世の中には危険がいっぱい。まさに一寸先は闇だ。ということで今回は、海外サイト Reddit に寄せられた「私はクマに襲われ、戦い、死にかけながら、7キロを車で逃げました。質問に答えます」という投稿で行われた質疑応答50選をご紹介したい。
女性の名はアレーナ・ハンセンさん。2008年、山奥で働いていたところ1頭のアメリカクロクマに襲われ、顔半分が引きちぎられる大怪我をおった。しかし一緒にいた2頭の犬に助けられ、命からがら逃げ出し、消防署に助けを求めたそうだ。質疑応答が行われた2013年には、容態はかなり回復していたようである。
Q1:どうやってクマと遭遇したんですか?
A1:柳の雑木林で、クマが私を待ち伏せしていたの。私がクマに気がついて、動きを止めた瞬間に、クマはスゴい速さで襲いかかってきたわ。一瞬目が合って、次の瞬間には押し倒されていた。
Q2:クマはどんなふうにあなたを襲ったんですか?
A2:クマは私の両耳をつかんで、顔に噛み付いてきたの。その衝撃で、私の鼻筋が破壊されて、耳が引きちぎられて、14本の歯、上の歯茎と口蓋の大部分が噛み砕かれ、唇もなくなって、顔と頭蓋骨が引き裂かれた。
外科医によると、1度目の手術では1000針以上も縫わなければいけなかったらしい。
Q3:私なら怖くって、クマとなんて戦えないと思います。どんな気分でしたか?
A3:私も最初は、すくみ上がってしまって何も出来なかった。でも、「チクショウ、こんなのに負けてたまるか!!」って思って、生きることに決めたの。
Q4:クマに襲われたとき、走馬灯は見えましたか?
A4:いいえ。神の姿も見えなかったわ。でも自分が死の瞬間にいることは分かって、ものすごく腹が立ったの。とてつもない怒りを感じて、クマと戦うことにしたのよ。
Q5:顔の半分を引きちぎられるのは、どんな気持ちがするものですか?
A5:自分が、自分でない気がしたわ。冷たくて、私は内側から冷静に眺めている感じだった。
Q6:野生動物に襲われたら、「目を狙え」と聞いたことがあります。クマの目を攻撃しましたか?
A6:攻撃したわ。それで、犬を呼び寄せる時間を稼げた。でも、襲われている最中でも、生き物の目を攻撃することには抵抗があった。きっと人間の本能に反するのね。とてもイヤな気持ちがした。
Q7:クマに襲われた後、目玉が顔から垂れ下がっていたんですか?
A7:垂れ下がってはいなかったわ。でも噛まれて、片方のまぶたがはぎ取られてしまったけどね。車を運転して逃げ出すとき、ちょっとだけ鏡で確認したけど、そりゃあヒドい状態で笑ってしまった。そのまま運転を続けたけどね。
Q8:クマの攻撃にあってから、どんな考えが頭をよぎりましたか?
A8:多分みんなと一緒の「Oh……no」よ。
Q9:襲われた瞬間は、スローモーションだったりしましたか?
A9:速くも遅くもならずに、現実のスピードだったわ。このピンチを生き延びなければと思ったから、出来る限り全てのことを覚えておこうと自分に言い聞かせたの。そうすれば、人に体験談を話せるからね。結局、本を出版することにもなったし。
Q10:クマからの攻撃はどれくらい続いたんですか?
A10:実際に襲われたのは、3〜4分ってところかしら。でもその後、自分の車まで歩いていって、近くの消防署に辿り着くまで1時間くらいはかかったわ。
Q11:血だらけで運転するあなたの姿を見て、他の車の人々はビックリしたでしょうね?
A11:私が運転したのは、ちゃんとした道路ではなかったし、他の車は1台も通ってなかったわ。
Q12:アドレナリンが放出されていて、すごい運転だったんでしょうね?
A12:そうね。他には何も見えなくて、ただ夢中になって運転したわ。恐怖を感じていたはずなのに、アドレナリンってスゴいのね。
Q13:車を運転しながら、どんなことを考えていましたか? 音楽を聴いたりしましたか?
A13:いかれたディズニーの乗り物みたいだったわ。興奮と落胆の間を行ったり来たりしていた。でも、こんな状態では生きていけないんだから、腹をくくって車を飛ばしまくったわ。人里離れた場所だったから、誰もひかずに済んだんだけどね。
音楽は聴かなかったわ。自分の狂った笑い声だけが響き渡っていた。
Q14:泣きましたか?
A14:いいえ、その時は泣かなかった。泣いても何も解決しないし、時間とエネルギーの無駄だからね。でも、たくさん汚い言葉を口にしたかも……。
Q15:消防署に着いたとき、何と言って助けを求めましたか?
A15:“私の姿を見て、みんな気を失わないかしら?” と心配だった。だから、何でもないように、さりげなく助けを求めることにしたわ。歩いて、「ハニー、ただいま!」ってガレージに入っていったの。
Q16:助けてくれた人たちは、どんなリアクションでしたか?
A16:消防士たちは、私の姿に面食らっていたわね。でも、みんな出来る限り冷静に対処しようとしていて、最後には笑い話すらしたっけ。私を迎えにヘリコプターがやってくるまでの20分間は、私の名前や年齢、血液型などの情報を伝えることで、双方の意識を集中させるようにしたの。
Q17:顔が半分な状態で、どうやって消防士に情報を伝えたんですか?
A17:話せなくても、ジェスチャーや流れる血で何が起こったか伝わるものなのよ。子供のころ習っていた腹話術も役に立ったわ。
Q18:その後、クマはどうなったんですか?
A18:私を襲った後、クマは逃げた。その後3日間かけて、人々がクマの行方を追ったけど、1匹の犬が殺されたので切り上げたみたい。今でも、あのクマがどこかで生きているといいんだけど。
Q19:なぜクマはあなたを襲ったのでしょうか?
A19:多分、お腹が空いていたんでしょう。そのちょっと前に起こった山火事で混乱していた、あるいは、テリトリーを守るためという理由も考えられるわ。私のことを、シカよりも簡単に捕まえることができるディナーだと思ったのかもね。
Q20:襲われた後は、どんなことを考えていたんですか?
A20:1つ1つ小さな勝利を勝ち取っていった感じね。クマの攻撃から生き延びて、逃げて、車までの道を見つけて、車に辿り着いて、山を下りていって、と少しずつ進んでいったの。ココまでくれば、そしてこのままいけば、大丈夫なはずと思ったわ。
……さらなる質疑応答は、次ページ(その2)へ!
参照元:Reddit(英語)
執筆:小千谷サチ
Photo:Wikimedia Commons
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Q21:クマに攻撃されるのって、どれくらい痛いのでしょうか?
A21:野生の獣に引きちぎられるシーンを想像してみて。それくらい痛いわ。でも痛みよりもショックや恐怖の方が、鮮明に覚えているわ。
Q22:クマに遭遇したときには、どうすればいいですか?
A22:グリズリー・ベアなら、死んだフリをしなさい。アメリカクロクマに遭遇したら、何を持ってしても全力で戦うの。なぜなら向こうもあなたを殺しにかかってくるからね。ホッキョクグマなら、お手上げだけど。
Q23:あなたの犬の種類は何ですか?
A23:マスティフとアイリッシュ・ウルフハウンドよ。偶然にも、この2つの犬種はクマに襲われたときには、大きな味方になる性質を備えていたみたいね。
Q24:犬は大丈夫だったんですか?
A24:大丈夫だったわ。逃げるときに呼んだら、2匹ともついてきた。その後のことはあまり覚えていないけれど、体には毛や血がたくさん付いていて、唸ったり吠えたりしていた。犬たちは私が立ち上がって、逃げられるように、クマの気を引いてくれていたの。でも2匹とも、大きな怪我はしなかった。
私が病院から家に帰ってきたときには、2匹とも犬小屋で私のことを待ってくれていた。あの時は泣きに泣いたわ。
Q25:医療費はいくらかかりましたか?
A25:保険会社は、20%しか医療費をカバーしてくれなかったの。だから残りの医療費は、今後の人生をかけて支払っていかなければならない。これまでに、30万ドル(約3000万円)くらいかかったかしら。
Q26:話を聞いているとあなたは楽観的な人間のように感じられます。どうですか?
A26:楽観的というよりは、クヨクヨしない感じね。人生ではスゴく変なことが起こるわよね? でも、真剣に考えすぎなければ、何とかなるものなのよ。
Q27:クマと出会わないために、どんな防止策をとっていますか?
A27:今、外に出かけるときは、背後に気をつけるようにしている。アメリカクロクマは滅多に人を襲ったりしないから、あれはとっても不幸な事故だったのよ。でも、犬を必ず連れて、常に警戒を怠らないようにしている。
Q28:銃やクマ撃退スプレーは携帯しないのですか?
A28:いいえ。大型犬か馬を連れて行くだけね。銃は邪魔になるだけよ。あの時、私もホルスターに入れて銃を携帯していた。でも全てが一瞬の出来事だったから、銃を取り出す暇もなかったわ。どんな状況でも銃を完璧に扱える自信があるならいいけど、パニック時にはとっても難しいわよ。
クマ撃退スプレーを携帯するのは、いいアイディアかもしれない。でも欠点は、持ち運びが面倒だったり、トリガーを引く準備をする必要があるところかな。それに、いつもスプレーを取り出せるように緊張していると、周りの自然を楽しむ余裕も無くなってしまうしね。
Q29:もう怪我は完全に治ったんですか?
A29:今の私を路上で見かけても、“クマに襲われたことのある人” だとは分からないでしょうね。私の手術を担当してくれたキンバリー・リー先生は、素晴らしい形成外科医なのよ。でも顔も頭も、とっても痛かったんだけどね。
緊急治療室に運び込まれたときは、とても人間だとは思えないほどの見た目だったわ。写真を見ても、どれが顔だか分からないくらいだったみたいね。
Q30:クマに仕返しをしようとは思わないんですか?
A30:いいえ。あのクマも私と同じように、救いを求めてあがいていたのよ。
Q31:この体験で、動物を見る目が変わりましたか?
A31:そうね、確かに大きな牙を持った動物に対しては、もっと慎重になったと思う。“殺されはしない” と油断してしまうこともあるけど、殺されることもあるのよね。
Q32:クマに襲われた人から、「助けが来るまでは、痛みを全く感じなかった」と聞きました。あなたの場合はどうでしたか?
A32:私の場合は、ずっと痛みを感じていたけれど、そうね。ヘリコプターで運ばれて、これで助かるんだって分かった途端に、信じられないほどの痛みを感じ始めたわ。でも全ての意志の力を動員して、意識を正常に保とうと努めた。そうしないと、自分の血に溺れて、息が出来なくなってしまいそうだったから。
Q33:あなたの体験談を聞いたとき、人々はどう反応しますか?
A33:襲われた直後の私の写真を見せるまで、ほとんどの人が私の話を信じないわ。でも写真を見せると、みんな、どんな形成外科医が私の顔を治したか聞きたがるの。
Q34:怪我が回復する過程で、最も大変だったのはなんですか?
A34:間違いなく、保険会社との交渉ね。
Q35:術前・術後で、顔の感じはどう変わりましたか?
A35:この4年間は、「顔ヨガ」を続けてきたんだけど、徐々に筋肉をコントロールできるようになってきたわ。口笛が吹けるようになったとき、もう大丈夫だと確信した。
……残りの質疑応答は、次ページ(その3)で!!
参照元:Reddit(英語)
執筆:小千谷サチ
Photo:Wikimedia Commons
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Q36:僕は3カ月間、森で暮らす予定です。これからクマが生息する地域に行こうと思っている人に、アドバイスはありますか?
A36:まず、あなたが向かう地域の自然保護官(レンジャー)に連絡を取って、アドバイスを仰いでみて。クマ撃退スプレーも携帯して、使い方を練習しておいた方がいい。最も大切なのは、常に周囲に気を配ること。
でも心配しすぎて、森での生活が全く楽しめなかったら元も子もないからね!
Q37:熊に襲われたあと、視力や聴力はどうなりましたか?
A37:視力に障害を抱えることになったけど、耳はよく聞こえるわ!
Q38:今でも同じ場所に暮らしているんですよね? 怖くないんですか?
A38:野生の場所に1人で入っていくときは、以前よりも慎重になったわ。でも怖くはない。
▼1度目の手術が終わった後
Q39:その後、クマを見かけたことはありますか?
A39:あります。去年は、台所の庭に1匹のクマが来ていたわ。強く脅したけど、何度も来ていた。
Q40:これまでに、諦めようと思ったことはありますか?
A40:いいえ。でも治療の最中に、保険会社に申請が何度も却下されたときには、落ち込んだわ。色々な人が助けてくれたから、救われたけどね。
Q41:この体験があってから、あなたの人生はどう変わりましたか?
A41:それほど変わっていないわ。でも読者や多くの人が救ってくれることに、とても感動している。
Q42:クマは臭かったですか?
A42:可笑しいわね。あなたに言われて考えてみたんだけど、匂いだけはどうしても思い出せないわ。いい質問ね。
Q43:この体験から、何か得たことはありますか?
A43:人間性にもっと目覚めたわ。他者と繋がって、困難に立ち向かう人に、勇気やインスピレーションを与える場に参加しているの。
Q44:クマと戦い、生き残ったことを後悔したことはありますか?
A44:そうね、「サバイバーズ・ギルト(生き残った者が感じる罪悪感)」を感じることはある。ギリギリまで死に近づいて、実際に死は甘い誘惑でさえあったから、今でも私の一部はあの場所に留まってしまっているように感じられる。
でも、これから生き続けなければ、助けてくれた人に対して無責任すぎる。力を尽くして私を助けてくれたのに、私が諦めてはいけないわよね。
▼術後のお顔
Q45:クマに襲われた場面が、悪夢になって蘇ったりしますか?
A45:いいえ。一度も無いわ。でも歯医者で歯を削る音を聞いたときにフラッシュバックが起こって、ちょっとパニックになったわね。
Q46:クマに襲われて以来、日常的に何か痛みを感じることがありますか?
A46:鏡で自分の姿を見ること。姿が変わりすぎたので、私が映っているけれど、私ではないように感じられる。そこには居心地の悪い “ズレ” が感じられるの。あと、自然を心の底から楽しめなくなってしまったことも悲しいわ。身体的な痛みは、良い薬などで乗り越えることが出来た。
Q47:クマのことが嫌いになりましたか?
A47:いいえ。クマの姿を目にするといつでも嬉しくなるわ。野生の中で、平和に生きていってほしい。
Q48:クマに襲われて、生産性が上がったことってありますか?
A48:いいえ。あの体験で、心身ともに大きなダメージを負ったからね。目を攻撃されたから、読むのも書くのも難しい。けれども、ゆっくり座って、色々なことを考えるいい口実が出来たから、その点ではとても貴重なモノを得たと思う。
Q49:今でもお顔は痛みますか?
A49:はい。でも昔よりもマシになったわ。決して慣れることはないけれど、いつだって痛みを感じているから、ずっと気に病むことはなくなった。
Q50:あなたはこの体験を本にして出版されましたね。でも、なんで表紙にグリズリー・ベアが描かれているんですか?
A50:編集者が決めちゃったのよ。訂正させたかったけど、もう遅かった。
参照元:Reddit(英語)
執筆:小千谷サチ
Photo:Wikimedia Commons
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