いまからお伝えする内容には「そんなの常識」という感想を抱く読者が多数出現する展開が予想されるため、先に「それを言い出したら終わり」という予防線を大々的に張ったうえで、あえて私は「あけびがこんな色だとは知らなかった」と声を大にして叫びたい。

なお私は『あけび』という果物の存在を幼い頃から認識していた。しかしながら、つい先日オオゼキ(都内のスーパー)の青果売り場で見つけた、この空想上の果物みたいなヤツがソレだとは、思てたんと違いすぎて思わずその場で友人に電話したほどである。

要するに私は『あけび』の存在を認識はしていたが、実際に見るのは初めてだったのだ。よく見ると「豚バラで巻くとおいしい」と書かれている。あけび……お前、そうだったの!?

・初めてのあけび

ネットで調べたところあけびは今が旬。この日オオゼキで売られていたものは1つ430円(税込)だった。高いんだか安いんだかサッパリ分からん。

赤道直下の国とかならともかく、このような毒々しい紫色の果物が日本に生えているとは、にわかに信じがたい気持ちだ。

オオゼキ店頭のポップには「あけびは『豚バラ巻き』や『みそ炒め』にするとおいしい」とあった。これは……日本の常識なのですか? ハイレベルすぎて思考が追いつかないが、そう言われた以上はやるしかない。

ネットの情報によると、あけびは甘い「果実」が分厚い「皮」に覆われた形状。豚バラ巻き等に使用するのは皮の部分らしい。ネットの情報に従って皮に包丁で切り込みを入れる。ありがとう、インターネット。


ワ、ワ、ワーーーーーーーーッ!!!!!!!?



・戦慄! あけびの果実

初めて見るあけびの全貌に、思わずちいかわみたいな叫び声を上げてしまった。

ディル・アン・グレイのMVを彷彿とさせるあけび果実のビジュアルは、今にも何かが産まれてきそうな雰囲気をビンビンに放っている。コレがウゾゾ……と動き出したらショックで心臓止まると思う。食うの? ガチで?

同僚に付き添ってもらいつつ、おそるおそるスプーンを入れると……


ワ、ワ、ワーーーーーーーーッ!!!!!!!?


・ナイスです! あけびの果実

再びちいかわ化した私だが、今さら後に引けるはずもない。

まぁオオゼキで売ってるくらいだから、少なくとも胃の中で何かが孵化するってことはないはず。これを最初に食おうと思った人に最大級の敬意を払いつつ、私はエイッ! とあけびの果実を口に入れた。


すると……



すっげぇウマい!!!!!


“雪見だいふくのモチ部分の上位版” みたいな食感と甘さを持ちつつ、果物ならではの爽やかさとフレッシュさを兼ね備えたあけびの果実。タネ(食べられない)が多いのは難点っちゃあ難点だが、面白いので個人的にはあるほうがイイと思った。

なんとなく “ツウが好む味” みたいなのをイメージしていただけに、このクセのなさは超意外だ。この味が苦手な人、あまりいないんじゃないかと思う。あけびウマい。知らなくてごめんなさい。



・豚バラで巻いた結果

とはいえ、この果実量で400円超は果物としてちと高め。皮もウマけりゃ文句なしのハイブリッド木の実だが、果たして?

これまたネットの情報によると、あけびの皮には苦味があって、アク抜きをするのが一般的らしい。包丁で適度な厚さにカットする。

それを煮たのち、冷水にさらしてアク抜きを行う。今回は3時間放置してみた。

オオゼキ推奨のレシピは、アケビの皮を豚バラ巻きにして塩コショウで焼くだけというシンプルスタイル。

アケビの皮はアクと同時に鮮やかな紫色も失い、ザーサイみたいなビジュに変貌している。

焼き色を付けたのち蒸し焼けば完成〜!


・あけびのポテンシャル

ってことで、こちらが完成品の『あけびの皮の豚バラ巻き』である。

我ながら見た目は完璧。いただきますよ〜っと。


…………うん?


ウマい。普通にウマイ。普通にウマいが、それは豚バラ&塩コショウという絶対的黄金コンビのウマさが大部分を占めていて、肝心のアケビはというと……なんかよく分からない。味も食感も存在感がなさすぎなのである。

無理矢理何かに例えるとすれば「ジャガイモの存在感を10倍薄くしたヤツ」って感じだろうか。味ゼロ、歯ごたえゼロ、苦味が少々(これは私がアク抜き初心者だったからかもしれない)。 “主張ゼロのカサ増し食材” ……これが私がアケビの皮に抱いた正直な印象だ。

ただ、たまたま事務所にいた古沢くんに食べさせてみたところ、彼にとっては「メチャクチャおいしい」らしかった。ほのかな苦味が逆にクセになるとのこと。アケビの皮はこれでなかなか、ツウ好みのする食材なのかもしれない。

「目で見て楽しい」「食べて楽しい」「スリルを感じる」「無駄がない」など、多岐にわたるポテンシャルを秘めていた食材あけび。知ってた人も知らなかった人も、短い旬を逃さないでほしい。

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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