欧米には “目が合ったら微笑む” という文化がある。それに深い意味は無い……無いはずなのだが、やはり急に微笑みかけられるとドキドキしてしまう。それが木の生い茂る薄暗い公園内であればなおさらだ。
ある晩のこと。ニューヨークのセントラルパークの一角の林で、私は道に迷っていた。その時に遭遇したスーツの紳士は、ニコリと私に微笑んできた。もちろん私も微笑返し(ほほえみがえし)。すると……なぜかウィンクと空キスが返ってきたのである。一体あれは何だったのだろうか。
・幸運の鳥を追って迷子に
そもそも夜の林で何をしていたのかを説明したい。幸運の鳥と言われるハチドリ。そんな鳥をセントラルパークで見る事ができると聞いた私は、セントラルパーク内のハチドリがいそうな林っぽいエリアに、ざくざくと入っていった。
そしてついにハチドリを発見! ……したのは良かったのだが、気がつけば辺りは暗くなり、ちょっとした迷子になっていたのだ。公園とはいえ、面積にして東京ドーム約73個分のセントラルパークだ。見通しの悪いエリアだと方角感覚を失ってしまう。
・クリス・ブラウン似のイケメンにドキドキ
とりあえず来た道を戻ろうと思った私は、見覚えのある分岐点にたどり着く。すると目の前の木を2匹の動物が登っていくのが見えた。……タヌキだ! わあっ!! 野生のタヌキを見たのは人生初。迷子になっている最中なのに、一瞬自分のおかれた状況を忘れて、ぼ〜っとタヌキを眺めていた。
──するとだ! どこからともなく現れたクリス・ブラウン似のイケメンが、横からこちらの顔を覗き込んでいるではないか!! 結構な至近距離から、何とも言えない感じの微笑で見つめてくる! 近い……近いぞ。他に人影はない。ドキドキだ!
テンパった私は「あ……その……タヌキが……」と声をかけたが、返事がない。……ただただ微笑んでくる。そう、ただ微笑みかけてくるのだ。いまいち状況がつかめない私は、さっと微笑みを返し、足早にその場を離れた。
・スーツを着た紳士にウィンクされる
その後も足早に突き進むが、なかなか林エリアを抜ける事ができない。焦りが募る。そんな状況下で遭遇したのが、前述したスーツの紳士だった。ビジネスマン風にビシッとスーツで決めていた彼。そのキッチリとした見た目に、ものすごく安心させられた。
そこでスーツ紳士方向に進んでいくと、こちらに気づき微笑んできたので、私もニコっと微笑返し。するとだ……なぜか急にウィンクしだした! そしてチュっと空でキスをしてきたのだ!! なぜ!?(WHY!?)
こうなったら、こっちもウィンクと空キスを返すべきなのか!? それがアメリカン・カルチャーなのか? いいや違う!! アメリカ文化にそこまで詳しくないが、なにかが違う! とにかくこの林は、なにかが違う! なんだかよくわからんが違うのだ!!
完全なるパニック状態。もう混乱状態の私は、「競歩か!」というくらいのスピードでその場を離れた。何度も何度も後ろを振り返りながら……。そして数分後、やっと開けた場所にたどり着くことができたのである。ホッ……。
・謎が色濃く残るあの林……
いま振り返ってみると、迷っていた時間はせいぜい10分くらいだろう。だが、その10分間が妙に長く感じられた。そしてなんだかドキドキした。一体全体、あの林はなんだったのだろうか……。
参考リンク:Google画像検索「クリス・ブラウン」
Report:ゴールド土方
Photo:RocketNews24.
▼素早すぎて上手く撮影できなかったが、真ん中にぼんやりとハチドリが……!
▼セントラルパークからの夜景だ!