世界的ギターブランドであるフェンダー。現代ギターの礎を築いただけでなく、今もトップを走る続けているところはまさにパイオニアである。ギタリストである私(中澤)としては、なぜ世界初の直営旗艦店が原宿なのか分からないくらいのブランドなのだ。

この度、そんなフェンダーがドイツで中華ブランドを訴え勝訴したのだが、その判決に注目が集まっている。ストラトキャスターをメインに使っている私も注目せざるをえない話だったためお伝えしたい。これは確かにギター業界にとって重要な判決だ。

・裁判の内容

まず、フェンダーが何で中華ブランドを訴えたかと言うと、ボディデザインの著作権について。簡単に言うと、AliExpressでドイツ向けに販売されていた『Yiwu Philharmonic Musical Instruments Co.』のギターが、フェンダーのStratocaster®のボディデザインを違法に複製していたという内容だ。

フェンダーのプレスリリースによると、「ドイツ・デュッセルドルフ地方裁判所の判決により、ドイツおよび欧州の著作権法のもとでフェンダーの象徴的なStratocaster®のギターボディデザインに対する広範な法的保護を確立する重要な判決を獲得しました」と記載されている。

要するに、中華ブランドがパクリであることが認められたってことだ。おそらく、ギターに疎い人は中華ブランドのパクリが裁判所からパクリと認められただけだと捉えるだろう。では、なぜこの判決で楽器界隈がザワつくのか? それはギタリストなら大体知っている業界の暗黙の了解に由来する。

・ギター文化と暗黙の了解

冒頭で言った通り、フェンダーはギターの礎を築いたブランド。さらに、ストラトキャスターは中でも1位くらいのロングヒットデザインなので、もうほとんど教科書みたいになっている。

ゆえに、昔から色んなメーカーがストラトキャスターコピーのギターを出している。今回の中華ブランドだけじゃなく、色んなメーカーが同じような形状のものを販売している状態なのだ。

例えば、BACCHUSのストラトは価格の割に良いとかギタリスト同士の話に上がるレベルで当たり前となっている。そういう状況の中で、なんとなく暗黙の了解となっていたのが「ヘッドの形状さえ違えばOK」という価値観だった。

だが、今回フェンダーが裁判を起こし勝訴したのはボディーデザイン。ボディーデザインがストラトキャスターなのは今回の中華ブランドだけではないから、「他のメーカーのストラトシェイプはどうなるの?」と注目を呼んでいるわけだ。

要するに、暗黙の了解でお目こぼししてもらってたみたいな状況にフェンダーが一歩を踏み出した裁判だったというわけ。

・フェンダー以外のストラトキャスターは無くなるのか?

ちなみに、ボディの形状で言うと、ギブソンがディーンを訴えた裁判もギブソンが勝訴しているから、今回フェンダーの勝訴は当然だとは思う。けど、その奥にはすでに歴史とファンを確立しているメーカーも見え隠れするから楽器界が静かに激震しているのだ。

もちろん、この懸念はフェンダー側からしたら当然予想しうるものだと思われる。なので、プレスリリースの以下の部分がその回答に当たるのではないかと私は見ている。


「フェンダーは今回の判決について、ギター業界における革新や健全な競争を制限するものではなく、明確な権利侵害に対する適切な対応であると強調しています。同時に、今後もオリジナリティ、新しいデザイン、および創造的な発展を支えていく姿勢を示しています」


──現時点では「悪質だったから」と言っているように受け取れる。まあ、最後は単なる私の見立てであり、希望的観測を含んでいるわけだが、一つ言えることは、まるでVTuberの会社が炎上させる系の切り抜き師に対応した時のような文言だということだ。

そう考えると、この話って楽器界隈だけの話じゃないはず。ウェブ記事も動画も絵もパクリだらけな昨今、クリエイターは大なり小なりフェンダーの今回のムーブが理解できる部分があるんじゃないだろうか。

こんな時代だからこそ、元ネタにリスペクトを。以上、ギタリストで20年フェンダーのストラトキャスターを使ってる私の本件についての解説でした。発表の詳細な内容についてはフェンダーのプレスリリースでご確認いただけると幸いである。

参考リンク:PRTIMES
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼このニュースを見て、いつも使ってるフェンダーのストラトキャスターと以前の記事で購入した中華ブランドのストラトを比較してみた結果

▼私が思ったこと「これは訴えられても仕方ないかも……」