実は私、遠い昔にリンゴマークでおなじみの某外資系コンピューター企業で、電話サポートという名のクレーム処理をしていたことがある。私が担当するのは100%クレーム電話で、冷静に相手の怒りを鎮めつつ、良い方向に誘導することが役目だった。それゆえ、電話口で怒りを沈める様々なテクニックは熟知している。
そんな辛い経験から十数年後、今度は私がクレームする立場になってしまった。相手はリンゴマークでおなじみのアップルなのだが、私はあらためて感じた。アップルのサポートはマジで神! なにせ、たったの一言で私の怒りが消え失せたのだから。
・5000円以上する商品が30秒でこわれた
ことの発端は、アップルの『Lightning−HDMIコネクタ(ZM826-0427-A)』という商品を買ってみたところ、使用してから約30秒後に壊れたことから始まる。本当に出会って30秒で故障。iPhoneとモニタをつなぐためのコネクタで、5000円以上もする品だ。
実は最初から嫌な予感はしていた。Amazonの商品ページに「何度か使用したら壊れた!」というユーザーレビューが多数書き込まれていたからである。
一応、「ちゃんと使えていますよ」という人もいるので、運が悪い人もいるなァ〜と油断していたのだが、現実は違った。何度か使用したら壊れた……どころか、私の場合は、なんとたったの30秒!! おそらく世界最速記録更新!! もう怒ったアルヨ!!
・ライブチャットサポート
この悲しさと怒りと無念を、直接アップルに伝えたい。でも、職場でクレーム電話を入れるのは気が引ける。ヤーさんみたいな口調になった私の会話なんて、同僚たちに聞かれたくない。さて、どうしたものか……と思いながらアップルのサイトを眺めていると、気になるサービスを発見した。それこそが「ライブチャットサポート」だ。
つまるところ、電話の代わりにチャットでサポートしてくれるらしい。ええやんええやん、便利やん! 商品のシリアルナンバーなどを入力し、いざ待機!
まずは、“いかにもアップル!” といった青シャツ男女の写真と共に、AppleCareチャットサポートの説明ならびに注意書きが表示される。どうでもいいけど、この黒人男性、ものすごく「ボブ感」がある。このボブがチャットの相手をしてくれるのだろうか?
きっとモニタの向こうには、サンフランシスコあたりに住むボブがいる。ボブ、超イイ奴っぽいな……。ボブ、本当にアップル製品が好きそうだな……なんて妄想をしながら待機していると、突如、「チン(仮名)」と名乗る人物が話しかけてきた。
あ、あれ……? ボブじゃない。サンフランシスコのボブではない。勝手にボブと命名しているのは私だが、名前からして中華な雰囲気が漂っているアル。しかしながら言葉は日本語。とても丁寧な日本語だ。
ともあれ私はチンさんに、「30秒で壊れたショック」をAmazonのリンク付きで事細かに説明した。すると……
チン「私も同じ症状であれば、ショックに感じると思いますし、お気持ち良くわかります。私どもAppleで最後まで責任をもって対応いたします。ご安心ください!」
──と、最後は「!」つきで心強く「俺にまかせろ宣言」をしてくれたチンさん。だが、チンさんには本当に申し訳ないのだが、私の「30秒で壊れたショック」の怒りは、今まさに燃え始めたばかり。コトの重大さをチンさんに理解してもらわねばならぬ。
ちなみに、私の知人も同じ商品を購入し、数回の使用で壊れたとのことで、それもインスタやFacebookのURL付きでチンさんに教えてあげた。チンさんが悪いわけではないのだが、この商品のトラブル発生率は、どうひいき目に見ても今すぐ回収すべきレベル。ということで、あえて聞きたい。なぜ、このような症状が頻発している……
──と、冷静にタイピングしている真っ最中、突如として予想外のトラブルが発生し、チンさんとの会話は電光石火で終了と相成った。それがまた、私の怒りの導火線に火をつけた。一体何が起きたのか。話の続きは次ページ(その2)へGOだ!
参考リンク:Appleサポート
Report:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
「なぜ、このような症状が頻発している……」とタイピングしている真っ最中、いきなり文字の入力ができなくなった。一体、何が起きたんだ? そして次の瞬間……
「一時的なシステム障害のため、チャットが終了しました。対応可能な別のアドバイザーに接続するまで、しばらくお待ちください」
と表示されてしまったではないか! まだ言いたいことを書き終えていないのに!! 話の真っ最中に「時間が来たから」と席を立つキャバクラ嬢か!! てゆうか、図らずして、チンさんよりも私のメッセージのほうが中華風! アイヤーッ!!
いずれにしても、システム障害とはいえ、なんか悲しい。戻ってこいチンさん! カムバックチンさん!! 我、要求、チン!! ……と心の中で念じ続けていたら、わりとすぐに新たなアドバイザーが登場。
次なる刺客は、またも中華風の名を持つ「チョーさん(仮)」だ。
チンさんだろうがチョーさんだろうが、私の怒れる心に変わりはない。いいや、むしろ勝手にチェンジされたことが、私の怒りに火を注いだ。「前回の記録を確認しますので、2〜3分待っていただけますか?」との問いかけにも、つっけんどんな返事をしてしまうのも無理はなかろう。会話の温度は摂氏0度。冷えきっている。
とりあえずタバコを吸って待機した。そして……
チョーさんは、「ショックをかけて誠に申し訳ございませんでした!」と陳謝してきたのだが、イライラしていた私は、「大ショックです」と追い打ちをかけたうえ、「せめて4〜5回は耐えて欲しかった」とのイヤミを加えてしまうほどの激おこプンプン状態。彼の返答次第では開戦もありうる。さあ、どう出る!? しかし、次の瞬間……!!
!?
!
!!
──ワツィ。まさかのワツィ! 一体何なんだ、ワツィ!! しかも、すぐに「失礼いたしました。」と誤字を修正したのち、「まずご安心下さい」と高度な日本語で畳み掛ける。この時点で すでに萌え!! さらに、私のワツィカウンターに対しても……
「ありがとうございます。」「失礼いたしました。」とカワイイ返事。許した。もう、許した。てゆうか、萌え。かなり萌え! チョーさん萌え!! さっきまでの怒りなんて吹っ飛んだ!! カタコト誤字で意表をついて、その後にキチンとした対応をし、一気に笑いと信用を勝ち取るとは……なんという業師(わざし)!! テクニシャンだ!!
それ以降のチョーさんの対応は、まさしくプロ。Amazonで購入したのに、修理と言いつつ新品を迅速に送ってくれると申し出てくれたうえ、元箱も不要ときた。なんという誠実なサポート。これがアップルの神対応か……と感心しきりの私であった。それと同時に、チョーさんの国籍が気になり始めたので、単刀直入に聞いてみると……
チョーさんは黒人のボブ(仮)ではなく、5年間も日本語を勉強した中国人だった。私はチョーさんに感謝の気持ちを伝えたく、「謝謝! 再見!!」と中国語で返事した。すると、チョーさんは、なんとも嬉しい返事をしてくれたのである。
ちなみに交換用の商品は2日もしないで届けられた。また、届いた商品をドキドキしながら作動させると、何の問題もなくバッチリ動いた。今でも壊れずに動いている。
たとえ商品に問題が起きたとしても、逆にユーザーを満足させたチョーさんの神対応。こんな人材を育ててしまうアップルのサポートはマジで神であると、あらためて感じざるを得ない。なにせたったの一言で、ワツィの怒りが消え失せたのだから。
参考リンク:Appleサポート
Report:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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