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突然だが筆者は「金縛り体質」である。十代後半に金縛りを初体験し、おそらくこれまで100回以上は金縛りにあっているだろう。金縛りも100回こなしてしまえば、そこまで怖くはないが、ちょっとした不気味さはいまだにある。

まだ金縛りビギナーだった頃、筆者は怖くて「南無妙法蓮華経……南無妙法蓮華経……南無阿弥陀仏!」 とひたすら心の中でお経を唱えまくっていた。だがしかし……。“ある話” を聞いてから、その技が一切使えなくなってしまったのだ。

・金縛りのパターン

金縛りとは、睡眠時、意識はハッキリしているのに体が動かない状態のことをいう。医学的には『睡眠麻痺』と呼ばれており、「体が超疲れているとなりやすい」「いや単なる夢でしょ」などの話は聞くものの、科学的な解明はされていないのが現状だ。

筆者の場合、金縛りになる日はすぐにわかる。ウトウトしている最中から、遠くからゾワゾワと波がやって来るのだ。意識はハッキリしており「うわ、来てるなー」と思いつつも、起き上がることはもちろん、声を出すことすら出来ない。例えばそこに、起きている家族がいることはわかっていても、だ。

遠くにいた波がだんだん近づいてきて、耳鳴りが次第に大きくなる。やがてその耳鳴りが、ギュイーーーーーン! となったら、『金縛り完全体』の出来上がりである。MAXの時点でも意識はあるが、気付けばそのまま眠ってしまい、翌朝目が覚める……というのが通常のパターンだ。

・当時はお経を唱えまくってたが……

まだ「金縛りビギナー」の頃、筆者はとにかく「南無妙法蓮華経……南無妙法蓮華経……南無阿弥陀仏!」 と心の中で唱えまくっていた。理由はお経が唯一知る呪文だったこと、そして「自分は成仏を願ってます! 間違っても敵じゃありません!!」 という霊へのアピールである。だがしかし……。

幼なじみの女の子にこの話をしたら「それ効かないよ」と、一刀両断されたのだ。彼女いわくこうである。彼女の知人が、かなりの上級者で「今日も金縛りか。はいはい、南無妙法蓮華経……南無阿弥陀仏……」と心の中で唱えていたらしい。すると……

そんなの効くかーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!」

と、耳元で男の声が聞こえたというのだ。 ……こぇぇぇええええええ!! シンプルだけど超おっかねぇぇえええええッ!! よく考えれば仏教徒じゃない霊もいるだろう。そもそも外国の霊だとしたら、お経だと理解されていない可能性だってある。南無妙法蓮華経は決して無敵の呪文ではないのだ。

・筆者なりの対策

それ以来、筆者は金縛りになったら「とりあえず、すみません。てか本当にすみません! でも自分は敵じゃないッス!! ソーリーソーリー」と、英語を織り交ぜつつ、ひたすら謝り倒している。その効果があってかどうかはわからないが、特にコレといった心霊体験はしたことが無い。

いつの日か、「てめぇナメてんのか!!!!!」 と言われる可能性もゼロじゃないが、もしかしたらお経よりも効果があるかもしれないぞ。信じるか信じないかは、あなた次第だ。

執筆:P.K.サンジュン
イラスト:稲葉翔子