台北観光の定番ルート・永康街。この国で一番有名な小龍包を出す「鼎泰豊(ディンタイフォン)」をはじめ、いつ行っても行列の絶品マンゴーかき氷屋など、有名店の密度が高い外食激戦区である。スカしたカフェも沢山あり、おしゃれな店内でくつろいでいると、いっぱしの文化人になったような錯覚をおぼえるから不思議だ。

そんな永康街を歩いて歩いて歩きまくった、どん詰まりの静かな場末に、「昭和町文物市場」という、うす汚れた看板を掲げたよれよれのビルがある。

看板に刻まれた名前、別段、日本文化にかぶれているわけではない。百年前の日本統治時代、ここ永康街一帯は「昭和町」と呼ばれていたそうじゃて。そんな古臭い名を掲げるこちらの建物は、通の間でちょっと有名な古道具・骨董市場なのでした。

無造作に乗り捨てられた駐輪場のチャリやスクーター(骨董品にも見えるが、売り物ではない)を乗り越え内部に入ると、通路の両側に数軒の小さな骨董ショップが向かい合い、店主とおぼしき老人たちが外の椅子で思い思いにリラックスしつつ、たまにやってくる客に鋭い視線をギロリと向けている。

骨董店は建物の一階部分のみ。宝石だの美術品は見当たらず、雑貨風のアイテムが圧倒的という親しみやすい品揃え。古典映画のポスターとか、おもちゃ、切手、アクセサリーなど、それなりに整理され陳列されているものの、客はまばら……というか、皆無だった。

なにがアレって、店主のやる気がまるでゼロ。たったひとりの客なのに、まるで透明人間になった気分だ。生活のためというより、ただ、ここでこうしていたいから店をやってる……みたいな感じ。本当にそうなのかもしれない。

営業時間は午後2時から午後10時。そういや、友達の無職・ニートがちょうどこんな生活時間帯だったなぁ……。とはいえ、よぼよぼになってからも、ビル掃除とかガードマンをさせられる日本の老人と比べ、数倍ゴージャスな余生を過ごしている彼ら。こんな人生もありかな。と若干羨ましく思うわたしでした。
(取材・文=クーロン黒沢

▼静かな路地の奥深くに「昭和町」があります

▼初老のおっさんが長椅子でぐったりしてたら、それが骨董店の印

▼掘り出し物が多すぎて店から溢れそう!