「漫画家になりたい!」と思ったとき、やるべきことはただひとつ。ひたすら漫画を描くことだ。とにかく描く。経験を積む。ひたすら修行……それが上達への近道だ。だが、この世の中には「マンガ専門学校」なるスクールが存在する。2年制や、1年制、働きながら学ぶ人のための夜間部なんてのものあったりする。
謎多きマンガ専門学校。経験したものにしか分からない、一種独特な空間がそこにある。ということで「マンガ専門学校あるある」を40個ほど羅列してみたので参考にしてほしい。
【マンガ専門学校あるある40】
その01:絶望的に絵が下手な人がいる。
その02:明らかに時代遅れの絵を描く年配層がまぎれている。
その03:顔の絵だけは上手いが身体が小学生レベルの絵でコラみたいな絵を描く人がいる。
その04:デッサンのグラデーションだけが上手い人がいる。
その05:声優科から聞こえてくる声が異次元。
その06:これまで会ったことのないような超ド級のオタクがたくさんいる。
その07:自分のレベルを棚に上げつつ、“よくそんな絵で漫画家を目指そうと思ったな” という人がいる。
その08:講師が現役の売れないプロ漫画家(ホラー漫画系)。
その09:そんな講師が「恋愛なんてしてたら漫画家になんて絶対になれない。ていうかプロの漫画家になっても恋愛なんてできないと思え」と絶望的かつ的確なアドバイスをする。
その10:そんな講師が「どうしても時間がない時は1ページにつき1コマだけ本気で描け。そしたら、そのコマに引きつけられて他のコマも本気で描いたように見えるから」と的確な裏ワザを教えてくれる。
その11:そんな講師が「俺はプロの漫画家だが、漫画家の収入だけで食っていけないからこうして講師をしているんだ。甘くないぞ、この道は」と、リアルすぎるまんが道を歩んでいることを生徒に宣言。
その12:そんな講師が「出来上がった漫画は、3つの目で見ろ。漫画家、編集者、そして読者の目で見ろ」と的確なアドバイス。
その13:1カ月くらいで脱落者がポツポツと出てきて、半年後には生徒数が半数以下になる。
その14:絵は上手いが絶望的に漫画が下手な生徒がいる。
その15:発想は素晴らしいが絵が幼稚園レベルの生徒がいる。
その16:美人(イケメン)だが絵が絶望的に下手な生徒がいるとブサイクに見えてくる。
その17:初めての「つけペン」の授業は希望に満ち溢れた雰囲気に包まれるが、結局、授業を重ねていくうちに「毎日使っていないとペンに慣れないし、上手くならない」という事実に気づく。
その18:ただただ修行あるのみ、だということに気づく。
その19:マンガ専門学校に行けば絵が上手くなると勘違いしている人が多数いたが、数カ月で現実を知り、そして “まんが道” から離脱する。
その20:前述のホラー漫画家講師の他に、イラスト方面を教える講師がいたが、その正体はエロゲーの原画家だった。
その21:なぜそれが判明したのかというと、先生が作った「髪の毛の塗り方のための課題プリント」に描かれていたイラストを見て、超ド級のオタクなクラスメイト(男)が「あれ……先生の絵、どこかで見たことあるぞ……」とつぶやいたことがきっかけ。
その22:しかし、そのオタク生徒も、その時は憶測だけなので、あえて解答は言わなかった。
その23:もっとも、自分がエロゲーマニアだということがクラス中にバレるため、言えなかったと推測される。
その24:しかし彼は帰宅してから徹底調査をし、その答えが正しいことを確信。後に先生にコッソリ聞いてみたら、「みんなには言わないでね」と、その正体をコッソリと明かした。
その25:「絵で分かるくらい有名な原画家さんなんだ!」と感心していたが、後にエロゲーに詳しい人に聞いてみたら、相当マニアックな作品だったとのこと。
その26:本当にスゴイのは、オタクの彼だった。
その27:「あなたはもしかして『シティーハンター』の作者?」と思えるほどにシティーハンターの絵だけが上手いオジサン生徒がいたが、3カ月ほどで消えた。
その28:たった4ページの課題作品なのに、まるで『ロード・オブ・ザ・リング』ばりの壮大すぎるファンタジー作品を描こうとして、登場人物紹介だけで終わっているマンガを描いた生徒がいた。
その29:たった2ページの課題作品で、三国志の世界を表現しようとしたチャレンジャーな生徒がいた。フキダシ内のセリフが、それぞれ20行くらいあって、しかも米粒に写経をするような読めないレベルの細かい文字で、それはそれで職人の技だなと思った。
その30:1ページ課題作品で、大胆に3コマに分割し、「目覚まし時計のアップ」 → 「それを止める手のアップ」 → 「フワァァァ……と起きる人の大ゴマ(しかも下手な絵)」だけ、というスゴイ作品があったが、ほかの誰の漫画より面白かった。
その31:自分が描いたデッサンの狂ってるイラストに先生が赤ペン入れてくれると何がおかしいのか一発で分かるからありがたかった。
その32:わりとアナーキーな生活をしているコワモテの生徒が描いた作品が、すさまじく清純なファンタジー作品。
その33:筆ペンの使い方は奥が深いと知る。
その34:ベタ塗り授業のとき「同じ所を何度も塗っても作業は一向に進まないよ」と当たり前すぎるアドバイスを受けるも、実際に同じところを何度も塗ってる生徒が何人かいた。
その35:先生が面白いと思う喜劇のビデオを見るだけの授業があった。
その36:「女性を描く時は、女性を好きになりなさい」とのアドバイス。
その37:卒業間近になると「◯◯先生のアシスタントになることが決まった」や「アニメーターになることにした」と、さらなる修業の道へ進む立派な仲間が何人かいた。
その38:『ComicStudio』がある今、どんな授業になっているのか気になる。
その39:卒業後に先生に会って、ぶっちゃけトークをしたら「私だって何を教えたらいいのか分からなかったよ。だって漫画家って、教えられてなれるもんじゃないからね」とぶっちゃけた。
その40:何が身についたのか自分でもよく分からなかったが、さらにプロになってから実戦で役に立ったことは少ししかないが、楽しかったのでよしとする。
執筆:GO羽鳥
illustration:RocketNews24.