「言葉の乱れは風紀の乱れ」、大人らしい言葉使いを心がけたいと私(佐藤)は常日頃から考えている。当編集部も平均年齢40代、決して若くないのだからキレイな言葉を使いたいものだ。にも関わらず! 後輩たちは安易に流行り言葉を使って、いつまでも若いつもりでいる。

けしからん! とくに最近ネットやSNSでよく目にするあの表現。本意を本当に理解しているのか? と疑いたくなってしまう。

今日もまだ耳にするあの言葉、「エグい(エグみ)」だ。なんでもかんでもエグいで済ませやがって。上等だよ、俺がホントの「エグみ」ってヤツを教えてやんよッ!!

~ ある日の編集部 ~


映画好きの古沢はパソコンの画面を見ながら、こう言った

古沢「この映画の演出、エッグ!


佐藤「あ?」


次いで、ショート動画を見る頻度の高い、P.K.サンジュンは、こう言った。

サンジュン「このショート動画、エグいなあ


佐藤「ナニ!?」


アイドルグループ「TWICE」の動向チェックに余念がない、砂子間正貫はこう言った。

砂子間「TWICEはダンスも歌もスゴイけど、挨拶とフリートークがマジでエグい


堪えかねた私は、思わず机を両手で叩いてしまった。


佐藤「おい、お前らーーッ!!」


佐藤「たやすく「エグい、エグい」と言い腐りおってからに! お前ら本当にエグい(エグみ)をわかってんのか!


佐藤「もう今日は勘弁ならんから、俺がホントのエグみってヤツを教えてやんよッ! とくと味わうがイイ!!


というわけで、ほうれん草を用意しました。流水でよく洗います。そして、口の広い鍋にお湯を沸かします。


沸騰したところでほうれん草を入れて軽く茹でます。


佐藤「う~ん、イイ感じだな」


頃合いを見てほうれん草を取り出します。


残った汁が今回の主役、そう、ほうれん草の茹で汁です。すでにニオイがエグい! コレだよ、コレ! エグみを味わうにはコレに限る!


茹で汁をお椀にとって……。


よ~し、ヤツらもコレを飲んだら、エグみをより深く理解できるはず。安易にエグいとか言わなくなるだろう。


佐藤「集まったな。お椀を持て、みんなでカンパイするぞ」


古沢「え? これを飲むんですか?」
サンジュン「ニオイはたしかにエグいな」
砂子間「これ、TWICEと何か関係あるんすか?」
佐藤「いいから飲むぞ、カンパイ!」


一同がお椀に口をつけて飲んだ瞬間に、彼らの頭の上に「?」マークが浮かんでいるのが見えた。わかったようだな、エグみとは何かってことを。


だが、私も飲んだら頭の上にも「?」マークが浮かんだ

なぜなら……、全然エグくない! なぜだ? 「エッグ!」という心づもりでいたのに、口の中がシパシパするような感覚がない。喉の奥にザラっとする感覚もない。


佐藤「エグくないなあ……」

古沢「ですね(笑)」


佐藤「な、お前たち、俺が言いたいことがわかるか? エグいつもりで飲んだほうれん草の茹で汁がエグくない。この状況こそがエグいのだ

一同「やかましい! 上手いこと言おうとするな!」


エグみの少ない品種だったようです。



~~~ 完 ~~~


執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24