「ラーメン山岡家」をご存知だろうか? 札幌に本社(株式会社丸千代山岡家)を置き、全国に180店舗以上展開するラーメンチェーンである。もちろん私(佐藤)も知っている。が! 名前だけしか知らない。つまり行ったことがないのである。

当サイトでも何度か取りあげており、編集部のあひるねこは深夜にお店を訪ねるほど、山岡家にアツい思いを持っている。なのに私はその味を知らない。

先輩なのに後輩よりも知見が狭いのは恥ではないのか? そう考え、人生で初めて山岡家に行ってみたところ、アイツのことが眩しく見えた……

・山岡家に行ったことがない

私がこの仕事に就いて、すでに15年もの歳月が経過している。気づけば51歳、とっくに人生の折り返し地点を過ぎている。年長者である以上、後輩たちの模範でありたいと常日頃から願っているのだ。


にもかかわらず、山岡家を知らない。いまさら言えないのだ、「実は山岡家、行ったことがないんだよね~」なんて。恥ずかしくて口が裂けても言えない。だから、いつも「ああ、山岡家ね」みたいな感じで、知ってます風を装っていた。

まさか、アイツには見抜かれているんじゃないのか?


「そういえば佐藤さん」と、あひるねこに話しかけられる度にビクッ! としてしまう。できるだけ彼の口から山岡家の名前が出て来ないことを願いつつ、日常を送っている始末だ。情けない……。

だって、アイツは深夜に山岡家に行って電車がなくなって帰れなくなって、チャリを借りてまで帰ってくるような男だ。


きっと山岡家を愛しているはず。今になって「山岡家に行ったことがない」なんて、やっぱり俺は言えねえよ! 怖くて言えねえ!! 知ったかぶりしてたのがバレるの怖えもん!



・いきなり券売機

そんなある日のこと、千葉・新鎌ヶ谷に出かける機会を得た。幸いなことに、駅の近くに山岡家がある! こりゃもう行くしかねえ! この好機を逃すべからず! ってんで、お店に駆け込んだ。


入店したらいきなり券売機。マジか、券売機って早く買わないとほかの人に迷惑をかける気がするから、あまり好きじゃないんだよね。席についてゆっくりメニューを選び気で入ったのに、もう決めないといけない。

く~、わからん! 初めて入るお店は何を食べるべきか全然わからん!


ふと見ると、右端にデカく表示されているメニューがある。「プレミアム醤油とんこつラーメン」(税込950円)、何がプレミアムで、醤油なのかとんこつなのかもわからない。

でも期間限定だから、もうこれでいいや! 一緒に餃子(税込350円)も頼んだ。


で、席につくとスタッフが食券を取りに来て、「食べ方はどうなさいますか?」という。ナニ!? あるの? 何かそういう流儀みたいなのがあるの? え~、わかんない。そういうの全然わかんないんだけど。

ここは正直に「初めてでわかんないんですけど」というと、麺の硬さ・あぶらの量・味の濃さを選択できると教えてもらった。


なるほどね、そういうシステムね。この表にあるように「初めてのお客様にはふつうをお勧めします!」とあるので、全部ふつうでお願いした。

いや~、忙しい。気が休まるヒマがねえ。


そういえば、食券と一緒にサービス券が出てきてたな。


ラーメン1杯につきサービス券1枚がもらえるそうだ。枚数に応じて商品と交換でき、さらに50枚集めるとオリジナルTシャツがもらえるってことなんだけど、Tシャツをゲットするためには50枚を郵送しないといけない


今の時代にアプリでスタンプとかじゃなく郵送。それは大変だ。サービス券50枚を貯めるだけでも邪魔臭いと思ってしまったのは、私がまだ山岡家の味を知らないからだろうか?



・濃い、そして濃い!

さて、少ししてラーメンと餃子登場。


ラーメンのスープは見るからに濃そうだ。「ガツンと来て、くせになる」と山岡家が自ら言っているくらいだから、確実に濃いのだろう。


そういえば あひるねこの訪ねたお店は、床が滑りやすかったそうだ。つまりは店内に油がまわっている証で、天然のダンスフロアと化していたそうである。その環境で彼は華麗にダンス(食べること)した。はたして私も彼のように上手く踊ることができるのだろうか?

飛び込む気持ちでレッツダンス! まずはスープをひとすすり……


クッ、濃い……。いや、重いだな。濃厚なテイストは時として重力を伴うもの。にわかに舌の動きが緩慢になる。そしてもうひとすすり、やはり重い。醤油とんこつというからとんこつ寄りの味をイメージしていたのだが、思ったほどではなく、むしろ魚介出汁の旨味がグッと口の奥に響く。

さらにもうひとすすり、それもまた重い。よく味わうと魚介出汁のあとからとんこつの風味が追いかけてきているのがわかる。いや待てよ、魚介の前に背脂の風味が先行していないか?

さらにすする、ちょっと待て。めちゃくちゃスープをすすってしまっている。これはハメられてる! クセになるとはそういうことか!?



このままでは麺を食べる前にスープを飲み尽くしてしまうので、この辺でレンゲを置こう。そして麺をすすると、ほのかに黄色い中太麺はこの濃さのスープ対して、全然引けをとっていない


噛むごとにプツリと音のしそうなしっかりとした食感で、その存在感を主張している。なるほど、この感じなら麺の硬さは多少かためでも、スープとはつり合いが取れる。次回は「麺かため」でオーダーしよう。


それからワカメについても一言いわせてもらおう。このワカメがシャッキシャキでめちゃウマだった。三陸産の最上級のものを使っているというから納得。


シャキシャキついでにいうと、トッピングの玉ねぎも良いアクセントになっている。ただ濃いだけじゃなくて、実は味全体のバランスがよくとれているとわかった。


餃子は餡の量が控え目でどちらかといえば、皮のパリパリ食感を楽しむタイプ


なにしろ基本の味が濃いから、餃子もそれなりの個性が必要だったはず。皮の食感に全振りして、サイドメニューの一役を担っているというわけだな。


濃いな~、味が濃い。いや~濃い。それにしても濃い。って言ってる間に完食していた。


普段あまりラーメンを食べない私は、スープを平らげることもしないのだが、久々に丼ぶりの底を見たよ



こうして我が弱点を克服した私は、もうあひるねこの言動に怯えることはないはず。どうだ、あひるねこ。


不意に彼と目が合った。すると……


満面の笑みでサムズアップ!


眩しい! アイツの笑顔は眩しすぎる! さすが帰りのことを考えもせずに深夜に山岡家に行く漢(かん)だ。違うな~、あひるねこさん、やっぱ違うは!

そんなわけで、私のように山岡家未体験の人は、ぜひ一度味わってほしい。山岡家の「ガツン」の意味がわかるはずだ。


・今回訪問した店舗の情報

店名 ラーメン山岡家 千葉鎌ケ谷店
住所 千葉県鎌ヶ谷市新鎌ヶ谷3丁目3-6
時間 24時間

参考リンク:ラーメン山岡家
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24