下半身を露出したまま、しばらく便器を見つめていた。ついに来やがった……。これが血尿というヤツか!? 見るからに毒々しい色をしている。まるでコーラを便器にぶちまけたかのようだ。
こんな尿が出るなんて、自分の体の中で今一体何が起こっているのだろうか? 不安とショックで、パンツをはく気になんてなれない……。
──以下は、「コーラ色の尿が出た私(筆者)の実体験」である。黄色い尿しか経験がない人には想像できないかもしれないが、奴らは突然やってくる! その原因を知らなければ、きっと多くの人が私と同じように焦ってしまうだろう。
・自宅のトイレで用を足したら……
「男性が “小” をするときは立ってするもの」と考えている人はいるかもしれないが、洋式トイレの場合、男性でも座ってする人は少なくない。その方が便器の周りを汚さなくてすむからだ。
私がまさに “座るタイプ” で、その日も もちろんそうだった。自宅トイレの便座に座り、出すべきものをジョロジョロと出す。いつもと変わらず気持ちいい。そして全て終わった後に立ち上がって振り返ると……先述の光景が目に飛び込んできたのである。
排尿時も排尿後も、痛みは全くなし。体調だって悪くない。むしろ、その日はスポーツジムの1日体験に行き、約10年ぶりにまともな運動をした直後なので、いつも以上に気分は良かった。強いて言うなら、ジムで水泳をしたせいで、筋肉痛になっているくらい。
──この時点で、読者の中には原因にピンと来た人がいるかもしれない。しかし、その時私は全く「それをしたらそうなる」ことを知らなかった。そのため、原因を突き止めるまでに思わぬ回り道をすることになったのだ。
・原因は “エクレア”
実はコーラ色の尿を見たとき、私の中にはわずかながら心当たりがあった。というのも、昨日の朝、私はトイレで1本の長〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いモノをひねり出したのである。あえてスイーツで言うと、エクレア2つ分サイズ。コーラ色の尿の原因は、それかもしれない。
つまり私が最初に考えたのはこうだ。血尿が出たのではなく、中に詰まっている “ダブルエクレア” のせいで、封水(便器の中に溜まっている少量の水)が黒くなったのだと。
そういえば、以前も “ダブルエクレア” がトイレに詰まったことがあった。うちのトイレの下水管が細いのか、私の直腸が長すぎるのかよくわからないが、これまで事故は何度か起きていたのだ。
そこで詰まりを解消すべく、私は通称「ズッポン」で処置。いくら “ダブルエクレア” サイズとはいえ、流してはいけないものではないのだから、これで大丈夫なはず……。
・2回目のおしっこ
それから数時間後、またしても尿意をもよおした。今度は座りながら 放出口の先端をガン見だ。「大丈夫だよね!? そこから出てくるのは『レモンウォーター』のような色をしているよね!?」と信じながら見つめていると……
『午後の紅茶 ストレートティー』みたいなのがシャーーーーーーっと出てきたのである。全部出尽くしたところで立ち上がり、恐る恐る振り返れば……やっぱり前と同じ色。
・わずかな希望
この時点で心はほぼ折れたが、まだ完全に諦めたわけではなかった。確かに尿の色は濃かったけれど、血尿だとは限らない。もしかしたら、“ダブルエクレア” が詰まっているところに濃い色の尿が出たため、封水がコーラ色になった可能性だってある。
そう思ってトイレの水洗をチェックしてみたところ、どことなく、いつもより流れが悪いような気が……。これは絶対に “ダブルエクレア” が詰まっているな。
なかなか現実を受け入れられない筆者は、業者に連絡し、トイレの検査を依頼。電話で説明したら、間もなくお兄さんが来てくれた。しかし……結果、トイレに異常はなし。
やっぱり血尿か……。認めたくはないが、さすがにこうなったら覚悟を決めるしかない。こうして私(筆者)はいよいよ病院へ行くことになったのだが……その結果は次のページで明らかになるぞ。
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
・病院へ
翌日の午前、私は大学病院の泌尿器科へ向かった。大学病院を選んだのは、「『精密検査を受けて下さい』とか『即入院して下さい』と言われた場合、大きい病院の方が便利かな」といった単純な考えからである。ビビリながらも、それなりに覚悟は決まっていたのだ。
そして、大学病院の待合室で、一昨日の自分の長〜〜〜〜〜〜〜い “ダブルエクレア” を彷彿とさせるような長〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い待ち時間を経て、ようやく自分の番が来た。
・尿検査
「今日はどうしました?」と尋ねる男性医師に「実は血尿が出まして」と告げる。ああ、ついにこのセリフを言うことになるとは……。すると「あ、そう。じゃあとりあえず尿検査しますね。おしっこするのは苦しくない? 今、おしっこ出る? 結果はすぐに出ますので。検査の後、1時間後にまたお呼びします」と、淡々としたお答え。
こちらにとっては、覚悟を決めた上での「血尿宣言」だったが、医師からすれば血尿が出た人なんて今まで何人も診察してきたのだから、当然といえば当然だが、珍しくも何ともないのだろう。
それから紙コップを受け取り、昨日よりは少し薄まったものの、まだコーラ色の尿をその中へ注ぎ込む。色が黒くて、紙コップの内側にある目盛りがほぼ見えなくなった。
・検査結果
1時間後、また名前を呼ばれ、ドキドキしながら診察室へ。いよいよ結果が分かるのだ。私は検査結果の書類を確認している医師の顔をまともに見られずに、その椅子のキャスターをずっと見つめていた。
すると医師は突然「最近、激しい運動とかした?」とひと言。「はい、水泳を。今も筋肉痛で」と返すと……
「あ、それだわ。厳密に言うと、血尿ではないよ」とのお言葉。マジですか! 真っ暗だった視界に、急に10万ルクスくらいの明かりが差し込んできた。さらに、医師は「あなたの場合は放っておけば自然と治る」と言うではないか……!
・コーラ色の尿の原因は?
医師の説明によると、コーラ色の尿は「ミオグロビン尿」というもので、激しい運動をして筋肉に負担がかかると出るらしい。普段運動をしない人が、久しぶりに運動をした後に出ることが多いのだとか。
つまりコーラ色の尿が出た原因は、ジムで10年ぶりくらいに行った運動、いや私の普段の運動不足がそもそもの原因だったのだ。
・知らなかった人は覚えておこう
というわけで、私のように「ミオグロビン尿」を知らなかった人は、そういう尿があることを覚えておいた方がいいぞ。知っていれば無駄に焦ることもないし、現実を受け入れられないばかりに、トイレの検査費用として2万円以上も支払うような羽目にはならないだろうから。
執筆:和才雄一郎
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