ロケットニュース24

中国山西省の屋台床屋(160円)で「ハーランドにしてください」と言ったら、現地民がW杯級に盛り上がった話

約1時間前

クライマックスを迎えているW杯。準決勝、決勝、3位決定戦を残すのみとなったが、準々決勝で惜しくも敗れベスト8で止まったノルウェーのハーランドは、本大会の盛り上がりの立役者の1人だったと言えるだろう。

なにせ決勝トーナメントでブラジルを倒したんだから怪物と呼ばれるのも納得。私(中澤)は中国にいたんだけど、中国のテレビでも練習中のハーランドの映像が流れていたくらい。そこで中国山西省の屋台床屋で「ハーランドにしてください」と言ってみることにした。

・山西省の路上に激安床屋

皆さんは中国に屋台床屋というものがあることをご存知だろうか。私(中澤)は知らなかったんだけど、山西省大同市の平城区南環路を歩いていたところ『便民发屋』という屋台が出ていたのである。

屋台には「理发8元」というワードも書かれている。「理发」は理容室的な意味なので、散髪8元(約160円)は確かに安い。QBハウスの約10分の1の価格だ。

・夜市の時間に通りかかると

しかし、屋台はどうやらクローズ中の様子。発見したのは日中だったんだけど、真昼間にやってないということはすでに閉店してしまった店なんだろうか? なにせ8元だしな。と思いきや、夜にフラッと通りかかったところ……


オープンしてる!

屋台は理容師のおばちゃんと客1人で満員の狭さ。でも、椅子もちゃんとあって必要最低限の環境は整えられている。営業中の様子を見ると、クローズ時の外観からの想像よりもしっかりした理髪店であることが分かった。

・一期一会

どうやらこの辺りの現地民は暑い日中を避け、朝と夜に出歩く習慣があるようだ。そのためか、夜は毎日ストリートに屋台が並ぶちょっとした夜市になっていて、『便民发屋』も人が多くなるタイミングで営業している様子。カッチリしてないゆえにオープンしているのを見てテンションが上がってしまった。今しかねえ!

なにせ中国山西省大同市の名もなきストリート。人生でもう2度とここを訪れることはないかもしれない。そこで理容師のおばちゃんに日本人だけど散髪してもらえるかを確認してみたところ「いいよ」との回答。そんなわけで現地民に交じって順番待ちをすることに。


・ウェルカム精神

1人10分くらいで終わる散髪。回転率がかなり早いため待ち時間も20分くらいだろうと並んでいたら、前に並んでいたおじさんが「先切っていいよ」と順番を譲ってくれた。どうやら、日本人が珍しいらしく、おじさんのおもてなし的な気持ちが伝わってきたため、お言葉に甘えさせてもらった。

しかし、カットのオーダーとかできるものなのだろうか? なにせ8元だ。ただ刈るのみであってもおかしくない。なおかつ、複雑なコミュニケーションは言葉の壁があるため不可能。そこでシンプルに「ハーランドにしてください」と伝えたら……

「ハーランドって何?」と理容師のおばちゃん。なお、私は中国語が欠片も分からないのでこれまでの会話全てニュアンスとボディランゲージによるものだが、ハーランドの髪型はボディランゲージで伝えやすいから糸口としてちょうど良い。そんなわけで、画像を見せながらこういう感じというのを説明したところ……

・ハーランド知らんけど

「やってみるか」という雰囲気に。ハーランドは知らなかったけど私の意志は伝わったようだ。スマホの画像と見比べてカットを検討するおばちゃん。

イメージが固まったのか散髪ケープをかぶせてくれる。椅子の前には鏡も設置されていて、カットが始まるとますますちゃんとしてる。シミュレーションが終わったのかその後は早かった。

まず髪を霧吹きで濡らし、上半分の髪をくくってハーランドカットのちょんまげ部分を作成すると……


バリカンいった!!

・集まってくる現地民

迷いのない手際。そのおばちゃんのファンなのか、それとも日本人客が珍しいのか、気づけば店の周りに集まってくる現地民たち。ざわめきから注目を感じる。


なんなら近所の屋台のおじさんもかぶりつきで見ていた。


・平和の象徴

さらには、完成した時、なぜか上がる歓声。電器屋のテレビでW杯を観るみたいな一昔前の一体感を感じたのであった。多分、誰一人としてハーランドを知らないと思うが。

10分間だけ現地のヒーローになれた気がした160円ハーランド。中国山西省の小さな屋台床屋を小さなスタジアムと化し、ハーランドを知らない人さえブチ上げるパワーはまさしく怪物。ありがとうハーランド。ありがとう『便民发屋』。国境を越えた一体感をありがとう。

日中関係の悪化がニュースになっている昨今。中国にいることをSNSでポストすると「大丈夫か?」と心配する連絡も届いたりした。日本にいると、その気持ちも分からんでもないし、必ずしも杞憂とは言い切れないニュースも報じられる。

ただ、現地の関わりは国と国である前に人と人。日本で争いを望んでいる人は少ないと思うけど、それは中国でも同じように感じたのであった。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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