古来より「一年の計は元旦にあり」とよく言われる。文字通り、一年の計画は元旦のうちに立てるべしとの意味である。

が、そう言われても元旦という極めて短い時間のあいだに一年を通しての計画を立ておおせるなど、個人的には人間離れした所業としか思えない。ゆえにこのたびの年始においては、筆者はただ一つの抱負を打ち立てることにのみ注力した。

すなわち、「1月が終わらぬうちにコメダ珈琲店を初体験する」ことである。色々と噂に伝え聞く同店に興味を持ちつつも、いまだにその地に足を踏み入れたことがなかったのである。

かくして筆者は、2026年1月中旬の昼下がり、初体験を叶えるべくコメダ珈琲店を訪れた。

同店について気になっているのは、ドリンクメニューというよりやはりフードメニューである。先ほど「色々と噂に伝え聞く」とは書いたが、正直に言えば噂の9割方がフードメニューの規格外のボリュームに関するものだった。

メニュー写真より実物の方が大きい「逆詐欺」とまで称されているのを、ネット上で何度も見かけたことがある。しかし性根のひねくれている筆者は、その「逆詐欺」にやや懐疑的である。

本当にそこまで言われるほど大きいのか。皆が面白がって持てはやした結果、変な具合に歯止めが利かなくなっただけではないのか。実際に確かめなくては信じられない。そんな腹の内を携えて店に入った。

メニューを開き、目に留まったのは「カツパン」という商品である。写真の時点ですでに大きく見えるのに加え、「揚げたてサクサクビッグカツ」という文言さえ添えられている。

あらかじめ「ビッグカツ」と伝えられた人間を驚かせるのは並大抵のことではないわけで、それをやってのける商品が果たして出てくるのか。お手並み拝見とばかりに「カツパン」を注文した。ちなみに筆者の入った店舗では、価格は1020円だった。

そして待つことしばらく、その時はやってきた。対面を待ち望んだ「実物のコメダ」が、とうとう筆者の前に姿を現した。

大きすぎやしないだろうか。もう一度書くが、大きすぎやしないだろうか。

この大きさは何事か。並んでいるおしぼりが、まるで赤子のようである。ポケットサイズの辞書が運ばれてきたのかと思った。今すぐ立ち上がって厨房に飛び込み、「ポケットサイズの辞書で型を取っていないか」と詰問したい気持ちに駆られる。

一応3等分になるようにカットされているようだが、3等分してあるから何なのかというボリュームである。暴力的なまでのお手並みをまざまざと見せつけられ、筆者は度肝を抜かれていた。

とはいえ、それも数秒のことだった。度肝が抜けた穴を満たすように食欲がこみ上げる。抗うことなどできず、目の前のパンにかぶりつく。

豪快な見た目に反して、口の中に広がる味わいは精緻だった。確かにカツの衣はサクサクとしているが、中身の肉はパンに負けじと柔らかく、酸味のあるソースも相まって非常に食べやすい。オプションとしてマヨネーズの代わりに選んだ辛子マヨネーズの風味も良い。

おかげでこのボリュームでも飽きないどころか、食べ進めるほどに引き込まれる。食べきれないどころか、もっと味わっていたい。単なる「逆詐欺」だけなら話題になるわけはないと証明するかのごとく、何とも丁寧な仕上がりである。

これがコメダ珈琲店かと思う。まだ一品を食べただけだが、真髄に触れた感触がある。エンタメ精神とホスピタリティの両輪をもって、同店は今の確固たる地位にたどりついたのだと、この「カツパン」が教えてくれた。

いつしか筆者のひねくれた性根もすっかり鳴りを潜め、ただ幸福な時間に浸る、一人のコメダファンと化していた。食べ終わるとさすがに夕食に響くくらい満腹になったが、心地良い活力を得たようでもあった。自分にとっての寄る辺が一つ増えたような、そんな一日だった。

この記事が少しでも読者の方々の心に響き、コメダファンが増えるささやかな一助となれれば幸いである。そうして同店が今よりも一層、ビッグな存在になることを願う。無論ここで言う「ビッグ」とは、あらかじめ身構えていても度肝を抜かれる「ビッグ」である。

参考リンク:コメダ珈琲店 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:RocketNews24.

▼コメダの「カツパン」。「逆詐欺」は本当だった。