私(佐藤)が当サイトで記事を書くようになって16年もの歳月が流れた。さまざまな地域に出向き、各地で名物といわれるものを食べて来たのだが、16年経った今でも初めて出会う味というものはある。

最近、名古屋に出かけた時のことだ。夕食に訪ねた居酒屋で、岐阜の郷土料理を食べる機会があった。それは「漬物ステーキ」という。「漬物」と「ステーキ」、まったく違うベクトルの2つの料理がひとつになるとは、どういうことなのか?

実際に食べてみたら、もっと普及してもいいと思えるほど、美味しいものであった。

・漬物のステーキ?

ステーキといえば一般的には肉を焼いたものを指す。牛肉のステーキがもっともポピュラーで、鶏肉・豚肉、そのほかマグロなどの魚介のものも珍しくないだろう。

牛だろうと魚だろうと、とにかく分厚い肉を鉄板なりフライパンなりで焼いたものを、私はステーキだと思っている。しかしながら、名古屋・錦の「名古屋大酒場 だるま」で提供しているものは、それらとはまったく違った。


「名古屋大酒場」というだけあって、ご当地グルメの「名古屋めし」が充実している。私のような名古屋を詳しく知らない観光客には、有難いメニュー構成だな。

手羽先の唐揚げ・味噌串かつ・大海老ふりゃあ・どて煮込み・うなごのひつまぶしなどと共に、記載されていたのが、「三英傑の漬物ステーキ」(各税込880円)である。

三英傑とは信長・秀吉・家康のことであり、それぞれ元祖・ピリ辛・名古屋味噌の3種のテイストを用意している。イラストを見ると鉄板で提供されることはわかるのだが、肉でないステーキとはどんなものなのか? 気になったので注文してみることに。


・想像と違ったけど美味い

漬物ステーキのほか味噌カツやどてめしも注文しておいた。待っている間に卓上の取り皿を見ると、居酒屋らしく皿に名言らしきものが書いてある

「やればよかったより やらなきゃよかった」

「やらずに後悔より、やって後悔」という意味なのはわかるけど、「やらなきゃよかった」の語感が強くて、伝えたい意図に反して「後悔するから、やるな」っていうニュアンスになっちゃってるような……。


少ししてまずは、「どてめし」(税込780円)と「味噌串かつ」(税込280円)が来た。どてめしをシメに食べるつもりだったのに先に来ちゃったなあ。


とりあえずめしを食べます。2017年頃だったかなあ、初めて名古屋に取材に来た時に、「あさひ」ってお店で食べたどて煮が美味かったんだよなあ。以来、私はどて煮ファンである。

ここのどて煮はややあっさりしてたけど、それでも脳裏に刻まれた初どて煮の味を思い出させてくれる。ご飯の中には隠し玉の生たまごが入っていた。


続いて、「上ホルモン」「牛レバー」の2本。どちらもたしかタレで頼んだはずなんだけど、これはタレ? 味噌っぽいけど、まあいいか。今日の主役は串焼きではないのだから。


そして来ました、本日の主役の「漬物ステーキ」です。


イラストを見ていたとはいえ、想像とはちょっと違うかな。白菜などの漬物を長いままで盛り付けて、鉄板で焼いたものをイメージしていたけど、これはステーキというよりオムレツに近いかなあ。オープンオムレツとでも言いましょうか。

たまごの黄色が目立つので、やっぱり漬物ステーキっていうよりも、漬物オムレツといった方がふさわしい気がする


漬物といえば食感と香味、酸味が魅力だ。それを焼いたら、酸味や香味は損なわれてしまうんじゃないか? 食べてみると、予想通りに酸味は控え目になって、たまごを加えることで若干甘さがある。

だが、水分が飛んでパリパリとした食感が増長しているのだ。この食感はクセになるな。たまごの甘さが漬物の塩気を引き立てていて、病みつきになる美味しさだ。漬物のこんな美味い食べ方があったなんて、全然知らなかったなあ。


一説によると、これは飛騨地方の郷土料理が進化したもののようだ。冬季に漬物樽の漬物が凍ってしまうために、いろりなどで温めて食べたのが漬物ステーキの始まりらしい。

それにしても、漬物は焼いても美味いことを知った。家でも簡単に出来そうである。過去にうどん粉が「ヤマキ」のサイトのレシピを参考に実践しているので、興味ある人は試して頂きたい。私も家で試してみるぞ!


・今回訪問した店舗の情報

店名 名古屋大酒場 だるま
住所 愛知県名古屋市中区錦3-18-18
時間 16:00~翌3:00 金曜16:00~翌4:00 土曜11:00~翌4:00 日曜11:00~翌0:00
定休日 不定休

参考リンク:名古屋大酒場 だるま
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24