イギリスとフランスの間に浮かぶ人口600人の小島、サーク島。この島は、自治権を持つ英国王室の保護領で、「離婚禁止」、「鳩の飼育権を持つのは領主のみ」、「走行中の馬車に乗っている時は立つな」など中世時代さながらの法律が今も残り、移動手段は馬車か、自転車か、島に数台しかないトラクターという欧州の秘境である。
そんな辺ぴなこの島の代表チームは、ある意味で伝説的存在だ。サーク島代表は国際サッカー連盟、欧州サッカー連盟に加盟していないため、ワールドカップや欧州選手権の予選には参加できず、公式戦の記録はわずか4試合しかないのだが、その試合結果が伝説の理由。圧倒的に弱いのだ。
・4試合で0得点70失点という前代未聞の大敗
2003年、欧州近隣の島々が集う大会「Football at the Island Games」に初出場したサーク島代表は、グループリーグ3試合で0得点55失点、最下位決定戦でもノルウェーのフローヤ島に0−15で破れ、4試合で0得点70失点という前代未聞の大敗を喫したのである。
・弱すぎて「大会に参加させてもらえない」
以前、旅行中にたまたまサーク島代表の試合を観戦する幸運に恵まれた。相手は船で1時間の距離にあるガンジー島のクラブ、ポートシティ。各ポジションに小太りの中年男性を擁すサーク島代表は、終始ボールを支配されて、1−4で完敗した。
試合後、事務局も務めているというゴールキーパーのクリス・ドリロットさんに話を聞くと、公式戦の記録が4試合しかない理由が判明。あまりに弱いせいか、「大会に参加させてもらえないんだ(苦笑)」。
恐らく、2003年の大会は、隣接するガンジー島で開催されたので出場が許可されたのだろう。近隣のチームとの練習試合では勝利を収めているようだが、2003年以降、公式戦出場の記録は見当たらない。
・伝説的弱小チームの正体
サッカーチームが島に1つしかないため、必然的にサーク島代表として扱われているものの、その実態は、16〜40歳のサッカー好きが集う草サッカーチーム……これが伝説的弱小チームの正体だった。だから、選手たちには何の気負いもない。
サーク島代表として何か目標はありますか? と聞くと、肩をすくめたクリスは、「試合を楽しんで、その後に旨い酒が飲めればそれが最高さ」と答えた。そして、もう待ちきれないという様子で、仲間とビールが待つロッカールームへと立ち去った。
参考リンク:Facebook Sark FC
執筆:川内イオ
▼小太りの主力選手