自分で言うのもなんだが、私は飲食店でメニューを決めるのが早い。グループで店に入ると大体いつも私が最初に「もう決まった」と言うし、1人で行き慣れた店に行くときは着席と同時に店員さんにオーダーを伝えたりする。

たとえば、焼肉ライク。これまで何度も利用しているので、メニューを決めるのに10秒もかからない。なんなら、入店前に決めていることも多いのだが、ここ最近は入店後に長考してしまうのである。ぜんぶ神戸牛のせいだ。

・焼肉ライクの神戸牛

ご存知だろうか。焼肉ライクが神戸牛を販売していることを。焼肉ライクといえばリーズナブルな価格設定で知られているので、神戸牛のような高級系を扱っているイメージがあまりないかもしれない。

かく言う私もそうで、初めて「神戸牛」を見たときは軽く衝撃だった。そして正直に言うと、ややナメていた


安さがウリの店が、なんで神戸牛を出してるの? インバウンド需要に乗る気満々なのはいいけど、本当に神戸牛らしい神戸牛なのかね?


……くらいに思っていたのだが、焼肉ライクの神戸牛がどんなものか気になったので、先日1度頼んでみたのだ。

ちなみに、私が頼んだのは神戸牛セット「SAKURA」というやつで、価格は2980円。


また、神戸牛単品だと1800円、ハーフだと900円だった。


めちゃくちゃ高い。いや、他店と比べて高い訳じゃないから、焼肉ライク自体が低価格帯のため神戸牛の高さが際立ってしまうと言うべきだろう。

そもそも、神戸牛を食べられる機会なんてあまりないので、勉強がてら1度頼んでみるか……と思い、決定ボタンをポチッ。



出てきたものはこんな感じ。さっそく網に乗せて、焼き上がったものを口に運んでみると……



うめえええええええ!


トロトロやないか!!!!


神戸牛特有の甘みのある脂がジュワと広がり、舌の上で溶けてなくなる。私がいつも食べている焼肉ライクメニュー(セットで1000円強のもの)と比べると、完全に別もの。


いちおう言っておくと、いつものセットに不満があるわけではない。ただ、全然違うのだ。一口食べた瞬間「え、これマジで焼肉ライク?」となって思わず周りを見回してしまうほどに。まさに天と地ほどの差がある。



・悩ましい日々の始まり

そして、ここから面倒なことになった。興味本位で頼んだ神戸牛のせいで、私の「メニューを決めるスピード」を完全に狂わせてしまったのである。今では焼肉ライクに入店すると、こんな具合だ。


今日は普通のカルビにしようかな……あぁでも神戸牛が

いやいや、ここで神戸牛いったら財布的にキツすぎるだろ!

でもあのトロトロ感……

いやいや、焼肉ライクは安く味わうところ!

そういや、昨日の夜に先物取り引きでちょっと勝ったからその分を使えば……

先物はそのためにやってるんじゃないだろうが!!!!


こんな葛藤を繰り返すうちに、時間が経過していることだって珍しくない。かつては10秒で決められたメニューが、今や3分くらいかかるようになってしまった。つまり、決定時間が約20倍になったのだ。

しかも、この葛藤は毎回繰り返される。「今日こそは普通のメニューで」と決意して入店しても、「神戸牛」の文字を見た瞬間に、またあの味を思い出してしまう。


結果、「今日は頑張って普通のカルビにしよう」と自分に言い聞かせつつも、「でも、神戸牛のハーフサイズなら……」なんて考えてしまう。

これぞまさに、焼肉ライクが仕掛けた罠。安さで客を引き寄せておいて、高級肉で心を揺さぶるなんて……なんてクレバーな戦略なんだ。

しかも、ハーフで900円という価格設定もよく考えれば絶妙だ。他のメニューと比べたら高いけれど、絶対に出せないほどかというとそういうわけでもない。なんたる巧妙さか。あぁ恐ろしい……。



そういうわけで、焼肉ライクの神戸牛はある意味で危険なメニューといえるかもしれない。食べたことがない人は覚悟して注文されたし。

参考リンク:焼肉ライク
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.