男に生まれたからには一度は言ってみたいものだ。「馬鹿め、それは残像だ」と。残像、残心、残酷……子供の頃『幽遊白書』の飛影に影響を受けて以来、「残〇」という言葉にカッコ良さを感じてしまう私(中澤)。なんなら残尿すらカッコ良く感じるのだから飛影って罪深い。

ゆえに、今の暑さにも胸がキュンキュンする。9月も中旬だというのに照り付ける日差し。そう、残暑だ

・北陸よりも京浜東北線ホーム

NHKによると、まだ各地では35度とか36度の猛暑日が記録されているという。先週の大雨で夏も終わりかと思いきや、むしろ盛ってる。2025年9月17日、大宮駅前の人通りに花開く日傘も真夏のごとく満開だった。

こんなに暑い日は北陸新幹線に乗って福井にでも行きたくなるけれど、改札を入って私が向かったのは在来線の1・2番線。京浜東北線の上り・下りとなっているこのホームにあるのが……

・一部で支持を集める店

『駅そば大宮』である。大宮駅の改札内駅そばと言えば目立っているのはコンコースにある『そば処 中山道』で、京浜東北線ホームな上、ホームの中でも地味なポジショニングの駅そば大宮は普通だったら京浜東北線ユーザーしか知らない店。

でも、駅そば好き・立ち食いそば好きの支持を集めているのは駅そば大宮の方と言えよう。運営がJR東日本フーズと違うからかJRチェーンの駅そばとは味の質が違って、メニューにもなぜか佐野ラーメンがあったりする。ちなみに、特に栃木県佐野市と関係があるというわけではないらしい。

・メニュー名は普通だけど

以前、この辺りについて店に話を聞いたところによるとやはり差別化は意識しているらしい。駅そば大宮で食べると大宮駅にいるという実感が湧くのには理由があるわけだ。では、私が福井には行かずに駅そば大宮に来た理由はと言うと……

期間限定メニューの「おろしそば(税込630円)」が今食べるのに最高だからである。名前は何の変哲もない名前だけど、山盛りの大根おろしに風味豊かな鰹節。大根おろしが薬味ではなく、限界突破してむしろつゆを薬味にしているレベルの盛り盛りさに福井を感じた。この辛みと甘みと鰹の風味の強烈さ! 

そして、その味の方向性が駅そば大宮のキレとコクを併せ持つつゆとモチッとした細麺に合っている。思わず、7月に行った福井駅前の空の色を思い出した。あの日も太陽が眩しかったぜ。

心に福井の風が吹き抜けるこのそば。でも、実は大宮駅でその清涼感を感じられるというだけじゃなく、もっとレアなものという見方もできる

・独自さを感じるワケ

そもそも福井には立ち食いそば屋がほぼなくて、福井駅の駅そば『今庄そば』のメニューにもおろしそばはなかった。さらには、関東の駅そばや立ち食いそば屋でラインナップされているおろしそばでは、大根おろしが限界突破しているものを見たことがない。つまり……

ここまで福井の風が吹いてるおろしそばに、駅そば・立ち食いそば屋でお目にかかれる機会って実はなかなかないのである。北陸新幹線の玄関駅だからなのだろうか。むしろ福井に行く時でさえ駅そば大宮で食べた方が良いように思われるほどである。

そんなわけで暑くて長い2025年の残暑にぴったりな期間限定メニューを展開している『駅そば大宮』。店員さんに伺ったところによると、「おろしそばの展開は9月いっぱいまでの予定」とのことだったので、こいつで暑さに引導を渡そう。馬鹿め、それは残暑だ。

・今回紹介した店舗の情報

店名 駅そば大宮
住所 埼玉県さいたま市大宮区錦町630 大宮駅構内京浜ホーム
営業時間 月~土7:00~21:00 / 日・祝日7:00~19:00
定休日 無休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼限界突破した大根おろしだけでなく、つゆのキレ、強烈な鰹の風味。これは良いおろしそばだ