2010年に行われた上海万博! 中国人客の割り込みなどが注目されたが、そこで、記者が目撃した知られざる中国ビジネスをご紹介したい。
当時、日本館やサウジアラビア館など人気パビリオンでは、待ち時間が5~6時間になることが多かった。炎天下に数時間の待ち時間は若者でもキツイ。それがお年寄りとなるとかなりキツイ。そこで各国パビリオンではお年寄りとその同伴者は優先して入場できるという規定を作った。
そこに目をつけた新しいビジネスがこの世に誕生した。「レンタルじいさん&ばあさん」だ。
■レンタルじいさん&ばあさんとは?
レンタルじいさん&ばあさん(以下レンタルじいさん)は、パビリオンに並びたくない人に、お年寄り自らが体を有料で貸し出すビジネスである。これでお年寄りと同伴者ペアができ優先通路を通ることができるのだ。
■利用したい人はレンタルじいさんを見つけて料金を払えばOK
利用は簡単。入場前にゲート付近で客引きをしているじいさん・ばあさんと交渉するだけだ。利用者はレンタル料と園内での食事などの費用を負担すればOK。あとは園内をレンタルじいさんとともに楽しめば良い。現地警備員に聞いたところによると当時のレンタル料の相場は1日200元(約2800円)ほどだという。
利用者は並ばずにパビリオンに入れてラッキー、レンタルじいさん・ばあさんはついていくだけでお金が入り、しかも食費も浮いてハッピー。まさかの両者ウィンウィンなビジネスモデルなのだ!
■とはいえルール違反はルール違反! 摘発はイタチごっこ
しかし、これでは正直に並んでいる人がバカを見ることになる。各国パビリオンは対応に追われた。あるパビリオンでは、年齢確認のために身分証の提示が必要だったので、提示された身分証にもとづき怪しい人物リストを作成したという。しかし、レンタルじいさん側も偽の身分証を用意するなど対抗。まさにイタチごっこだったという。
なお、レンタルじいさんの摘発は、利用者の事前打ち合わせができておらず、「親戚だ」と主張するのに互いの名前や誕生日が言えない、また同伴の幼児がレンタルじいさんの正体をバラしてしまうなどボロが出て御用となることが多かったようだ。何ともツメの甘い話である。
当時、レンタルじいさん&ばあさんをやっていたお年よりは今、どこで何をしているのだろうか。なお、上海では2015年オープンを目指し、ディズニーランドの建設が進められている。また新しいビジネスが生まれる予感である。
(写真、文=沢井メグ)