首都圏在住者には見慣れたお店でも、地方ではまったく「見ない・聞かない・食べる機会が一生ない」飲食チェーンというのはたくさんある。ネットショッピングの普及で買い物体験については地域差がほぼないだろうが、飲食ばかりはその土地でしか体験できない。

地方在住の筆者は上京するたびに「ああっ、これが噂の○○かっ!」という出会いをしているのだが、タイ料理店「TINUN(ティーヌン)」もそのひとつだ。実店舗を見たことはないけれど、ムエタイ選手のマスコットキャラクターだけはずいぶん前から知っている。限られた滞在日数であれやこれやスケジュールを考え抜き、今回ついに念願かなって行くことができた!


・トムヤムラーメン発祥の地「TINUN(ティーヌン)」

ティーヌンとは、エスニック専門店が今よりずっと珍しかった平成のはじめ、西早稲田で誕生したというタイ料理店。タイ商務省認定の直営店がいくつもあるほか、首都圏でフランチャイズ展開もしている。

地方住みの筆者がなぜ知っていたかというと、数年前にカプセルトイになっているのを見たから。ラーメン食べながらムエタイやってるクセ強キャラクターは、一度見たら忘れられない。きっと熱烈なファンのいる名物店に違いない。

あまりにツウ向けの店だと行きにくいなぁ……などと思っていたら、フードコート店もあるじゃないか! ここなら一見さんも、少しだけ食べたい人も、注文決めるのに時間かかる人もウェルカムじゃないの?


・フードコートならビギナーも安心

というわけでイオンモール幕張新都心店のフードコートにやってきた。

余談だが “JR駅直結” をうたうイオンモール幕張新都心店は、エキマエ館を抜けて、ペット館を抜けて、ようやく入った本館のさらに南の端まで歩かないとフードコートに着かないという巨大施設だった。「駅隣接の商業施設」といえば一周5分くらいの名店街をイメージする地方民の体力をごりごりと削ってくる……


マップを見ると、あるある「ティーヌン」の文字!


おお、ここだ! フードコートなので席数も多く、開放的な雰囲気!


うわ、メニューいっぱいあるんだな! 名物のトムヤムラーメン(トムヤムクンラーメン)食べようと思っていたけど、屋台メシみたいなのもいいなぁ! 組み合わせてセットにもできるみたい。「辛くない」マークがあるのも助かる。エスニック店の料理って、事前の想像の5倍くらい辛かったりするからな。

あれこれ迷っても大丈夫。セルフサービスだから、遠目にメニューを見ているだけなら誰に迷惑をかけるでもない。散々迷った末、カウンターで注文してベルを受け取る。


あ、レシートにムエタイがいる! 私、あなたを見てティーヌンに恋したんです。まだ見ぬ味を想像するうちに、イメージばかりがどんどんふくらみ、もう爆発寸前……

このマスコットキャラクターは創業当時、常連客だった早稲田大学の学生がデザインしたものだという。社員含め、長年「ムエタイ君」と呼んできたが、本名は「Mr.トムヤム」だと数年前に判明したとか。最近SNSを賑わせている「50年前にほっかほっか亭のフォントをデザインしたアルバイト」の大捜索を彷彿させるな。


ベルが鳴った! オーダーしたのは、メイン料理を少量ずつ食べられる「ミニパッタイ&ミニガパオセット(税込1420円)」というセットメニュー。メラミン食器がまた屋台っぽいというか給食っぽいというか、生活感があってイイ! 世界の労働者のお弁当特集記事とかすごくおもしろいよね。


いわゆるタイ風焼きそばだという「パッタイ」は……


甘いっ!


ナンプラー独特のにおいが鼻を抜ける。エビを筆頭とした魚介の風味がガッツリあるのに、同時にお菓子みたいな甘さがある。これは個性的。日本各地の魚醤もそうだけれど、「くさい」と「うまい」が拮抗するパワーゲームを、絶妙なバランスでコントロールしている。

ビーフンなので、日本の焼きそばよりも軟らかくて優しい食感。砕いたナッツがアクセントになっている。辛くない料理なので、胃にも安心だ。


付け合わせのスープは、あっさりしているように見せてやはりパンチが効いている。鶏ガラだろうか、動物エキスたっっっぷりという感じ。


セットのもう1品は「ガパオ」。ご飯の上に目玉焼きがのっている。


そのお味は…… 


文句なしに美味しい! 老若男女を選ばない甘じょっぱい味つけで、かなり日本人向けになっているのではないだろうか。ほんのりスパイスの香りがしつつも、クセがなく食べやすい。


細長いご飯はタイ米かな? 筆者はアジア圏のサラサラ・パラパラのご飯が大好きなので、これも嬉しい。


目玉焼きの白身はカリカリに近いほどしっかり焼かれているが、黄身の部分はまだとろみがある。黄身を肉に絡めるのも美味しかった。

白米&麺のコンボだったので多いかと思ったがペロリと食べてしまった。ハーブ+スパイスが特徴のタイ料理だが、思ったよりもクセが強くない。異国情緒を感じさせながらも誰にでも食べやすい味で総合力が高い!


・一度では食べ尽くせない

元祖だというトムヤムラーメンはもちろん、カオマンガイやガイヤーンも人気だという。これは一度では食べきれない。今回はひとりだったので、「辛くて完食できない」可能性があるメニューへの冒険ができなかったのだが、人と一緒ならいろいろ頼んでシェアもできそう。

世界各国から美味しいものを探し求める日本人の情熱にはすごいものがあるが、イオンに来たついでに気軽にタイ料理が食べられるなんて素晴らしい。次の出張でもリピート確定だ!


参考リンク:ティーヌン公式サイト高田馬場経済新聞
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.