンドメンバー本人や外国人に認知してもらう事を最初から放棄している。今回はそんな有名バンドの略称を紹介しよう。
・欧米でもメタルバンド名の略称は一般的
何でも略したがるのは特に日本人特有の現象ではなく、欧米でもそれは同じだ。例えばプログレッシヴメタルの「Between the Buried and Me」は自ら「BTBAM」と表記しているし、イギリスの「Bring Me the Horizon」は「BMTH」だ。
特にジャンルの名称は長くなる事が多いので、例えば「Depressive Black Metal(デプレッシブブラックメタル)」は「DSBM」、「Texas Death Metal」は「TXDM」、「National Socialist Black Metal(国家社会主義ブラックメタル)」は「NSBM」である。
略さずに正確な表記で綴るとなると、文字数が多くてTwitterやスマートフォンで投稿しづらかったり、スペルミスが頻出するので仕方がない。
・日本特有の略称も仕方がないが……
日本でも「メロディアス・デスメタル」を「メロデス」、「ブルータル・デスメタル」を「ブルデス」と略して呼ぶが、これは間違っているというよりは、自然発生的な現象で、ある程度は仕方がない。
しかしこうした「メタル略語」は、前述の「ナパデ」など、あまりにもオリジナル名からかけ離れた略称が日本だけで広まっているバンドも多く、時折失笑してしまう事も事実。違和感がありすぎて、自ら声にするのは憚られるものもよく耳にする。今回はそうした日本だけで略されている有名メタルバンドを紹介しよう
1. カニコー
まるで「蟹工船」を彷彿とさせる略称だが「Cannibal Corpse」。デスメタルで最も有名なバンドといっても過言ではないだけに、非常にマヌケなニュアンスを醸し出している。
2. モビエン
「もう鼻炎」のように見えてしまうが、「Morbid Angel」の略称。このバンドも「Cannibal Corpse」と並ぶデスメタルの帝王のひとつなだけに、思わず失笑してしまうダサさ。
3. エンコー
カンザスのカリスマ的ブラッケンド・デスメタル「Angelcorpse」。前述バンドと同じく「Corpse」はデスメタルバンドでは頻出する単語だが「コー」と省略されてしまう事が多々ある。その結果、「援助交際」みたいになってしまった。スキンヘッドで強面なだけにミスマッチだ。
4. フレゴ
シンフォニック・ブルータルデスメタルという新領域を開拓したイタリアの「Fleshgod Apocalypse」。確かに音節が長すぎて言いにくく、こう略されてしまうのは自然な成り行きか。
5. ドリムシ
言わずと知れたプログレッシブ・メタルの大御所「Dream Theater」。そこまで長く感じるわけではないが、確かに音節は多め。その結果、「ミドリムシ」っぽいイメージに。
6. チルボド
中国語では「博多之子」と表記される事を指摘したら、かなり話題になったが、日本での呼び名も負けていないフィンランドのメロデス「Children of Bodom」。このバンドも3単語で音節が多く、略されるのは仕方がない。
7. コルピ
フィンランドと言えばウラル語族に属する為、ゲルマンやラテン語とはかなり異なる響きのメタルバンドが多く存在するが、このバンドは「森メタル」で知られる「Korpiklaani」。フィンランドで「森の妖精」という意味だ。「コルピ」という短い略の方が、元々の音楽のかわいらしさと相まって、マッチしているかもしれない。
8. ブラダリ
「ブラタモリ」でタモリが疲れ果てて「だりー」と言ってしまっている情景が脳裏に浮かぶが、「Black Dahlia Murder」の略。有名な殺人事件から由来するのだが、英語でも長いため、海外では「TBDM」と略されている。
9. モルプリ
これは略されても仕方がない。もしかしたら『もしドラ』と同様に日本で略されることを前提に、ワザと長く難しく命名されたのではないか。元々は「Mors Principium Est」でラテン語で「Death is just the beginning」の意味だ。同じタイミングで来日した「Omnium Gatherum」も「オムギャザ」と略されていた。
10. ダートラ
メロディアスデスメタルの元祖のひとつ「Dark Tranquility」の略。確かに全ての音節を発音するのは面倒くさい。なんとなくダーツや黒っぽいデコトラをイメージしてしまう。
他にも「DragonForce → ドラフォ」、「Arch Enemy → アチエネ」、「Amon Amarth → アモアマ」、「In Flames → インフレ」と略されたりしており、またごく一部の人しか言っていない略語も多く、全てを洗い出すのは困難。
しかし略されるという事は話題になるというだけあって、比較的知名度が高く、人気のあるバンドが多いと言えよう。特に日本ではメロディアスデスメタルやシンフォニック、パワーメタルの人気が高いので、そういったバンドの日本語略が多く散見される。
一方でブルータルデスメタルは日本での愛好者数がそれほど多くはない為、あまり略される事は少ないようだ。しかしブルータルデスメタルの方が、バンド名に医学用語を使ったりしていて異常に長く、発音しにくいどころか正式名称が覚えられていないことが多い。
したがって最後に筆者の周りの間では話題になるが、言いにくいバンドを以下のように略す事を提唱する事で本稿を締めくくりたい。
「Maggot Colony」 → 「マゴコロ」
「Intracranial Butchery」 → 「インブ」
「Intracranial Parasite」 → 「インパラ」
「Gore Infamous」 → 「ゴーイン」
「 Xenomorphic Contamination」 → 「ゼノコン」
執筆:ハマザキカク
イラスト:Rocketnews24
▼日本では「エンコー」と呼ばれてしまっているAngelcorpse
https://www.youtube.com/watch?v=Z2VzQn41b44
▼日本では「森メタル」として大人気のKorpiklaani
▼来年1月に来日公演予定の台湾のMaggot Colony。「マゴコロ」という略称を提唱したいが、漢字表記は「蠅蛆殖民地」