海外でも人気が高いグルメ番組『料理の鉄人』──日本料理、中華料理、フランス料理などなど、それぞれの料理業界にはスターシェフが存在し、『料理の鉄人』においては「鉄人」や「アイアンシェフ」と呼ばれた。


ネパール料理にもスターシェフがいて、彼の料理を求めるエスニック好きは少なくない。あえて鉄人と呼ばせていただくが、鉄人はかつて当連載でも紹介した西日暮里「ミテリキッチン」に在籍していた。その後、同店を離れ、少しの空白期間を経てある店に移籍することとなった──。


・“鉄人” の加入で本格ネパール料理を提供するように

今回訪れたのはJR亀有駅から徒歩2分ほどの「ガンディジー」。これまではネパール人が経営するインドカレー店「インネパ」と呼ばれる店だったが、鉄人の加入とともに本格的なネパール料理も提供するようになった。そんな情報を聞きつけて足を運んでみた。


店内にも「2024年10月1日からネパール料理の新メニュー発表!」とデカデカと掲げられている。


店内はテーブル5~6卓ほどにカウンター席とこぢんまりとしているが、ファミリーやカップルが楽しそうに会話を交わし、美味しそうにカレーを頬張る。まさに地域に愛されるカレー屋さんといった雰囲気。

これまでも提供していた北インド系のカレーやナン。ランチのセットは900円からとリーズナブル。スタミナセットやお子様カレーなんかも置いている。


そして、このたび導入されたのが「ネパールメニュー」だ。


ネパールの国民食「ダルバート」をはじめ、モモ(ネパール風蒸し餃子)やツマミ系のメニューがそろう。



・アチャール&スクティでビールが止まらない

まずは生ビール(450円)で喉を潤していく。


酒のアテとしてついてきたのはアチャール(ネパール風ピクルス)。鉄人が移籍してきたからこそ、同店でもアチャールが味わえるようになったのだろう。

マスタードがビシッと効いていてピリ辛というよりは辛口でビールが進む。ピーマンが入っているのは珍しい。


ダルバート以外にも鉄人の料理を味わいたい。ということで、まず注文したのはスクティ(750円)。スクティとは干した肉をスパイスとともに炒めた料理。同店ではマトンのスクティを提供している。

干し肉だから噛み応えはかなり強め。その分、うま味が凝縮されている。マトンの力強さ、強めの塩気とスパイスの香りは酒のツマミにピッタリ。早々にビールを飲み終えてしまった。


そこでドリンクメニューの中で気になっていた「そむらす(400円)」を飲んでみることに。「ネパールのだったんそば焼酎」と説明にあるように、味は日本のそば焼酎に近い。というかほぼ同じ。そば湯割りで飲んでも絶対に美味いだろう。

スクティとのマリアージュが合わないわけがない。ソムラスを少し口に含んではスクティをかじる。いいルーティーンが出来上がった。



・見た目も味も間違いない

胃が温まってきたところで本日のメインに取り掛かっていく。ネパールメニューの中でダルバートと呼ばれるのは「ダルバトセット(1100円)」と「ネパールセット(1400円)」の2つ。今回はネパールセットをマトンカレー、辛口で注文してみた。

改めて……ダルバートとは、ダル(ひき割り豆のスープ)とバート(米飯)というワードの組み合わせ。これにカレーやスパイスで味や香りづけをした野菜などのおかず(タルカリ)やピクルスのような漬物(アチャール)がついてくるネパールの国民食であり、定食のような存在だ。


運ばれてきたのは超豪華でボリューミーな一皿。

左上から時計回りにマトンカレー、ダルスープ、パパド(豆から作られた煎餅のようなもの)、ライス、キュウリとニンジンのスライス、青菜炒め、発酵高菜、野菜のおかず(インゲン、ジャガイモ、カリフラワーなど)、中央左にギー(水牛の溶かしバター)、トマトベースのピリ辛ソースが並ぶ。


さらにここにプレーンヨーグルトもついてくる。一皿に乗り切らないほどの充実のラインナップだ。


まずは定食の味噌汁の如くダルスープを味わっていく。

かなりスパイスと粘度が強く、スープというよりはカレーといった印象。間違いなくライスと合うだろう。


というわけで、パパドを砕いてライスにふりかけ、ダルスープを重ねて「ネパール式ねこまんま」を食べる。

うん、味わいはまさに豆を使ったカレーライス。これだけで一品料理として提供されても納得の満足感を得られる。


刮目すべきはマトンカレー。器から肉がはみ出ている。そして骨付き&皮付きでブリンブリンだ。カレーはクミンとカルダモンがしっかりと効いていて、一口頬張るとさらに食欲を掻き立ててくれる。

底の方にはザクというかドムの顔にも見えるような部位もあった。こちらはブリンブリンどころかバッチンバッチンといった “皮全開” の食感で、マトンのいい臭みとクセの強さに思わず笑いが込み上げてくる。



・サルサを彷彿とさせる爽やかトマトソースにも驚き

驚いたのはトマトベースのチリソース。

多くのネパール料理店で提供されるのはペースト状のものだが、こちらは果実感、フレッシュ感を残している。爽やかな酸味と辛味でメキシコ料理のサルサのような味わい。


ダルスープ、カレー、漬物、おかず、トマトソースを重ねて食べ進めていく。


そしてギーだ。こいつを全体にかけることでコク、うま味、ミルク感、喉越しなどなど、ダルバートの全ステータスがアップする。ゲームで言えばチートアイテムといったところ。


一気に完食。ダルスープから始まり、カレーもおかずもソースもどれもしっかりと作り込まれていて満足度がとっても高い。近所にあったら2日に1回は来たくなる、そんなダルバートだった。


・今回訪問した店舗の情報

店名 ガンディジー
住所 東京都葛飾区亀有3-8-5
営業時間 11:00〜15:00 / 17:00~23:00(月~金曜)、11:00~23:00(土・日・祝)
定休日 無休


執筆:ダルバート研究家・田中ケッチャム
Photo:RocketNews24

▼こしあんで作った「あんこナン」なんていう個性派メニューもあり。

▼店員さんの動きを見てわかったことだが、既存の北インド系のカレーは前からいたシェフが、ネパール料理は鉄人が作るという完全分業制。筆者が来店した際にはインドカレーを注文する人ばかりだったが、是非ともネパール料理にも挑戦していただきたい。