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日本を代表するロックスターといえば、誰を思い浮かべるだろうか? 音楽を良く聞く人であれば、真っ先に名前が浮かぶ人がいる。いや、音楽ファンでなくても、この人の曲を一度や二度は耳にしたことがあるはずだ。その人物とは、日本のロックをひたすらけん引し続けるカリスマ、矢沢永吉さんである。

矢沢永吉さんといえば数々の伝説を持つ男としても知られているが、彼の生き様、スタイル、音楽は、一人のアーティストの形にとどまらず、もはや若者たちに伝えたい「文化」だ! 矢沢永吉さんの名言である「最近勝ち組とか負け組みとか流行っているけど、スタート切っているかどうかが僕は大事だと思うけどね」なんて、特に勝ち組負け組みたいな“うわべ”にこだわっている若い人たちにぜひ聞いてほしい、ロックンロールな一言じゃないかッ!!

・矢沢永吉の魅力とは

しかし、そんな名言を聞いても矢沢永吉さんの名前を知らない若者は、「カッコつけたおじさんミュージシャンでしょ?」なんて思ってしまうだろう。でもな、65才になってロックンロールやれる、ケツ振れる、そして激カッコいい男なんて、日本にはE.YAZAWAぐらいしかいないとファンが断言するのには理由があるのだ! 今回はそんな矢沢永吉さんのスゴさを若者に伝えるべく、音楽評論家の田家秀樹に取材。彼が教えてくれた“矢沢永吉の魅力”を、お伝えしたいと思う。

・パフォーマンスとカリスマ性

田家「大きく分けてふたつの要素があると思います。ひとつは、ライブパフォーマンスが素晴らしいこと。そしてもうひとつは、圧倒的なカリスマ性ですね。ライブに関していえば、矢沢さんの生き方が出ていると思います。彼は広島出身で、音楽をやれるほど恵まれた環境にはいませんでした。それから裸一貫で這い上がってきた、その生き様が彼のライブに出ているんです。生き方そのものがライブの説得力になっていると言っても良いでしょう」

記者「たしかにひとつの成功をつかむまでは、苦しい日々が続いたと思います。ですが、今は成功して、いわゆるストイックさみたいなものは、なくなったりしていないのですか?」

田家「いまだにストイックです。たしかに過去に比べれば、音楽以外の面で戦いを強いられることは少なくなったでしょう。矢沢さんが世に出始めたころは、ロックは世の中にまだまだ認知されておらず、コンサートをやる会場によっては、「矢沢には貸さない」と言われていたほどです。また権利を巡ってレコード会社と戦ったこともありました。そんな戦いがなくなった分、いまは表現に対してストイックに向き合っています。その姿勢がライブに出ているんです」

記者「もうひとつのカリスマ性というのは?」

田家「カリスマ性というのは、言うまでもなく、彼が人をひきつける要素ですね。そのカリスマ性さえも、彼の生き方が反映されていると思います。彼の存在そのものが、当時の若者だった世代をはじめ、あらゆる世代の人に励みになっているのではないでしょうか。ロックを貫く矢沢さんの存在そのものが、人を惹きつけているのです」

・歳を重ねて

記者「年齢を重ねると共に、円熟味が増したということもあるでしょうね」

田家「円熟味が増したというのもあると思いますが、丸みを帯びたということではありません。洗練されたというのではなく、研ぎ澄まされたというのも違う。言葉がふさわしくないかもしれませんが、ロックの持っている衝動をより的確に表現できるようになったという感じでしょうか。

若いときは若いなりの勢いのあるロックだったと思います。今は歳を重ねた分、勢いだけではない的確な表現をしています。だからといって、勢いがないとかではないですね。歌っているときの気持ちの入り方が全然違う。積み重ねた重みというんでしょうか、魂がこもっているんです」

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記者「衰えは感じない訳ですね」

田家「そりゃもちろん、年齢的なものはゼロではないですよ。当然体力面は全然違うと思います。ですが、先ほども言ったような、気持ちの入り方や魂のこもり方は増しているように思います。年齢に応じた、60代にしかできないロック、それが今の矢沢さんです。また、経験に裏打ちされたものもあります。たとえば、20代の矢沢さんに60代のロックはできなかったはず。でも、今の矢沢さんには20代のロックができるんです。経験してきたことだから。生き様を踏まえた20代のロックなんです」

・見たことのない大人、見たことのないコンサート

記者「おそらく若い人は、矢沢さんの名前を知っていても、音楽を聞いたことがないと思いますが、どんなところを聞いて欲しいですか?」

田家「まだライブを見たことがない若い人には、まず知って欲しいですね。こんな大人がいるということを。ひたすらロックに対して、ストイックでい続けている日本人は彼のほかにいないです。

きっと矢沢さんを知らない人にとっては、見たことのない大人だと思います。その見たことのない大人がそこにいるんです。それが矢沢永吉という人です。見たことのない大人の、見たことのないコンサート。それが矢沢永吉のコンサートだと思います。彼のパフォーマンスとカリスマ性に惹きつけられることでしょう。できれば、彼の半生を描いた『成りあがり』も読んで欲しい。今は難しい世の中ですが、本当にそうなのかどうかということが、彼の人生を通して良くわかると思います」

・時折垣間見せる気迫

田家さんによると、若き日の矢沢さんは何もかもがむき出しだったそうだ。エネルギーがほとばしり、手にしていたマイクが折れそうなほどの気迫に満ち溢れていたという。いまだにその激しいロックの衝動を、ステージで垣間見せるときがあるのだとか。その気迫で観客を圧倒し続け、日本武道館で100回以上の公演を実現しているのだろう。

矢沢永吉さんは65歳という、若者から見たらオジイチャンみたいな年齢だ。だがしかし! 彼は20代の頃よりも、65歳の現在のほうがより輝きを増しているのだ! 今から年金が65歳になったらちゃんと貰えるのか不安になっている若者に「お前がどんだけ良い大学入って、どんだけ良い会社に就職しても お前が、一生かかって稼ぐ額は 矢沢の2秒」なんて稲妻みたいな言葉をロックに語れるアツい男は、E.YAZAWA以外にいないだろう。

そのギラギラとした気迫が、12月14日のステージで見られるチャンスがやってくる。特に若者にはぜひ観て欲しい、矢沢永吉 CONCERT TOUR 2014 「VERY ROCKS ~ROAD TO THE LEGEND~」 。音楽ファンはもちろん、いまだに矢沢さんを知らないという人は、一度その目でたしかめて欲しい。会場で観られなくてもWOWOWで生中継があるので、ぜひそちらでチェックしてみてくれ!

参考リンク:WOWOW
取材協力:音楽評論家 田家秀樹