産直市場に行くと身近で作られているだろうに、まだまだ知らない食材があるものだなあと驚く。先日も『金時草』という、葉の裏面が奇麗な赤紫色の野菜に出会った。

紫蘇のようなものだろうかと匂いを嗅(か)ぐも、そんな感じではない。いつもの如く「茹でれば食べられるだろう」と安易な気持ちで買ってみたのだが、結果やいかに。


・使い方がわからない

『金時草』はキンジソウと読むらしい。てっきりキントキソウか、キントキグサだと思っていた。この日買ったものは、袋にもっさり入って税込200円とお手頃価格。


加賀野菜に認定されているとのことなので、北陸ではメジャーな野菜なのだろう。関西在住の記者が目にするのは、はじめてだった。

そんな訳でどのようにして食べれば良いかわからなかったが、冒頭に書いたようにまずは茹でてみることにした。袋を開けて中身を取り出すと、茎に葉が付いた状態である。しかも茎がそこそこゴツい。

はて……? これは茎も食べられるのだろうか。食べられるとして葉から切り離した方が良いのか、そのままでも良いのか。検索してみると、基本的には茎と葉を別にして使うようで、いずれも食べられるらしい。

ならばと、手でプチプチと葉を外す。茎はやや硬そうなので、炒めてみることにしよう。


・想像と全く違う味

まずは沸騰したお湯に、葉をさっとくぐらせる。青臭さをイメージさせる、若干クセのある香りがする。冷水でしめてしぼると、薄紫色の汁が出た。

その代わりか、葉の裏面の赤紫色は緑色に変化してしまっている。あの紫が綺麗だったのにと思いつつ、包丁で切るとヌメッとしている模様。


ますますよくわからない野菜だなと思いつつ、次に茎を炒める。油を少しひいたフライパンに茎を入れ、柔らかくなってきたところで、しょう油をひと振りして完成だ。


茹でた葉から食べてみよう。火を通すと特徴的な香りはしなくなったが、味はどうだろうか。ヌメリからツルムラサキのような感じを想像していたが、全く違った。


シャキシャキしているし、結構苦いのだ。ゴーヤなどよりは爽やかな苦味で、春野菜に近い感じがする。全く想像していない味だったので、驚いてしまった。

ただし炒めたものはそれほどでもなく、もうすこしマイルドな味わいだ。生の状態はゴツゴツしていたので覚悟していたが、程よい柔らかさになっていて食べやすい。


しっかり火を入れた方が、金時草初心者には良さそうだ。

ゆで汁に酢を少量混ぜると、奇麗な紫色になるという情報を得たので、そのゆで汁を使って混ぜご飯にしてみた。


これまたほんのりと苦味の感じられる、健康になりそうな味のご飯で悪くはない。何よりほんのり紫に色付いたご飯が奇麗だ。アリかナシかで言えばアリではあるが、万人受けする味ではないような気もする。


そんなこんなで、何から何まで「思ってたんとちゃうやん……」という感じだった金時草。頻繁(ひんぱん)に食べたいかと聞かれると、正直そうでもない。

しかしおかずの中に少しだけ混じっていたら、アクセントになりそうではある。旬は6月から9月までのようなので、レシピを開拓しつつシーズン中にもう1度くらいは食べてみることにしよう。

執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.

▼シャキッとしていて、そこそこ苦味があった

▼ゆで汁にほんの少し酢を入れると、奇麗な紫色になる

▼ゆで汁と米と金時草の茎、調味料(塩麹や白出汁が良さそう)を入れて炊いてみた。茹でた葉を後から混ぜる

▼色が付くので、なにかと使えそう