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【天才か】奄美大島で「音楽で育てた黒糖焼酎」を飲み比べたら舌の上でフェスが始まってた / 鹿児島県奄美市「西平酒造」

45分前

先日、人生で初めて奄美大島の地を踏んだ私(耕平)。で、奄美といえば私みたいな飲んべえには、奄美ならではの「黒糖焼酎」は外せない。

せっかく来たなら飲むだけじゃなく、作っている現場も見てみたい。ふと思い立ち、到着後に見学できる酒蔵はないかと、慌ててネットで検索した。

で……ダメもとで予約したら、なんと見学がOK! ラッキーと思って、軽い気持ちで向かった酒蔵で待っていたのは、私(耕平)の想像の遥か斜め上をいくトンデモ体験だったのだ──。

・えっ、この方が酒造の社長さん?

伺ったのは、奄美市名瀬(なぜ)の小俣町(こまたちょう)にある「西平酒造」。1927年(昭和2年)創業、約100年の歴史を持つ老舗の酒蔵だ。


街中にひっそりと佇む工場の壁には、「奄美特産黒砂糖焼酎」の文字と、かすれた屋号の看板。このレトロ感、もうそれだけでテンションが上がってしまう。「こういう町工場みたいな酒蔵、好きなんだよな~」なんて思いながら入口へ向かう。

そんな軽いノリのおっさんが、この直後から3段階くらい面食らうことになる。その入口はこうだ。

待つこと数分。笑顔で出迎えてくれたのが、四代目代表取締役の、西平せれなさんだ。


えっ、この方が社長さん?


いや、ギャップがすごすぎる……私の中の「酒蔵の社長」のイメージといえば、貫禄たっぷりで職人肌の年配の方。

それを良い意味で裏切った、にこやかで話しやすい女性……しかも社長業もこなしつつ、ミュージシャンとしての顔も持つのだとか。いきなり、私の脳は完全に渋滞した。


・黒糖焼酎ができるまで

まず案内されたのは、黒糖焼酎を仕込む製造エリア。ガラッと引き戸を開けた瞬間、ふわっと麹の甘い香りが鼻をくすぐる。


それでは、せれなさんに案内してもらいながら、黒糖焼酎ができるまでの工程をざっと追ってみよう。


① 約400kgのお米を、ドラム式の設備で洗って蒸す(1回の完全仕込みで660kg)。蒸した米に白麹菌を振りかけて馴染ませる。


「三角棚」に移して温度管理しながら発酵。翌朝には米麹が出来上がる。


③ 米麹・酵母・水を「甕(かめ)」に入れて5日間発酵(これが一次仕込み)


④ 溶かした黒糖と合体させ、タンクでさらに2週間発酵(二次仕込み)


⑤ 出来上がった「もろみ」を蒸留機で蒸留


貯蔵タンクに移して、最低1年寝かせて出荷


ちなみに一次仕込みを「甕」でやるのが、西平酒造のこだわりポイントだという。そして1回の仕込みで出来るのは、原酒のまま瓶詰めすれば、一升瓶で約800本。約100年続く伝統の技、まさに職人仕事である。

ここまでの話を聞いただけでも十分に面白いのだが、本番はこの後にやってきた──。



・音楽で焼酎を育てる?

醸造工程の見学を終えて、せれなさんに連れられ黒糖焼酎の試飲ができるという別棟へ。


中に入り貯蔵庫に案内される。ドアを開けると、そこには……


えっ? ミニシアター??


部屋の両端にびっしりと並べられた樫樽(かしだる)の間に、椅子が並び、スクリーンがある。ここでライブやイベントを開催することがあるとのことだ。


そして後ろを振り返ると、西平酒造で作られているブランド焼酎の試飲スペースが。


ここで、せれなさんが一つ一つ説明してくれながら、試飲させてもらう。


もう美味すぎて、この時点で満足だ。ひと通り飲み終えると、せれなさんが「うちの1番の変わり種をご紹介しますね」と奥の扉に案内してくれた。


すると……


なんじゃ、こりゃ〜!!!


樽の真横に、木製のスピーカー。しかも、しっかりアンプに繋がっている。


これは一体……? と聞くと、「このスピーカーで大音量の音楽を鳴らして、ジャンル別にどんな振動の違いが出るか実験しているんです」とのこと。

その名も「Nishihira’s Sonic Aging(ニシヒラズソニックエイジング)プロジェクト」。流しているジャンルは、ハウス・レゲエ・ヒップホップ・ラテン・ロック・島唄の6種類。


「焼酎の樽が振動で揺れると、中の焼酎も揺れて、樽の色素や成分の抽出度合いが変わるんですよ。実際、6ジャンルの中で一番揺れているのがレゲエ、一番揺れていないのが島唄です」と、せれなさんが説明してくれた。

しかも出勤と同じタイミングの朝にスイッチを入れ、毎日8時間流し続けているというから徹底している。計算すると、1年で約2000時間。マジでこだわりがすごすぎる!


ただ話を聞いただけでは、同じ焼酎でも音楽を聴かせることで味が変わるというのは、にわかに信じがたい。「ほんとに味、変わるんですか?」と半信半疑の私に、せれなさんが場所を移して、2階のテイスティングルームへ案内してくれた。



テーブルには、6本の小ぶりなボトルが並び、それぞれ「Latin(ラテン)」「Hip-Hop(ヒップホップ)」「House(ハウス)」「Rock(ロック)」「Reggae(レゲエ)」「Shimauta(島唄)」のラベルが貼られている。


私は迷った末、「島唄・レゲエは絶対飲みたい。あと1本はジャンルが分かりやすいロックで」とオーダーした。


3本を並べてみて、まずビックリ。色が違う。一番濃いのはレゲエ、一番淡いのは島唄だ。「一番揺れているレゲエは、樽の成分が一番抽出されているので色も濃くなるんですよ」と、せれなさん。


島唄を口に含むと、まだ少しアルコール感が残っていて、角がある若々しい印象。続いてレゲエ。口当たりはまろやかで、樽の香りが濃厚、ほのかな苦みまで感じる。そしてロックは、両者の中間にどっしりとした厚みが加わった感じ。


同じ原酒、同じ樽、同じ環境、同じ期間……違うのは「聴かせる音楽」だけ。なのに、ここまで味わいが別物になるとは……! まさに “舌の上でフェスが始まった” 気分だ。


さらに「必ずしも1番揺れたレゲエが美味しいというわけじゃなくて、好みが絶妙に分かれるんです」と、せれなさんは言う。音楽と一緒で、正解がない。だからまだちゃんと大々的には売り出していないのだとか。

続けて「今後はアーティストとコラボしたり、世界の民族音楽を聞かせてみたり、いろいろやってみたくて……」と、目を輝かせるせれなさん。


マジで熱量がハンパない。なるほど……たとえば好きなアーティストの代表的なアルバムを1年間聴かせ続けた黒糖焼酎が、“限定販売” みたいな感じで販売されていたら、私なら少しくらい値が張っても、たぶん速攻で買うと思う。

しかも、それが世界的に広がったら……いや、スケールがデカすぎる! さらに聞いたところ、すでにロンブーの田村淳さんが主催しているオンラインサロンとコラボして、オリジナルの黒糖焼酎を完売した実績があるという。



・まとめ

長年の伝統を守りながら、音楽で焼酎を育てるという度肝を抜く挑戦を続ける西平酒造。事前のリサーチを何もしないまま、ノリで酒造見学に申し込んだにもかかわらず、こんな感動に巡り合うとは想像もしていなかった。

酒蔵見学は予約制なので、奄美大島に行く予定のある方は、ぜひ事前にホームページから予約して訪れてみてほしい。耳で聴く音楽もいいが、舌で味わう音楽というのも、なかなかオツだぞ!

参考リンク:西平酒造 
執筆:耕平 
Photo:RocketNews24.

▼西平酒造の魅力を全力で語ってくれた、せれな社長の本気度が伝わった


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