
桜の名所は春になると混雑する。花見の場所取りなんかは、映え文化以前から春の風物詩であった。
訪日観光客の増加で混雑が加速して、今年は桜祭りを中止したり、桜のまわりで座ったり立ち止まったりできないようにしている自治体が出ている……と朝のワイドショーで報じられていた。
そんな中で花見のスタイルが変化して「ひとり花見」をする人が増えていると、ニュースは続けて紹介。なるほど、ひとりの花見もいいものだよねと思っていたのだが、ニュースは思わぬ方向に進み……私は朝からブチ切れていた。
・ひとり花見をする男性の取材で
そのワイドショーでは、混雑する桜の名所の中でひとりで花見をしている人を実際に取材していた。
取材を受けたのは30代の男性で、ベンチに座ってコーヒーか何か飲みながら、かれこれ1時間ほどひとりで花見をしているという。なんともいい時間の過ごし方だなあと、私は感心した。
しかし、ワイドショーはそこで終わらず、男性に「いまお独りですか?」と質問。男性に恋人がいるかいないかを確認したのである。この時点で私は失礼だなと思ったのだが……。
「ええ、まあ……」と苦笑する男性に対し、恋人に求める条件などをわざわざ聞き出し、最後に「恋の花も咲くといいですね♡」と、大きなお世話としかいえないオチをつけたのである。
_人人人人人人人人_
> うるせえ!<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
爽やかな月曜の朝が、ブチ切れから始まってしまった。何もそんなことで怒らなくても……と多くの人は思うだろう。
だが、私は腹を痛めて産んだ母親が「あんたは気難しい」と言うくらいには面倒な人間である。
ひとりで花見を楽しんでいる人を捕まえて「恋の花も咲くといいですね♡」ってなんだよ。
ひとりの時間がどれほど尊いか知らんのか。
ひとりで花見をするのはそんなに寂しいことなのか? っていうか、そんなに恋人とかいなきゃダメなのか?
結婚してもうすぐ子供も生まれるが、私はひとりの時間を愛しており、この報道にはモーレツな違和感を覚えたのである。
・ひとり花見の素晴らしさを伝えたい
そもそも私は取材のためにひとりで花見に行くことが多い。埼玉の幸手権現堂も、山梨県の桃源郷にもひとりで行った。早朝の上野公園の花見もひとりだった。
プライベートでも、ひとりで花見やらピクニックやらをすることが多い。ひとりで花や自然と向き合い、ぼんやりする時間は何にも変え難い贅沢だと思う。
・メリット①準備も場所取りも不要
まず、なんといっても場所取りが不要であることが大きい。どんなに混雑している花見会場であっても、人ひとりくらいなら座るスペースは確保できる。
複数人で花見に行ってまず困るのが場所取りだと思う。ひとりなら、レジャーシートが敷けなかったとて、小さいアウトドアクッションのひとつでもあれば、そこが自分のテリトリーとなる。道端に咲いてる桜一本でも、近くにベンチがあれば花見は可能。
さらに良い場所が取れたと思っても、隣の客がうるさくて最悪だった……なんてこともある。ひとりなら嫌な隣人が来ても、自分ひとりでサッサと移動できて身軽なところもいい。
・メリット②人と予定を合わせなくていい
人と花見をするとなったときに、大変なのが日程調整。桜が咲いているか、天気はどうか、みんなの休みのスケジュールは……などなど、考慮しなくてはいけないポイントがたくさんある。
みんなが集まれる日や、天気のいい日が満開日とは限らない。
天気はよかったけど、桜はあんまり咲いてなかった、もう散ってた……など、ベストなコンディションで花見できることはぶっちゃけレア。
その点、ひとりならば思い立ったが吉日で、満開の桜の下で花見ができるのである。
天気がいいから早起きして花見の名所に行くか、なんてことも簡単にできるし、会社帰りに夜桜を見ながら缶ビールとつまみを楽しむのだって十分な花見である。
・メリット③じっくり桜を見られる
実はこれが一番大きなメリットだと個人的には思っている。
恋人や友達と一緒に花見をすると、楽しい反面、花より団子になるし、おしゃべりが盛り上がって桜はじっくり見なかったってこともある。
ところが、ひとりだとどうでしょう。しみじみと桜を見るんですね……。ちょっと考え事とかしながら。
場所を変えたりしながら、春の陽気のなかでぼんやりと桜を眺める。花見の景色で思い出すのは。ひとりで行ったときばかりかもしれない。
風が吹いて花びらが舞ったり、空の色が変わったり、美術館で有名な絵画を見るよりも美しい瞬間に出会えることも。
自分が好きな飲み物を持って、文庫本を読みながらレジャーシートの上でゴロ寝するのなんか最高。春の新宿御苑に行くと、そんなふうに自由に桜を楽しむ人がたくさんいるわけで。
・もっとみんなひとり花見するべし
ワイドショーのアンケートによると、ひとり花見をしようと思っていると答えたのは約9%ということだったけど、この自由で贅沢な時間は、もっと一般化してもいいと思う。
誰かと見る桜ももちろん美しいけれど、一人で静かに見る桜もまた美しい。「ひとりで花見なんて寂しくないですか?」なんて質問は野暮である。
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.