「寿司屋の腕は玉子で分かる」「中華の腕は炒飯で分かる」これらは昔からある言説だ。正直、玉子が普通でも他のネタはウマイ寿司屋もあると思うので、私(中澤)としては「ハハハ思い切ったこと言うね」程度である。

ゆえに、これから私がする話も話半分で聞いていただけたら幸いなのだが、立ち食いそばの連載『立ち食いそば放浪記』も385回目にして思ったことがあるんだ。それは「立ち食いそば屋の腕はカレーそばで分かるのではないか」ということである。

・カレー南蛮の発祥

そば屋のカレーそばのルーツは、中目黒『朝松庵』が明治に発明したカレー南蛮と言われている。で、発明当時、老舗そば屋に相手にされなかったことは以前の記事でもお伝えしているが、私はその発明者のお孫さんで朝松庵の4代目店主である角田米子さんに当時の話を聞いたことがある。

その時の話によると、洋食との融合というハイカラ的な邪道さはもちろんだけど、カレーでそばの風味が飛ぶというのも老舗そば屋から門前払いを受けた一因としてあるようだった。

・そんなふうに考えていた時期が俺にもありました

ゆえに、現代でも「カレーそばはむしろ誤魔化せる代表格だろ」と思うそば好きもいるかもしれない。私も「味がカレーで底上げされハズレが少ない反面、差はつきにくいレシピ」と考えていた。

事実、カレーそばを食べることがあっても味は中央値に寄っている印象だった。当たりハズレの無さが魅力の1つ……そう思っていたんだけど、ここ最近、その分厚い中央帯をブレイクスルーしているものがあることに気づいた。

・天井突破の概念

例えば、日本橋の『そばよし』は鰹節問屋直営で出汁の風味が強いことで知られているが、カレーそば(税込590円)においても鰹の風味が圧倒的だった。強固なカレーそばの普通から出汁の風味が突出しているのである。

この時点で「立ち食いそば屋の腕はカレーそばで分かる説」を考え始めたんだけど、そんな中、なんとそばの風味が突出しているカレーそばに出会ったのである。

・衝撃

カレーそばなのにそばの風味が飛んでない。カレーを越えて香ばしい旨みがしっかり感じられる。このカレーそば凄いぞ! 私がちょっと感動すら覚えたのが……


人形町『福そば』の「カレー南蛮(税込640円)」だ。

カレーつゆの味づくりなのだろうか? でも、つゆもそばつゆのコクとカレーのスパイシーさが強い深みのある味で、腕が良いと言う他ない。

・立ち食いそば屋の腕はカレーそばで分かる説

都内立ち食いそば屋のカレーそばと言えば、笹塚『柳屋』のキーマカレーそばが有名だけど、あれがアイデアで天井突破したものだとするなら、福そばのカレー南蛮はシンプルな職人レベルの高さを実感できた。

カレーが天井になるからこそ、天井突破していることが分かりやすい「立ち食いそば屋の腕はカレーそばで分かる説」。カレーそばというフィルターを通して見ると真実が見える……かもしれない。

・今回紹介した店舗の情報

店名 福そば
住所 東京都中央区日本橋人形町1-16-3
営業時間 月~金7:30~17:30
定休日 土・日・祝

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼「立ち食いそば屋の腕はカレーそばで分かる説」を確立した『福そば』のカレー南蛮

▼良い唐辛子があるからそれでスパイシーさをアップするのも良し

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