大久保・新大久保エリアのネパール料理店の出店ラッシュが止まらない。


大久保・新大久保といえば、韓国料理店や食材店、K-POP及び韓流ドラマ関連のグッズショップが建ち並ぶ若者でにぎわう街として知られるが、エスニック好きにしてみれば、もはやネパール料理激戦区といった様相を呈している。


他エリアのネパール料理店も紹介していく所存ではあるものの、大久保・新大久保に注目すべきネパール料理店が乱立しつつある。 “ダルバート行脚” を謳う本連載としてもうれしい悲鳴といったところ。


・鉄道マニアにもオススメしたいネパール料理店

今回足を運んだのはJR新大久保駅から徒歩2分ほどの「バンブーチェ」。パンダの看板が可愛らしい、2024年10月22日にオープンしたての新店でありエスニック好きの多くが注目している店でもある。


店内に入ると壮観。奥にはステージがあってライブも開催可能。100人は収容できるであろう大久保・新大久保エリア最大級の大箱だ。


装飾品やカトラリーケースには店名の「バンブー」が体を表すように竹がふんだんに使用されている。


窓際の座席について驚くのがその眺め。真横にあるのは新大久保駅のホーム。山手線がひっきりなしに行き来する。

鉄道マニアにもオススメしたいネパール料理店なのだ。



・ボトル35万円のウイスキーもあり

メニューはダルバートやネワールコンボセット(3990円)といった食事系のメニューからはじまり、

炒め物や串焼きといったツマミ系メニューもよりどりみどり。


ジャパニーズウイスキーも豊富に取りそろえているが……ボトル35万円は到底手が出ない。日本国内でビジネスに成功したネパール人客や大所帯でのパーティーを想定しての品ぞろえなのだろうか。


ネパールのお酒も選択肢豊富。

というわけで、「ククリラム・スパイス(700円)」のソーダ割りを注文。

ネパールのサトウキビやカラメルを原料とした蒸留酒で、ここ最近はたいていのネパール料理店に置いてある。ほのかな甘みと苦みを感じる。



・魅力的なネパール肴の数々

この日は友人と2人で来ていたのでまずはツマミ系のメニューをチョイス。

最初に出てきたのはマトンチョイラ(850円)。チョイラは肉を焼いてスパイスをまぶした料理で、熱々で提供されることが多いのだがこちらは冷製仕立て。竹の器で出してくれるのが嬉しい。

かなりシャープな辛さでニンニクがガツンと効いている。そこにマトンのうま味と香りが追いかけてくる。これはかなりの酒泥棒だ。


続いて「サグブテコ(500円)」。ホウレンソウなどを使用した青菜炒め。こちらは辛味はなく、クミンがビシッと効いていてかぐわしい。箸休めに最適。

今回オーダーしたツマミの中で楽しみにしていたのがこの「ワイワイサデコ(600円)」。「ワイワイ」はネパールで販売されているインスタント麺のブランドで、「サデコ」は和え物のこと。

ワイワイを砕き、生のキュウリ、ニンジン、紫タマネギ、パクチーなどを和えた料理で、同店の味つけはかなり辛め。

「ヒーヒー」言いながら口に含み、ククリラムを飲む。ヒマラヤの味は首都・カトマンズよりも辛め設定なのかも。


ククリラムを飲み干したところで「チャン(800円)」を追加。米、ヒエ、麦、トウモロコシなどを発酵させて作るドブロクのようなお酒だ。

ほんのりとした甘味と発酵から来る酸味。その味わいは見た目通り韓国のマッコリと似ている。アルコール度数もそれほど高くなく、スイスイ入ってしまう。



・想像を超えてきたピザモモのヴィジュアル

そしてこの日のハイライトは「ピザモモ(990円)」。

モモはネパール風の蒸し餃子のような料理で、こちらでは定番のスチームモモをはじめ、スープモモやフライモモなどなどラインナップも豊富。しかし、ピザモモというのは初めて見た。


で……運ばれてきたのはまさに “ピザモモ” 。


蒸したモモの上にトマトソースとチーズを乗っけて火であぶった感じなのかなと勝手に想像していたが、想像を遥かに超えてきた。

ピザ生地の上にトマトソース、ピーマン、紫タマネギ、パクチー、モモ、チーズを乗せて焼いた正真正銘のピザが目の前に!


カラフルでヴィジュアルも抜群だし、味も美味しい。スパイスの効いたモモの餡とチーズやトマトソースがしっかり合う。合うのだが……ここで腹いっぱい。まさかこんなにしっかりピザだったとは。

ダルバートまでたどり着くことができないと判断し、日を改めて再訪することにした。



・ダルバートにありつくために再訪

というわけで、1人で再訪。

新大久保駅を行き来する山手線を横目に生ビール(600円)を傾ける。


ランチメニューから2種のカレーを選べる「バンブーセット(1300円)」をチョイス。プラス200円でライスから「ディンド(ディド)」というそばがきのような食事に変更することも可能だ。

選べるカレーはポークと野菜にしてみた。


待つこと数分、供されたのは何とも美しいヴィジュアルのダルバート。純白の食器で提供されるダルバートに初めて出遭ってしまった。カレーとダルスープの器に蓋がしてあるのも珍しい。

純白の食器とライスの上に鎮座ましまするパパド(豆から作られた煎餅のようなもの)が相まって、パゴダ(仏塔)を彷彿とさせるよう。


カレーとダルスープの蓋を取ってみるとこんな感じ。

内容は左上から野菜カレー、ポークカレー、ダルスープ、紫タマネギ・キュウリ・ニンジン・レモンスライス、発酵高菜、トマトベースのピリ辛ソース、青菜炒め、野菜のおかず(ブロッコリー・インゲン・ジャガイモ)、プレーンヨーグルト、ギー(水牛の溶かしバター)という充実のラインナップ。


まずは定食の味噌汁の如くダルスープをすする。


スパイス感はそれほど強くはなく、豆の甘みが滋味深い。毎日でも飲めるような優しいスープだ。


次いでパパドを砕いてライスにふりかけ、ダルスープを重ねて「ネパール式ねこまんま」を食べる。長粒種と短粒種をミックスしているであろうライスがいい香り。



・野菜カレーはうれしい “バンブー” 入り

ポークカレーも辛みは抑え目で子どもでも食べられるはずだ。ただ、カルダモンなどのスパイスをしっかりと感じられる。豚肉は柔らかく、脂身が甘い。これはライスが進む味だ。


そして野菜カレーは……なんとバンブー入り! これはうれしい。

細めのタケノコが結構しっかり目に入っていて、柔らかくサクサクとした食感が楽しめる。


発酵高菜は浅めの発酵でフレッシュ感あり。黒豆も入っていて栄養満点だ。

また、トマトベースのピリ辛ソースはペースト状のものを提供している店が多い中、同店のものは亀有「ガンディジー」と同様にトマトの果実感をしっかりと残していて爽やか。ほのかな辛みが感じられる。


クミンが効いた青菜炒めも大きめカットのジャガイモ入りの野菜のおかずもしっかり美味い。



・ネパールのお酒「ジョイ・カッティ」とは

生ビールがなくなったところで、ネパールのお酒メニューの中で気になる「ジョイ・カッティ(800円)」について店員さんに「どんなお酒ですか?」と聞いたところ「ちょっと待ってください」と数分待たされ、有無を言わさず提供された。

口に含んでみたところ……うっ! かなり強くてツンとくるほど。アルコール度数40度ぐらいあるのではないか。


温めた蒸留酒に炒った米とギーをぶっかけたお酒のようだ。

キュンと来る度数高めのお酒、香ばしい炒り米、濃厚なギーで体が温まる。じんわりと汗が出てくるぐらいだ。


というわけで、ダルバートにもギーをかけてコクやうま味、ミルク感及びチーズ感を引き上げていく。


ジョイ・カッティをちびちび飲(や)りつつ、ライスにダルスープ、カレー、おかずを重ねて食べ進めていく。


大好きなギーのうま味もあって一気に完食。その後に口に含んだプレーンヨーグルトが非常に爽やかだった。


・今回訪問した店舗の情報

店名 バンブーチェ
住所 東京都新宿区百人町1-10-7 一番街ビル2F
営業時間 11:30〜0:00
定休日 無休


執筆:ダルバート研究家・田中ケッチャム
Photo:RocketNews24

▼店名の「バンブーチェ」の「チェ」の意味を店員さんに尋ねると「家」とのこと。「バンブーハウス」ということのようだ。

▼店はまだオープンしたばかり。グランドメニューに掲載されているものの、まだ提供できないメニューもあるようだが、豊富なメニュー、特殊で楽しい立地、映える内装と食器などなど、2024年にオープンしたネパール料理店では最注目と言っても良さそうだ。