
いまや日常の情報源は、いうまでもなくネットの時代。いや、それすらももう古く、SNSは当然として、AIに聞くという人も少なくないはず。しかしそんな時代だからこそ、かえって書籍の重要性は増しているように思う。
PC・スマホの画面からではなく、紙を通して得られる知恵や知識もまた貴重。この先どれだけ時代が過ぎても、おそらく本がなくなることはないだろう。
では出版社はこの時代どんな基準で書籍化する企画を選んでいるのか? 実際に大手出版社「主婦の友社」に書籍の企画を持ち込んでみた。
・本の企画を持ち込み
実は私(佐藤)が主婦の友社に企画を持ち込むのは、これが初めてではない。昨年2月にも1度、ポールダンスに関する本の企画を持ち込み、あえなく断られてしまったのだが、1度断られたからといって折れるような男ではない。
懲りずに再び今回持ち込むことになったのは、書籍出版部の部長と編集長にお話を聞いて頂けることになったからだ。
同社の会議室で、私が相まみえるのはこちらの4名。
書籍出版部の井上部長!
同じく書籍出版部の三橋編集長!
以前持ち込みの際にお話を聞いて頂いた、編集ユニットの森元さん!
同じく以前お話を聞いて頂いた、編集ユニットの木村さん!
今回こそ攻略してみせる! 私にはある秘策があった……。これを聞けば、4名の皆さんは首を縦に振るに違いない。
やらいでかッ!!
佐藤「え~、本日お持ちしたのは、私の実体験をもとにした「ポールダンス」の書籍の企画です。以前、森元さんと木村さんにお話を聞いて頂きましたが、今回は井上部長と三橋編集長にお会いできる機会を頂きましたので、改めてお伝えさせて頂きたいと思いました」
井上部長「はい、お話はうかがってます」
三橋編集長「私も聞いてます」
佐藤「本書でお伝えしたいのはですね、中高年になっても挑戦次第で、自分の可能性は広がるということです。43歳から運動経験ほぼゼロでポールダンスを始めて10年。大きな大会に出場し、現在はレッスン講師をしつつ、ショーにも出演させて頂いてます。誰にでも、その可能性があると訴えたいんです」
井上部長「それはスゴイですね。そうすると、それはポールダンスの本というよりも、佐藤さんの体験談を元にした本になるかと思うんですよね」
佐藤「え? あ、はい。そうなんですけど~。ポールダンスの紙の書籍がないので、ぜひ作れたらいいなと」
三橋編集長「1冊もないとなると、そもそも需要があるのか? というところも気になりますね」
佐藤「需要はあります! 近年はYouTubeやSNSで情報を得ている方が多くいらっしゃいます。実際自分もYouTubeチャンネルをやってまして、そこで情報発信してるんですけど、やっぱり手元に情報が欲しいという声もありますので」
井上部長「なるほど、そうすると皆さん動画で情報を得ているってことですよね。つまり紙の本である必要はないんじゃないかな?」
佐藤「あ、いや、その……」
佐藤「正直なところ、以前木村さんに『書籍の購買層は全体の1パーセント』とうかがいました。正確な数字ではないですけど、おそらく日本のポールダンスの競技人口は5万人もいないと思います。ひょっとすると2万人くらいじゃないかと思っています」
木村さん「そうですね、仮に2万人だとしたら、1パーセントは200人なので、1000部にも満たない書籍の企画を通すのは、難しいとお話しましたね」
森元さん「類書がないのは、たしかに開拓の余地のあるジャンルではありますけど、売れるかというと難しいですね。売れるものであれば、類書があるはずなので……」
井上部長「佐藤さんのおっしゃる通り、需要はあると思います。ただ『ポールダンス』だけで書籍化するのは難しいので、仮に考えるとしたら『ダイエット』とか『中高年』とか、佐藤さんの経験と属性を通したものを掛け合わせてじゃないと、ポールダンス単体では難しいんじゃないでしょうか」
三橋編集長「あとは佐藤さん自身の経験をロケットニュースで連載して、それで人気連載という風になれば可能性は十分にあります」
井上部長「おそらくやり方はあるかと思うんですが、これを形にするには、まず佐藤さんの方で連載して頂くところから始めてみると良い気がします」
佐藤「そうですね、それも以前森元さん・木村さんにご提案頂いたのに、私が何もしないまま今回再び同じ話をしてしまいました。もう1度持ち帰ります。またチャンスを頂けるのであれば、リベンジさせてください」
井上部長「期待しています。佐藤さんならきっと形にしてくれると信じてお待ちしています」
佐藤「ありがとうございます!」
・ロケットの本の企画も……
佐藤「……まあ、こんなこともあろうかと、次の策を用意しておりました! もう1つの企画なんですけどね……」
井上部長「お! まだ、ありましたか! 聞かせてください」
佐藤「次はですね、うちのサイトで過去に実践した『検証系』の企画をまとめた書籍の案です」
三橋編集長「へ~、面白そう」
佐藤「2008年のドメイン取得以来、18年間でもう数え上げればキリがないほど、たくさんの検証を実践してきました。すでに我々メンバーも忘れてしまったようなものも数多くあります。それらの中から、特に役立つものをピックアップして1冊にまとめたら良いじゃないかと思っています」
三橋編集長「この表紙の案ですけど、どちらかというと『ロケットニュース24』のロゴが小さい気がするんですけど、『検証大全』というのを前に出したい感じですか?」
佐藤「ええ、役立つものをまとめて手に取って頂けるものになれば、特にうちの名前は要らないと思うんですけど」
井上部長「それもったいなくないですか? ロケットニュースの熱心な読者の方って多いと思うんです。実は僕も好きで読ませて頂いてますよ。佐藤さんが中澤さんと徒歩で新宿から横浜中華街まで行かれた記事が好きです」
佐藤「え! ああ、ありがとうございます!」
井上部長「そういう熱心な読者の方に向けたものの方が良いと思うんですよ。良い書籍って、熱心なファンの方に支えられているものが多く、コアなファン層からライトなファン層、そして一般層へと拡大していくんですよ。だから名前を伏せるのは非常にもったいない。
どうせ出されるのなら、2028年で20周年ですよね。そのときに『検証大全』ではなく、『ロケットニュースの20年』みたいなまとまった形にした方が良いと思いますよ」
佐藤「たしかに~~!」
三橋編集長「クラウドファンディングとかやったりしてね」
佐藤「さすがですねえ~! その手があったか、全然気づきませんでした~~!!」
・書籍化が通る企画
佐藤「そうすると、おうかがいしたいのがうちで連載している『魔王軍はホワイト企業』です。すでに5巻まで刊行して頂いているわけですけど、この作品はどうして書籍化の企画が通ったんでしょうか? 連載段階で何か惹き付けるものがあったんですか?」
森元さん「それについては私から良いですか? 魔王軍はいろいろな要素が連載の段階ですでに詰まってたんですよね。まずタイトルなんですけど、たしか連載を始められた当初、『ブラック企業』とか『退職代行』などが話題になっていたと思います。
普通に考えてゲームや漫画に登場する『魔王軍』ってブラック企業のイメージがあると思うんです。それを『ホワイト企業』にするところがウィットに富んでて、『え? どういうこと?』と続きを読みたくなる導入になっているんですよね。
実際その内容も魔王様が部下たちを働かせ過ぎないように気遣ったり、育休の話を自らし出したりと、およそ魔王らしからぬ行動や言動をとるんですよね。そのミスマッチが妙にクセになる要素としてあります」
森元さん「それから多くの魅力的なキャラクターが登場して、それぞれの物語が展開していきます。4コマなのに話が単調にならず、作品の世界がどんどん拡大していくところも大きな魅力ですね」
木村さん「それから熱いファンの方が多いのも、強い後押しになっています。刊行のお話をさせて頂く前から、長く読んでいらっしゃるファンの方が多いのは、佐藤さんもご存知ですよね」
佐藤「ええ、うちの人気連載ですから」
木村さん「先ほど井上が言ったように、コアなファンからライトなファン、そして一般層へと拡大していくポテンシャルをもともと持っていたんです。ですから、ある意味コミカライズは必然みたいなところはありましたね」
佐藤「う~ん、なるほど」
※ロケットニュース24で連載中の「魔王軍はホワイト企業」は、1巻、2巻、3巻、4巻、5巻まで発売中です
井上部長「今回、お持ちいただいた企画は、現状では即書籍化というわけにはいきませんが、ロケットニュースには魔王軍という成功事例があります。それにならって連載とか企画を広げていけば、2つの企画も書籍化できる可能性は十分にありますよ」
井上部長「まずは2年後のロケット20周年に向けて、企画を練られたらどうでしょうか? クラファンも含めて」
佐藤「そうですね、持ち帰ってみんなで考えてみたいと思います」
井上部長「いつでもご相談ください。応援しています!」
佐藤「ご期待にそえるようにがんばります!」
ということで、今回も書籍化の提案は上手くいかなかったが、たくさんヒントを頂いたので、それを活かしてさらに書籍化案をブラッシュアップしたいと思う。いつかは本を出したいとお考えの方は、今回の内容を参考にして頂きたい。
取材協力:主婦の友社
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24.
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