本日10月28日は「群馬県民の日」。ネット上では秘境と言われる群馬県なのだが、実は群馬県民でも知らない人がいる、“秘境” がある。私(佐藤)は最近、その秘境の中の秘境に足を踏み入れた。
その場所、藪塚(やぶづか)石切り場跡は巨石の廃墟と言ってもいい場所。まるで、森のなかにたたずむ神殿のようにさえ見える。その光景には圧倒されるものがある。
・知る人ぞ知る名所
石切り場跡は、群馬県太田市の藪塚温泉にある。この地域は、「ジャパンスネークセンター」や「三日月村」などの観光スポットが有名で、石切り場跡はどちらかといえば、マイナーな観光名所らしい。正確な位置がわからなかった私は、とりあえず日帰り入浴(1200円)できる、“ホテルふせじま” で風呂に入り、ホテルのフロントの人に詳しい場所を尋ねた。
すると、「ホテルの裏手の方角にある」とのことだったので、裏にある温泉神社の先の方に車を止めて、それに続く道を歩いて行くことにした。
・ケモノ道に入ってしまった
秘境の中の秘境、たどり着く道はきっと穏やかではないはず。そう思って、未舗装の道を歩き始めたのだが、さすがに道が悪すぎる。人の歩く道というよりも、ケモノ道のようなところに入ってしまった。この道で合ってるの?
いや、コレはもうおかしいよね!? 道ではないよね? だって、木が倒れてて人が歩くような感じではないでしょ! もしかして、遭難するの、俺!? と不安になり、来た道を引き返した。ホテルの人は、すぐ着くって言ってたのに……。
・北山古墳のすぐそば
改めて、フロントでもらった地図を見てみると、地図上にない場所に向かって進んでいたことが判明。こりゃ着かんわ。
ホテルまで引き返して、北山古墳の方角(北)に向かって進むと、その先に案内板を発見した。あった! ここのことだったのか。危うく何でもない場所で遭難するところだった……。
先ほどのナゾの山道よりもはるかに整備された道が続いている。安心できるが、雨降りだと足元がぬかるんでいるので、注意が必要だ。しばらく行くと、「石切り場跡まであと100メートル」と記された案内板を見つけた。いや~、ホッとした。それにしても、誰か帽子を忘れていったのか?
・場内に入るのに注意
さらに先に行くと、土地の地権者による注意書き。「私有地につき場内での一切の責任を負いません」とのこと。この注意を肝に銘じて、石切り場跡の見学に臨もう。
さらに進むと、森の向こうに何か見える!
自分がまるで冒険者になったようなワクワクを感じるぞ! あの奥には一体何があるのか? もしかして巨大な神殿? そんな妄想さえかき立てられる。
たどり着いた。ここが石切り場跡なのか。キレイに切り取られた石の壁が、まるで門のように私を出迎えている。頭のなかではオーケストラのダイナミックな音楽が流れ、映画やゲームの主人公になった気分である。この先にラスボスが待っているのではないか?
・静かにたたずむ巨石廃墟
ここでは、終戦直後まで「藪塚石」と呼ばれる石材を、切り出していたそうだ。
石工たちが手斧のみで石を切り出していたという。周囲を覆う巨石には、無数の筋が刻まれている。その一つひとつが石工たちの手によるものなのだ。途方もない時間と手間をかけて、この場所を形成しているに違いない。
今では森のなかにひっそりとたたずむ巨石廃墟。その当時は、石工たちの手斧を打つ音でが、山々にこだましていたのだろう。
どことなく幻想に満ちた空間、藪塚石切り場跡。ファンタジックなこの場所は、群馬の知られざる名所のひとつである。
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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