アメリカから友人が単身、東京へ遊びに来た。彼女は約20年前、私をアメリカの自宅にホームステイさせてくれた心優しいアメリカ娘である。住む場所は遠くても、アラフォーになっても、こうして友情が続くって最高だよね! We are ズッ友!
浅草に集合した我々は飲酒と観光を繰り返し、気づけばとっぷり夜も更けていた。かなり無礼講っぽい雰囲気になってきたので、軽い気持ちで彼女に「ねぇ、銃持ってんの?」と尋ねてみた私。すると……
「うん、6丁持ってる!」と返されたので、自分で訊いておきながら思わず「ヒャッ!」となってしまった。バイオハザードでもそんなには所持しないんでは……?
・アメリカ広すぎ問題
なおアメリカでは銃を持つ権利が憲法で保障されている一方、銃による犯罪や事故も増加傾向にあり、銃規制を巡る議論が活発化している。アメリカ社会が抱える大きな問題のひとつだ。
デリケートな話題なので詳細は差し控えるが、友人が住む州はアメリカ有数の田舎。車がなければ生活の一切が立ちゆかず、必要物資の全ては街に1軒だけあるウォルマートで入手する。あの田舎度は日本の田舎の比ではない。
ちなみに友人は独身の一人暮らしで、所有する銃6丁のうち1丁はショットガンらしい。ショットガンとはバイオハザードでいうと、モブゾンビなら一撃で吹っ飛ばせるアレだ。
友人「年齢制限などをクリアしてることが前提だけど、私の住んでる州ではポケットサイズの銃なら誰でも買えるの。でも、ショットガンを買うには許可がいる。簡単な講習を受ける必要もあるわね」
──なぜショットガンを?
友人「ホラ私の家の周りって、熊や鹿がウロウロしているじゃない? それから日本人が大好きなアライグマもよく侵入してくるんだけど、彼らは凶暴で鋭い爪を持っているの。動物が襲ってくる場面を想定すると、ショットガンがあるに越したことはないわよねぇ」
・でも6丁は多くね?
なお友人は最近「野生の熊が自宅のドアをノックする様子が防犯カメラに映っていた」という、世界ビックリ仰天ニュースで紹介されそうな体験をしたらしい。
が、その動画をSNSで公開したところ、もうビックリしちゃうほどバズらなかったのだそう。要するに、アメリカの田舎では熊なんてちっとも珍しくないってこと。
友人「私は自分のショットガンに名前を付けてる。オリビア・ベンソンっていうの」
──オリビア・ベンソンはいくらだった?
友人「300ドル(約4万5000円)だったかしら。普通の銃なら200ドル(約3万円)くらいで買えるかな」
──なぜ6丁も持つ必要が?
友人「車、リビング、オフィス、あとベッドルームに2丁……部屋ごとに置いているって感じね」
彼女の自宅は山の麓の一軒家。徒歩圏内に民家が3軒。山の向こう側は治安の悪いエリアで、数年前には身元不明の死体が出た。
そんな事情から、このあたりに住む独身女性が6丁の銃を所持していることは、別に珍しいことではないらしい。おまけに、彼女はストーカーの存在にも悩んでいるのだそうな。
友人「日本はどうか知らないけど、アメリカのポリスは事件が起きないと動かないの。だから万が一に備えて、自分で自分の身を守らないと」
・いつか使いたい名言
誤解のないようにお伝えしておくと、彼女は決してガンマニアとかではなく、なんなら銃が無い社会のほうがいいと思っている。外国人が銃を怖がることも理解しているため、私がホームステイしている間は銃をお父さんに預けてくれていたのだとか。優しいな。
友人「アメリカのバッドなガイは必ず銃を持っている。だからグッドなガールも銃を持たなきゃならないの。日本人には理解しづらいかもしれないけど……だからってアメリカのこと、怖い国だと思わないでね!」
バッドなガイが銃を持っているからグッドなガールも銃を持たなきゃならない……アクション映画の見せ場みたいな名言が飛び出したところで、自分の銃社会に対する漠然とした恐怖が少し薄れていくのを感じた。
ちなみに友人は銃を6丁持っているが、実際に発砲したことはないらしい。考えてみれば日本人は全員包丁を持っていて、それを使えば人を殺傷することができる。でも実行する人はほとんどいない。
アメリカではそれが銃に置き換わっただけ……という考え方はもちろん安直だけど、銃を持っている人=銃を使う人ではない、ということだけは理解できた気がする浅草の夜だった。
ついでに言うと、友人は「1個買うと感覚がマヒして、複数個買ってしまいがち」という銃所持の側面についても話してくれた。その感覚……できれば一生知りたくないなぁ。
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]