
つい先日当サイトにて、松屋の「うまトマバジルチキンプレート」という新商品を記事に取り上げた。同店の大人気メニューである「うまトマハンバーグ」のソースを用いたパスタで、2025年10月14日から店舗限定で販売されている。
実はそれより少し遡った10月8日に、同じ松屋フーズの豚かつ専門店である松のやも、コラボと称して「うまトマ」系メニューを発売していたことに筆者は最近気付いた。その名も「うまトマロースかつ」。文字通りロースかつに「うまトマ」ソースをかけたものだ。
さすがにここまで立て続けの、しかもグループぐるみでの「うまトマ」流用は目に余る。まるで「こうしておけば君たちは食べに来るのだろう」と言わんばかりである。そして実際、その通りなのである。
穴が開くほど足元を見られていることを悟りながらも、気付けば筆者は松のやに向かっていた。悔しいかな、「うまトマ」の悪魔めいた誘惑には抗えないのである。
憎らしいことに、「うまトマロースかつ」のバリエーションとして「うまトマメンチかつ」も販売されていたが、今回は前者を定食セットで注文した。価格は単品なら780円、定食セットで980円だった。
料理を待つあいだ、理性を振り絞って筆者は考えた。まだ「うまトマロースかつ」が美味しいと決まったわけではない。万が一ということもある。その場合はしっかりと真実を記さなくてはならない。
無条件に「うまトマ」を肯定するだけの生き物になってはならない。「うまトマの虜となるも、奴隷となるなかれ」である。
ほどなくして、手元に「うまトマロースかつ」がやってきた。どう見ても美味しそうであった。
「うまトマ」ソースの照り光る赤色と、その下から覗く豚かつのこんがりとした茶色は、網膜を突き抜け舌をそそのかすように刺激的だった。それでも筆者は、もはや風前の灯火と化した理性を掲げ続けた。
呑み込まれてはならない。奴隷となってはならない。心の中で必死に、繰り返し念じながら、震える箸先で「うまトマロースかつ」を持ち上げ、ゆっくりと口にした。
美味しかった。どうしようもなく美味しかった。
「うまトマ」に万が一などありえなかった。そもそもわかりきっていたことだったのだ。「うまトマ」ソースと豚かつが合わされば、どんな事態がもたらされるかということは。
にんにくの香ばしさをふんだんに携えたトマトの風味と、ジューシーで濃厚な豚ロースの旨味が、互いにこれでもかと相乗し合う。異なる種類の、しかし同等にパワフルなパンチを同時に何度も打ち込まれ、味覚を揺さぶられるごとに、くらくらとのめり込んでいく。
衣がサクサクとしている部分も、ソースが染み込んでいる部分もどちらもたまらない。そうした食感の機微に加え、ロースかつの脂っこさにトマトの酸味がばっちりはまるという組み合わせの妙にも唸らされる。
正直、元祖の「うまトマハンバーグ」より、こちらの方がさらに一層好きかもしれない。風前の灯火であった理性は、蝋燭ごと跡形もなく消し飛んでいた。極めて無駄な抵抗であった。
もう奴隷でいい。「うまトマ」こそが正義である。「うまトマ」を信じれば救われるのである。この足元についた鎖を、身体に刻まれた「うまトマ」の烙印を、堂々と誇ろうではないか。
このまま手をこまねいていれば、いずれ他の「松屋フーズ」店舗でも「うまトマ」が流用されだすかもしれない。しかしそこに一体何の不都合があろうか。喜ぶべきことである。首を長くして手をこまねくのみである。
筆者は呆けた顔を隠すことなく、「うまトマロースかつ」を完食した。こうなることはわかりきっていた。わかりきっていたが、想像以上だった。
この哀れで幸福な人間を、読者の方々は笑うだろうか。しかし筆者は確信している。この記事をここまで読まれた方々は──「君たちはきっと、食べに行くのだろう」と。
西本大紀








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