過ごしやすい気候に美味しい食べ物、そして温かい人と、台湾は人気の旅行先である。台湾旅行といえば台北の夜市や九份などが有名だが、台中市には、知る人ぞ知る秘密の観光地があるそうだ。
そこには91歳のおじいさんが創り上げた世にも美しい村があるのである。村はその鮮やかさから「彩虹眷村」と呼ばれている。日本語でいうと「虹の村」だ。
・眷村とは?
1949年、中国大陸で内戦で中国共産党に敗北した中国国民党は台湾に逃れた。眷村(けんそん)は、その際に移住した人々の住宅問題を解決するために設置された移民村である。台湾各地に設けられ、官僚、軍人、公務員など職業や特性で分けられたそうだ。
・美しい台中の彩虹眷村
かつては大きなコミュニティだった眷村も、現在は高齢化、建物の老朽化に住民の減少と寂しい状況になっている。そんな眷村のひとつ、台中市春安区の眷村を明るく鮮やかな世界に一変させたのが、1949年に台湾にやってきた元軍人・黄永阜(こう・えいふ)さんだ。
黄さんの住む村は「寂しい」なんて言葉は全く合わない! 村中が、赤や黄色など目に染みる鮮やかな色でいっぱい! 壁や道のいたるところに大胆な色づかいで簡略化された動物や人が描かれている。これは全て黄さんが描いたものだ。
・訪れた人が幸せな気持ちになる村
2008年8月のある日、87歳だった黄さんは突然、筆とペンキを持って村中の壁や道に絵を描き始めた。その理由は「退屈だったから」。黄さんは特に絵を習ったことはないという。しかし、その絵は一度見たら忘れられないほどのインパクト! 黄さんの絵はクチコミで広がり、多くの人が訪れるようになる。黄さんも「みんなが喜んでくれるから」と、どんどん描き続けたそうだ。
黄さんの絵は、エスニックな雰囲気を醸す一方で、どこか抽象画のよう。芸能人の似顔絵なんかもあってクスっと笑える。
そして、ところどころに散りばめられた「感恩」、「平安」、「大家有福気(みんなが幸せでありますように)」という言葉。見に来てくれた人の幸福を願って書いているという。この美しく黄さんの思いがつまった村は「虹の村(彩虹眷村)」と呼ばれるようになった。
・都市開発のために取り壊しの危機に!
人気の観光地「彩虹眷村」だったが、例にもれず都市開発のため取り壊しの危機に陥ったそうだ。しかし、黄さんの絵に感動した人々がインターネット上で「彩虹眷村」を守ろうと呼びかけ、さまざまな活動を行った。市長にも請願のメールが多数送られたという。
そのかいあって2010年、台中市長は彩虹眷村を文化公園として保存すると約束、取り壊しは中止となったのだ。
・91歳になっても描き続ける黄さん
黄さんは、2013年で91歳。黄さんは彩虹眷村にちなんで「彩虹爺爺(虹のおじいちゃん)」と呼ばれている。日差しの強い日中は家の中にいることが多いが、運がよければバッタリ会えるとか。
放っておけば廃れる一方だった春安区の眷村に、今日も多くの人が訪れ笑顔があふれているのは黄さんのおかげである。黄さんは今も彩虹眷村に住み、村の中で絵を描き続けているそうだ。
■彩虹眷村の詳細データ
住所:台中市春安路56巷
アクセス:高鉄台中駅からタクシーで10分、台鉄台中駅からタクシーで20分
27路バス(台鉄台中駅-嶺東科技大学)「干城六村」下車(降車専用)
入場料:無料
※現在も人が住んでいるので早朝、深夜の訪問はご遠慮ください
▼こちらが黄さんの等身大の写真だ。運がよければ本人にも会えるそうだ
▼カラフルなアイアンマン! 彩虹眷村の新名物となっている
▼黄さんが描いた「日本人の女の子」
▼これは香港のスターのアンディ・ラウだそうだ
▼参観に関する注意書、訪問の際は住民の迷惑にならないようにしよう