「キューバにも寿司はあるけど、はっきり言ってマズい。日本で食べた方がいいよ」──私(筆者)が「キューバにウマい寿司屋ってあるの?」と聞くと、1人のキューバ人はそう言った。彼は来日経験が何度かあり、日本で寿司を食べたこともある。だからその言葉には説得力があった。
でもそう言われると、逆に私(筆者)はそれを自分の舌で確かめてみたくなったのだ。キューバ人が自ら “マズい” と言い切る寿司とは一体どんなものなのか? ラーメン彦龍の寿司版みたいな店かもしれない! とにかく是非とも一度、その寿司を味わってみたい!
こうして私はキューバ人の率直な意見を無視して、店に行ってみることにした……のだが! 今から思えばマジで止めとけばよかった。完全に失敗だった。まさか、寿司を食べ切ることが、あんな苦行になるなんて……。
・首都ハバナで寿司を探す
「おすすめはしないけど、それでも行くんだったら……」と、そのキューバ人は、首都ハバナにある2軒の日本料理店を教えてくれた。そして筆者がその店に行ってみたところ……結果から先に言うと、どちらもすでに潰れていたのである。
やはり “彦龍レベル” だったのだろうか? それともただ単に日本食がキューバでウケなかったのだろうか? 店がなくなった今となっては確かめようがない。
・別のキューバ人からレストラン情報をゲット
しかし、何としてでもキューバで寿司を食べてみたい! 2軒目に行った日本料理店がすでに閉店したことを知った私が諦めきれずに立ちすくんでいると、近くにいた1人のキューバ人が「何を探しているんだ?」と聞いてきた。
「寿司を食べられるレストラン」と答えたところ、彼が「誰か、知らないか?」と道行くキューバ人に聞きまくってくれたのだ。すると、そのうちの1人から「メリア・アバナに行けばあるぞ」との情報が! 筆者は聞いてくれた人にも教えてくれた人にもお礼を言い、その「メリア・アバナ」へ向かうことにした。
・5つ星ホテルで期待が高まる
「メリア・アバナ」とは、ハバナ市内にある5つ星の超高級ホテル。その中に宿泊客以外も利用可能なレストランがいくつかあり、どうやらそこで日本料理が食べられるらしい。
「最初の予想に反して、こりゃウマい料理にありつけるのでは!?」。ホテルを間近で見ると、いやが上にも期待が高まった。メリア・アバナはまさに “ザ・高級ホテル” といった外観だったのだ。これでマズいワケないでしょ!
・日本食も中華も一緒になったアジア料理レストラン
ホテルの中に入り、レストランを探すと……あった、あった! 「Bella Cubana」というレストランがそれで、日本食や中華料理、タイ料理、カレーなど、とにかくアジア料理を扱うレストランらしい。
「アジア料理」と、くくりが雑な感じは否めないが、もうそんなことどうだっていい。やっと見つけたのだ、日本料理が食べられる店を! おまけに、こんな高いホテルの中にあるなんて……こりゃ当たりやな! そう思って、私は夜の部が始まる19時ジャストに店に入った。
・強引に演出されたアジア感
その店内は確かにアジアっぽかったものの、決定的な何かが欠けていた。例えば、店に飾られた漢字。なぜ、「男」「女」なんだ……。トイレでもないのに。それから「黒」「白」って……。マイケル・ジャクソンの曲かよ。あと、筆者には分からない漢字も。
「アジア料理店だし、とりあえず漢字でも飾っとくか。意味はさっぱり分からいけど、まあOKでしょ」そんな店側の声が聞こえてきそうな店内だ。その辺りも、やはり大雑把である。
・ようやく見つけた「SUSHI」
だがいい! 料理がウマけりゃ、店内の細かいことなんて、気にしないさ! そう思って、メニューを見ると、「SUSHI」の文字を発見! 長かった……ようやく見つけたぞ! キューバのSUSHIを!
そんな達成感に包まれていたのだが……実は、ここからが真の戦いだったのだ。一体、どんな寿司が出てきたのか? 結末は、次のページへGOGOGO!
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
・握りのネタはたったの4種類
その店のメニューには、握りと巻き寿司の2種類の寿司があった。握りはたったの4種類。『マグロ』『サーモン』『タコ』『エビ』で、どれも2貫で3CUC(約370円)。
種類、少なっ! と思われるだろうが、筆者が「この4つを全て下さい」と言うと、「タコとエビは切らしているから、マグロとサーモンしかありません」とのお答え。つまり、実際には2種類しかなかったのである。夜の営業開始と同時に入店したのに、最初から品切れか……。まあでも、ないものは仕方がない。とりあえずその2種類を頼むことにした。
・芸者ロールに味噌汁もオーダー
また、巻き寿司はいかにも海外の寿司店らしく、日本では見ないような名前が並んでいる。その中から、一番気になった『GEISHA ROLL』(15CUC、約1800円)をチョイス。芸者ロールとは、一体何が巻かれているのだろう? それから、味噌汁(4CUC、約490円)もあったのでそれもオーダーした。
・20分後に味噌汁が……
待つこと約20分。最初のメニューである味噌汁が出てきた。なんだか妙に重厚な器だ。分量的には余裕で2人分はある。具はワカメとネギのもよう。
早速れんげですくい一口飲んでみると……微かに味噌を感じるものの、ダシの風味が全くしない。恐らく、お湯に味噌を溶かして、具を入れただけだと思われる。恐ろしいほどにシンプルだ……。
・芸者ロールの中身は……
続いて運ばれて来たのは『GEISHA ROLL』。盛り付けに関しては、それほど悪くない。そしてその断面を見れば、海老の天ぷらと鮭が巻かれている。鮭は刺身のサーモンではなく、焼いた鮭をほぐしたもの。早い話が、シャケフレークである。それと海老の天ぷらの相性は最悪という程ではないが、どうひいき目に見ても良くはない。
何よりシャリが完全にウィークポイントであった。パサパサに炊いたお米に強い力を加えて、ベチャっとさせたとでも言えばいいだろうか。お米の形状を見るとジャポニカ米のようなので、お米の品種が寿司に合わないのではなく、炊き方に問題があるのかもしれない。
だがしかし! 味噌汁も芸者ロールも、まだまだ可愛いものであった。最後に出てきた握りが、マジのマジで強敵だったのだ。
・強敵だった握り
運ばれてきた握りのマグロは、明るいピンク色。「マグロの赤身って、もう少し赤黒い色をしているような……」と思ったが、見た目は確かにマグロである。一方のサーモンは、どこか傷んだような色だった。
恐る恐る少し食べてみると……。なんちゅうキツイ生臭さ! 口に無理に入れても、喉が拒否するかのようだ。おまけに先述のシャリである。この寿司ネタとシャリのそのコンビネーションが強烈。喉が完全にガードを上げまくっている。
だが、それでも戦わないといけない。自らタオルを投げることなど許されないのだ。そこで筆者はドリンクでゴマかしたり、間に休憩を挟んだりしながら喉のガードを無理に下げさせ、少しずつ少しずつ食べ進めた。
こうして、苦戦を強いられ1時間弱もかかったが、とりあえずは完食。それにしても五つ星ホテルにあるレストランで、まさかこんな寿司が出てくるとは……完全にカウンターであった。
結論。キューバで寿司は諦めた方がいい。それをそこで求める方が間違っている。キューバに行くなら、素直にキューバ料理を楽しんだ方がいいぞ。現場からは以上だ。
Report:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.
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