2012年9月、大手オークションサイトの「Yahoo! オークション」は、スキル・知識のカテゴリーを新設した。それにともなって、「エンタメ」という項目が設けられたことをご存知だろうか? そこに、ヘビメタアイドルとして活躍し「ロック界の妹」と称されるアリス十番が出品していたのである。
出品していたといっても、彼女たち自身を身売りしていたわけではなく、ライブの権利を販売していた。その彼女たちのライブを購入した人物がおり、10月10日に東京・芝浦でオークション初出品のライブが実施されたのだ。お客さんはたったのひとり。
会場の様子ははっきり言ってシュール! しかしながら、そのステージ内容は心温まるもので、ちょっと泣ける内容だったのである。
落札したのは大阪在住の松本あつしさん。彼はTwitterでアリス十番の存在を知り、彼女たちの関西遠征ライブを見て以来、すっかりファンになってしまったという。そんななか、彼女たちのライブの権利がオークション出品されているのを知り、入札したそうだ。
オークション開始時の金額は20万円。松本さんは22万2222円で参加した。他の人にさらに高値をつけられると思っていたのだが、そのまま落札されてこの日を迎えたのである。会場にはもちろん、松本さんただひとり。ほかには報道関係者がいるだけだった。
会場の雰囲気はシュールというよりほかない。普段ファンが大勢詰めかけている様子と随分異なり、寂しさを通り越して笑ってしまうほどだ。しかしながら、ライブが始まると、メンバーも松本さんも予想しないような展開が起きた。
それは、お互いがしっかりと向き合える状態が出来上がっていたため、ライブ開始直後から一体感が生まれたのだ。今まさに自分のために、アイドルが歌っている。そう思ったであろう松本さんは、なんと最初から涙を流していた。それを見たメンバーも感動のあまり、中盤のMCで思わず涙。そして最後は全員がステージに上がって、大団円を迎えたのである。
記者(私)は、取材のたびに彼女たちのライブを見ているが、彼女たちと松本さんの心が通っている様に、なぜか泣きそうになってしまった。アイドルであれ、バンドであれ、ミュージシャンであれ。ステージに立つ人が来場者と心を通わせる瞬間に、本当の感動が生まれるのではないだろうか。なかなかそのような感触をつかむのは難しいはず。今回のたったひとりへのライブは、その瞬間を垣間見た気がした。
大変感動したのだが、なぜか途中で松本さんにパンツが贈呈され、仕舞いには松本さんがこれを被り「ヘンタイ仮面」に変身したのには驚いた。さっきまでの感動はなんだったのか? と思わずにはいられないほどの激ぶりだったのである。とにかく、ヤフオクにアイドル出品という前代未聞の試みは、素晴らしいステージで幕を閉じた。
アリス十番の事務所関係者に、今後の出品について尋ねると、「同じ形では出品しません」とのことだった。つまりまた何か違う策を練って、ユニークな出品を考えているようである。いずれにしても、オークションの新しい可能性を感じさせるライブであったことに違いない。
レポート:フードクイーン・佐藤
Photo:Rocketnews24
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▼ ライブ前、緊張した様子のヤフオク落札者松本あつしさん。出演者より緊張している
▼ 会場に入ると、報道陣を除いて彼だけ。かなりシュール
▼ お客さんいない。いや、いる。松本さんがいる
▼ ライブスタート。最初の曲で松本さんは、すでに感動して泣いていた
▼ 真剣にステージを見つめる松本さんのまなざし
▼ 次第に緊張がほぐれ、立ち上がる松本さん
▼ ジェイソンマスクを持つと、高らかに掲げた!
▼ 次第に熱くなる松本さん
▼ 人手が足りないので、ダイブ用のやぐらを手伝わされる松本さん
▼ 推しメンの月村麗華さんから手紙と色紙のプレゼント
▼ 応援してくれる思いに、月村さんは思わず涙
▼ 途中でなぜかパンツがプレゼントされ、松本さんはブンブン振り回す!
▼ ボルテージマックス! パンツはブンブン!!
▼ 最後は松本さんもステージへ。唯一の客がステージに上がったから、客席は誰もいない……
▼ でも、最高に盛り上がったッ!!
▼ ライブ後に物販。先頭も最後尾も松本さん
▼ メンバー全員にお守りと手紙を手渡す松本さん
▼ プレゼントのパンツに、被ったままサインをもらう松本さん
▼ 物販後にツーショットチェキの撮影会。最後尾は松本さん、というかほかに誰もいないじゃない……
▼ その後、さらにメンバーとのユニットチェキ。もう最後尾は勘弁したれよッ! ひとりしかおらんのじゃーッ!!
▼ とにかく一生の思い出になったご様子
▼ メンバーにも温かいライブでした